Re01.ループしてる気がするんやが……
ワイは、真っ暗なボロアパートで目を覚ました。
……目覚めた瞬間、ほんの一瞬だけ。
「――あれ?」
何かを“やり直した”ような感覚があった。
けど、その違和感はすぐに消える。
「ふぁ〜ぁ……眠ぃ……」
体を起こして、スマホを見る。
「……危なっ! アラームかけ忘れとるやんけ!」
時刻は六時前。
一月一日、日曜日。
休日出勤二日目――そして、ワイの四十歳の誕生日や。
「……いや待てよ」
スマホの画面を、もう一回見る。
「……昨日も、一月一日だった気がするな」
指が止まる。
「……まぁ、気のせいやな。
デジャヴってやつか……。
とりあえず腹減ったし、黒糖パンにバターでも塗って食うか」
キッチンに向かいながら、テレビをつける。
「今朝もニュース見なきゃやな……」
別に好きやない。
ただ、クソ上司が“見ろ見ろ”うるさいだけや。
『元旦!朝からお笑い結果発表ォォォォ!
我々、ダウンタウ――』
――ピッ。
条件反射でチャンネルを変える。
『昨日、結婚を発表した大物YouTuberのjamuさんについて――』
……ん?
黒糖パンをかじりながら、今朝のトピック一覧を見る。
そして、眉をひそめた。
「昨日の“VOID亀裂”のニュース……もう触れへんのか?」
黒糖パンをかじる手が止まる。
……確か、結構デカい話やったはずや。
宇宙がどうとか、政府がどうとか。
「……一日で終わる話ちゃうやろ」
なのに、まるで最初から存在せんかったみたいに――綺麗さっぱり、消えてる。
「……まあええか。
ほな、今日もパチの軍資金稼ぎに行ってきますか」
◇
――黒糖製菓(株)――
「はぁ……着いたで……」
看板を見上げて、息を整える。
「このペースなら、ガチャ引きながら歩いても余裕やな」
スマホを取り出して――止まる。
「……あれ?」
画面に映る違和感。
「……魔法石、こんなに多かったっけ……?
いや違う……、昨日引いたソニアがおらん」
画面をスクロールする。
どこにもいない。
「……いや、そんなわけないやろ」
指が止まる。
――ほんまに、引いたはずや。
なのに、その“手応え”だけが残ってる。
……夢やったんかな。
深く考えるのをやめて、ガチャを回すと――ソニアが出てきた。
◇
会社の玄関に入る。
タイムカードは――もちろん無視や。
「忘れとる訳やないで? 八時なったら切りに来るんや」
いつも通りの行動や。
ワイはそのまま事務所に入る。
「おはようございま〜す……」
誰もおらんな。
……まあ、いつも通りやけど。
自分の席に向かいながら、ふと引っかかる。
「……そういや」
足が少しだけ止まる。
「昨日、朝から鈴香部長……おったよな?
……何しに来てたんやっけ?」
思い出そうとしても、そこだけ綺麗に抜け落ちとる。
「……まあええか」
肩をすくめて、椅子に座る。
大したことやないはずや。
ただの、どうでもええ記憶や。
――のはずやのに。
なんでか、その“抜け”だけが、妙に気持ち悪かった。
「鈴香部長が来る前に、昨日の続きのレシピでも考えるか……」
席に座って、パソコンの電源をつける。
そして――
「……は?」
手が止まる。
昨日の午前中、鈴香部長に怒られて作り直したレシピが消えてるんや。
「え? え? な、なんでや……!」
黒糖アイスの改良版。
完成度はそこそこ高かった気がする。
……でも。
「ワイ、絶対に昨日作ったで……?」
……気持ち悪っ。
背筋に、じわっとしたものが走る。
ワイはなんとなく思い出してレシピを復元した。
◇
作業をしていると、気づけば一時間半が経っていた。
いつも通り、タイムカードを切りに行く。
「はぁ……しんど……」
戻ろうとした、その時。
――ガチャ。
事務所のドアが開く。
「おお、サビ残くん。おっは〜」
「……っ!」
一瞬、体が固まる。
「鈴香部長……おはようございます」
声が、わずかに遅れた。
「ねぇ、サビ残くん。あの件どうなってる?」
来た。この会話……、知ってる。
「……あの件って、どの件っすか?」
自分でも分かる。
“昨日と同じ返し”をしている。
「チッ……あの件よ、あの件!」
……やっぱりや。
完全に一致してる。
「……昨日も言ってましたよね、それ」
「は?」
鈴香部長が眉をひそめる。
「何言ってんの? 初めて言ったけど?」
「……いや」
言葉が詰まる。
おかしいのは――どっちや?
「あー、もしかして松崎しげろうコラボ黒糖アイスの件っすか?」
「あれ? よく分かってるじゃないのよ」
……いや、ワイはただ、“知っていた”だけや。
「とにかく、……もう一回レシピ見せなさい」
「……はい」
差し出したレシピの紙。
その中身は――昨日、鈴香部長に指摘されてから直したレシピや。
鈴香部長は、それを一瞥して。
「……これ、凄くいいじゃない」
「え?」
「この方向で詰めなさい」
そう言って、席に戻っていった。
「……なんか、初めて褒められた気がする」
◇
ワイは自分の席に戻る。
パソコンの画面に映るレシピを見つめる。
「……これ、ワイが考えたんやなくて、昨日の鈴香部長に言われた通りに作っただけなんやが……」
分からん。
けど、昨日確かに同じやり取りをした。
「……なぁ」
誰にともなく呟く。
「ワイ、これ……同じ日、繰り返してへんか?」
ふと外を見ると、窓ガラスに自分の顔が映る。
その“目”が――
一瞬だけ。
自分と“ズレて動いた”。
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※作者は特級の声優ヲタです。キャラクターの脳内再生CVなど、お気軽に自由なコメント待ってます!




