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ブラック企業のおっさんが天使と悪魔の力を駆使して地球を救う話 〜ギャンブルなんて二度とせんわ!賭けてもええで!〜  作者: 真星 紗夜(毎日投稿)


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11-2.プールと非合理的な水着(午後)


 時刻はお昼過ぎ。

 やってきたのはプールから少し離れた売店や。


 カコが焼きそばを持ってやってくる。


「おじさ〜ん!

 ウチと一緒に食べないッスか?」


 ……カコ、絶対に何か企んでるはずや。

 とはいえ腹は減ったな。


「あ、ウチトイレしてくるから、先食べてていいッスよ」


 カコは焼きそばを置いてトイレへ向かった。


 う〜む、見た目は普通の焼きそばやな。


「ほな、いただきま〜す。

 ……んッ!辛ッッ!!」


 なんと、焼きそばの中に大量の七味唐辛子が仕込んであり、ワイは思いっきりむせた。


 ……チクショー、カコの奴。


 ワイがカコにイライラしとると、ミクちゃんも焼きそばを持ってやってきた。


「あれ? ザンテツ課長も焼きそばだったんですね!

 けど、聞いてくださいよ〜。

 少し残念なことがあって……」


「どうしたんや?」


「それが、売店前の七味唐辛子が切れてて……。

 私、激辛大好きなんですけど」


 しょんぼりするミクちゃんに、ワイが持っていた真っ赤な焼きそばを見せた。

 

「これ、カコにイタズラされて辛くて食べられへんのやが……、交換するか?」


「え!いいんですか?

 私、そのくらい七味かけてあるくらいが好きなんです!

 いただきま〜す!」


 ミクちゃんは平気な顔をして激辛焼きそばを食べた。

 ワイもソースの風味を楽しめて大満足や。


 その様子を矢名井さんがじっと見つめて、メモを取っている。


「……興味深いですわ」


「何がや?」


「さっきから、幸福と不幸が同時に発生しています」


 ワイはため息をついた。


「この二人といると、いつものことや……」


 ◇


 時刻は三時。

 ついにワイらは、一番人気の大波プールに来た。


 ざわめく水面。

 時折、襲いかかるビッグウェーブ。


 ミクちゃんは真剣な顔をしている。


「カコ、最後に……決着をつけましょう」


 カコは余裕の笑みを見せる。


「上等ッス。

 全力でおじさんを不幸にしてやるッス」


「いや、やめてくれや」


 ワイがプールの浅瀬に足を入れると、穏やかな波が心地よかった。


 ミクちゃんも入り、ワイの手を引く。


「ザンテツ課長、気持ちいいですよ」


「まあ……気持ちええな」


 その瞬間、カコが足をすくう。


「うおっ!? 何すんねん!」


 倒れそうになるワイをミクちゃんが支える。


「大丈夫です! 私がついてます!」


 ――その時。


 ゴオオオオオ!!


 巨大な波が目の前に現れ――


 ドーン!!


「ぶはぁ! こりゃ見た目以上のパワーやで!!」


 さらにもう一発。


 ドーン!!


「うはっ、ペース速すぎやろ!!」


 年甲斐もなくはしゃいでいると、ミクちゃんは握っていた手を慌てて離した。


 ……ん? どうしたんや?

 

 ミクちゃんの方を見ると、なんと――


 白いヒラヒラの可愛い水着が少しズレてしまっていた。


 ……のわっ! 見ちゃいかん見ちゃいかん!


 そして、さらにさらにもう一発。

 今度のはさっきの比じゃないくらいデカい波や。


 ドッパーン!!

 

 四人揃って仲良く流された。


「ハハッ、楽しいッス!!」


 カコの余裕そうにはしゃぐ声を聞きながら、ワイは溺れかけた。


「た、助け、ボボボ! 流されちゃ、ボボボ!

 ミクちゃん! カコ!

 ――矢名井さんっ! ボボボ!!」


 誰かの浮き輪にぶつかったと思ったら、おっさんなのかお姉さんなのか分からんお尻に次々と激突。


 完全カオス。


 溺れながら、矢名井さんが見えた。


 紐みたいな水着は完全に脱げてしまっている。

 本人は全く気にしていないが、ふと周囲の視線に気づいたようだった。


 ほんの一瞬、止まる。


 そして、恥ずかしさを感じたのか、自分で水着を直していた。

 

 ◇


 数分後、大波プールから上がって全員ぐったりや。


「……なんや今のプール。

 子どもとか絶対アカンやろ……」


 ミクちゃんは息切れしている。


「せ、成功……しましたよね……」


 カコは楽しそうに笑っている。


「……大成功ッスよ」


 矢名井さんは静かに言う。


「結論が……出ましたわ」


「なんのや?」


「人間は、非合理な状況ほど楽しむ傾向があります」


「仕事できそうな雰囲気あるのに、なんか雑なまとめやな……」


 ◇


 そして、時刻は夕方。

 そろそろ着替えて帰ろうかというところで、プールサイドのベンチにみんなで腰掛けている。


 人の笑い声、プールの音、天窓から差す夕焼け。


 矢名井さんが静かに周囲を見ている。


「……非合理ですわね」


 と、ぽつり。


「生産性も効率も、ほとんど存在しない空間……」


 自分の紐みたいな水着を見て、腕を組む。

 さっきまで平然と露出してたのに、ほんの少しだけ、その豊満な体を隠す仕草。


「ですが――」


 矢名井さんの声が、少しだけ柔らかくなる。


「人間は、なぜか楽しそうにしています」


 子供が笑い、カップルがはしゃぐ。

 ミクちゃんとカコもまた小競り合いをしとる。


「非合理で、理解不能で……、それでもやっぱり私、この惑星が好きかもしれませんわ……」

 

 矢名井さんは周りに聞こえないくらいの小さな声で、そう呟いていた。


 ◇


 辺りはすっかり真っ暗になった。

 ワイらは帰りの高速バスの中にいる。

 ミクちゃんとカコはすっかりお疲れでスヤスヤ眠っている。

 こうして見ると、天使も悪魔も子供やな……。


「ほんで、デザートの案どうするんや……、ワイ」


 大事な事を思い出して、つい独り言が漏れた。

 頭を悩ませていると、隣の矢名井さんがワイに近づく。

 相変わらず距離が近い。


 けど、今までよりほんの少しだけ、人間同士の距離感を意識しているような間合い。


「錆田課長、本日の観測で結論が一つ出ましたわ」


「なんや?」


「地球は、非合理です」


「せやな」


 そう返すと、矢名井さんは少しだけ微笑んだ。


「ですが……、だからこそ残す価値があるのかもしれません」


 ワイは苦笑した。


「急にええこと言うやん」


 矢名井さんは少しだけ顔を逸らす。


「昨日までの私は、ただ単に無闇に惑星を破壊して回る宇宙検閲官が許せないだけの存在でした。

 けど、こうやって地球の文明に触れた今は違いますわ。

 非合理な日々があるからこそ、幸せな時間が輝きを増すのですね……」


 その仕草は、ほんの少しだけ――人間っぽくなっていた。

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 ※作者は特級の声優ヲタです。キャラクターの脳内再生CVなど、お気軽に自由なコメント待ってます!

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