11-1.プールと非合理的な水着(午前)
――ピピッピピッピピッ♪
いつもと違うアラーム音で目が覚める。
六時より早く起きる時はこのアラーム音に設定するんがマイルールや。
時刻は五時。今日は五月二十八日の日曜日。
「おじさん! 早く起きるッス!」
「……カコ? お前、やけに元気やな」
「そりゃそうッスよ!
久しぶりのプールなんスもん!」
そう、ワイら開発課の四人は鈴香部長から、プールのチケットを強制的に買わされたんや。
余ってたくせに定価以上で買わされた挙句、夏向け新デザートの案を考えてこいとの事だ。
……ほな、今朝のニュースでも見るか。
『今朝のトピックです。
企業の福利厚生の一環として、社員同士の交流を深めるレクリエーションが注目されています』
強制参加で交流深めるって、もはや拷問やろ。
今日のワイらみたいなもんか……。
「……ほな、ミクちゃんと三人で東京駅行くで。
矢名井さんも東京駅そろそろ着くってよ」
「はーい! プール♪ プール♪」
カコは今までで一番の上機嫌や。
◇
東京駅から高速バスに乗り、到着したのは――福島県某所、ハワイアンプールリゾート。
「なんでワイ、休日に会社のメンツとプールなんや……。
てか、年齢的に完全に保護者やん」
カコが笑う。
「おじさんは新商品の提案しなきゃだし、完全に仕事ッスね」
「お前らも一緒に考えてくれや!」
ミクちゃんはちょっと楽しそうや。
「でもプールってちょっとワクワクしますね……」
矢名井さんは相変わらず周囲を観察している。
こんな所に来てまでメモ帳取り出すんか。
てか、今さらやが記録のしかたがアナログ過ぎやろ!
「地球人が水場で集団行動……興味深いですわ」
◇
開館後、まず向かったのは更衣室。
「ほな、ワイは着替えてくるで。
お前らはあっちの女子更衣室やな」
それを聞いた矢名井さんが首をかしげる。
「なんでわざわざ私たちは遠くに行くんですの?
この場で着替えれば効率的ですわ」
そう言って矢名井さんはスーツのボタンを外し始めた。
「やめぇや!!」
ミクちゃんは顔を真っ赤にさせている。
「ちょっと! ここは公共の場です!」
カコは爆笑。
「ププッ……やっぱズレてるッス。
まあ、ウチらも地球に来たばっかの時はこんな感じだったッスけどね」
ワイは既に下着姿になっている矢名井さんを強引に押した。
「ええからあっちの更衣室に行け!!
ミクちゃん、二人を頼んだで」
「非合理ですわ……」
◇
全員なんとか着替え終わり、プールサイドに集まった。
「……」
ワイは固まった。
矢名井さん、布面積がやたら少ない紐みたいな水着や。
「なんやそれ!
リアルで見たことないわそんな水着!」
「合理的ですわ」
「どこがや!!」
「水の抵抗が減りますし、すぐに乾きますわ。
普通にネットで売ってましたから、大丈夫かと思ったのですが……」
「絶対にアダルトグッズの通販サイトやろ……」
しかも動くたびに色々危ない。
カコがニヤニヤ。
「おじさん、プールだけに目が泳いでるッスよ」
「上手いこと言ってんなや!」
ミクちゃんは王道の可愛い水着。
白いヒラヒラがたくさんついている。
「ザンテツ課長、あんまりジロジロ見ないでください……」
「見とらん見とらん!!(ちょっと見た)」
◇
まず最初に向かったのは流れるプール。
四人でぷかぷか流されている。
デザート案どうしよっかなぁ……。
新商品のことで頭を悩ませていると、ミクちゃんも考えてくれているようだった。
「冷たい……甘い……楽しい……。
んー、なんでしょうね……」
カコは純粋に楽しんでるし、矢名井さんはよく分からんけど、ミクちゃんはホンマええ子やなぁ……。
◇
次に来たのはウォータースライダー。
「ザンテツ課長! 私と一緒に行きましょう!」
ワイは二人乗りの浮き輪を持ったミクちゃんに腕を引っ張られた。
カコは矢名井さんと二人で滑る気みたいだ。
「へへーん! ミク、ウチらが先ッスよ!」
んー、ミクちゃんもカコも何か企んでるみたいやな……。
長蛇の列に並び、いよいよワイらの番になった。
ワイが前で、ミクちゃんが後ろ。
手の置き場に困っていると、係員の人が注意喚起をしてくれた。
「危ないので前の方は後ろの方の脚を掴んでくださいね」
ミ、ミクちゃんの生脚……、触ってええんやろか……。
ムニュ。
暖かくて柔らかくてきめ細かい肌やった。
なんかワイ、今が人生で一番幸せかも……。
「よっしゃ行くで!」
「はい!行きましょう! 出発!」
ワイらはスライダーを凄い勢いで滑って行く。
……お、思ったより速いで!
右カーブ、左カーブ、そして回転。
とんでもないGがワイの体に襲いかかる。
そして密着。
ミクちゃんの心臓の鼓動が直に伝わる。
ワイの枕よりもフカフカやった。
――ザバァァァン!
勢いよくプールに着水した。
水面に顔を上げると、誰かに水鉄砲をかけられた。
「ゴホッエホッ!!」
「課長、大丈夫ですか⁉︎」
プールサイドを見ると、カコが水鉄砲を持って笑っていた。
「成功ッス!」
「カコ! ワイを溺れさす気か!!」
この時、ワイは気がついた。
今日のプール旅行でミクちゃんはワイを幸福に、カコはワイを不幸にさせようと企んどるんやな……。
クソッ、この後もカコには警戒せねば……。
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※作者は特級の声優ヲタです。キャラクターの脳内再生CVなど、お気軽に自由なコメント待ってます!




