Re08.検閲官、人望ないんか……
――ピピピピッピピピピッ♪
ワイはソファの上でスッキリと目を覚ました。
時刻は九時で久々の朝寝坊大会や。
今日は四月十六日の日曜日で正真正銘の休日や。
「はぁ……」
せっかくの休日なのにため息が漏れる。
なぜなら、今日はミクちゃんとカコと三人で話し合いだからや。
久々の休みやし、パチ行きたいわ……。
そんな事を考えていると、インターホンが鳴った。
――ピンポーン♪
……ッ! これ、デジャヴや!
ここで宇宙人が現れて、ワイは悪魔の力を借りて戦闘するんや……!
ワイは一瞬固まった……。
が、すぐに行動を起こした。
「カコ、起きろ! 宇宙人が攻めてきたで!
ほら、ワイのくっさい口の中に入ってきてくれや!」
「むにゃむにゃ……、朝からうるさいッスね。
それと、おじさんの口、思ったよりは臭くなかったッスよ……。思ったよりは」
「ちょっとは臭いんやないかい!
いや、そんなんええから早く起きろっての!」
ワイがカコを叩き起こそうとすると、ガチャっと玄関が開いた。
しかし、そこに立っていたのは……、ミクちゃんだった。
「あれ……? ミ、ミクちゃん……?」
「もしかして、宇宙人だと思いました?
流石はザンテツ課長の記憶力ですね。
でもそろそろ宇宙人も来ますので、安心してください」
「ほなら、戦う準備せなアカンやん!
ほら、ミクちゃんも刀に変身するんや!」
「待ってください、ザンテツ課長!
私はあの宇宙人とは戦う気はないですよ」
「……戦わないって、じゃあどないするんや?」
「私、あの宇宙人の様子、外から見てたんです。
でもなんか、私たちに敵対しているようには見えなかったんですよね。
だってほら、わざわざ玄関のチャイム押すって変じゃないですか?
だから、今回は少しお話を聞いてみようと思って……」
「……う〜む、確かに。
あの宇宙人、なんつーか律儀過ぎたかもしれへんな。
それに、ワイに首掴まれても抵抗せんかったし――」
――ピンポーン♪
「ほら、早速来ましたよ!」
……なんか、緊張するで。
ワイはゆっくりドアを開けた。
そこにおったのは、あの宇宙人やった。
そして、ワイの方を向いて言葉を発した。
「◎△$♪×¥●#」
……いや、何を言うてんねん!
てか、のっぺらぼうやのにどこから声出してんねん。
でも、宇宙人から敵意は感じられへんかった。
「なあ、ミクちゃん。 翻訳頼めるか?」
「いいですよ。 手、握ってください」
ワイはミクちゃんの柔らかくも力強い手を握った。
そして宇宙人は再び言葉を発した。
「地球人、話ヲ聞イテクダサイ」
ワイは思わず尋ねた。
「お前、地球を侵略しに来たんちゃうんか」
「違イマスワ、ワタシハ警告シニ来タノデス」
「……は?」
のっぺらぼうの宇宙人は真剣な表情に見えた。
「今年ノ末ニ宇宙検閲官ガ来マスワ。
コノ星ヲ、消スツモリデス」
ワイは言葉を失った。
やっぱ、未来で必ず起こる事なんやな……。
宇宙人は続ける。
「我々ハ従属文明デスワ。
通常、上ニ立ツ者ノ命令ニハ逆ラエナイノデス。
ダガ……」
宇宙人は拳を握った。
「ワタシハ、コノ美シイ地球トイウ惑星ガ消滅スル事ハ、宇宙全体ノ損失ニ値スルト考エ始メマシタワ」
ワイは聞いた。
「それでワイに協力して欲しくてピンポン押したんか?」
「エエ、ソウデス。
アナタノ周辺デハ、バグガ頻発シテイルラシイデスネ?
アナタニハ、何カ可能性ヲ感ジマシタワ」
宇宙人は言った。
てか、めちゃくちゃ顔が近いんやが……。
「……それ、ワイというよりは、この天使と悪魔たちのせいやと思うんやけど……」
すると、ミクちゃんとカコが同時にワイを呼んだ。
「ザンテツ課長」 「おじさん」
「なんや? 二人とも」
カコはミクちゃんの方を見て、「アンタが話しなさいよ」と言わんばかりの目をしている。
ミクちゃんは頷き、話し始めた。
「ザンテツ課長の記憶力、異常なんですよ。
私たちが事実改変の能力を使っても、普通の人間は改変前の出来事は覚えていないんです。
ですが、課長だけは、こうやって時を戻しても記憶を引き継いでしまう事があるんです」
「そんなにワイの記憶力よくないで?
もしそんな神がかった記憶力の持ち主なら、東大入って、エリートコースまっしぐらやで!」
「いや、ザンテツ課長は受験生の頃はパチンコばっかりだったじゃないですか……」
「そ、それは……」
「とにかく、ザンテツ課長は改変前の記憶を持つ事があって、それがバグとして宇宙検閲官に検知されるんです。
つまり、課長がいる限りこの地球は、宇宙検閲官に目をつけられてしまうんです!」
必死の表情で訴えるミクちゃんとは対照的に、カコはジト目でミクちゃんを見つめている。
「ちょっとミク〜?
そもそも、ミクの仕事っぷりがだらしないから地球全体の幸福度が低くなって、宇宙検閲官に目をつけられたんスよねぇ?
なぁんでおじさんのせいにしてるんスか〜?」
……確かに前にそんなこと言っとったな。
てか、この二人あんまり仲良くないんやろか。
「そ、それは……、否定はしないけど……」
ミクちゃんは俯いてそう答えた。
ワイはミクちゃんを庇う訳やないが、カコに質問した。
「なぁカコ、地球に暮らす生命体に幸福をもたらすのが天使で、不幸をもたらすのが悪魔って話、ホンマなんか?」
「ええ、本当ッスよ〜。
でもミクのやつ、学校じゃ座学ばっかりで実習は全然ダメだったんスよ」
「……学校なんてあるんか?」
「そうッスよ。
私たちは産まれてすぐに学校に入れられて、天使または悪魔として卒業するんス。
で、ウチとミクはこの地球が就職先だったって訳ッスね」
「はぇ〜、学校なんてどこにあるんや?」
「言っても分かんないッスよ?
地球の文明じゃまだ観測できていない宙域ッス。
とにかく、ミクはその学校ではガリ勉の陰キャ女だったんス!
実際に地球で働いてからも、タラタラ仕事が遅いんスよ!」
それを聞いたミクちゃんは顔を真っ赤にしてカコに反論した。
「ちょっとカコ!
さっきから黙って聞いてれば、調子のいい事ばっかり!
カコは座学を怠るから翻訳だって未だに出来てないんでしょ!
それに、私は成績が良くて性格もいいから天使になれたのよ?
カコは怠け者でガサツだから悪魔として卒業しちゃったのよ!」
カコはミクちゃんの迫力にたじたじになっている。
「……う、うるさいッスね。
悪魔だってなりたくてなる奴もいるんスよ?」
ミクちゃんはカコの言葉など気にも留めず、さらに続けた。
「だいたいカコ、“幸福の総量”とか一人ずつちゃんと確認してるの?
アナタが雑に不幸を振り撒くから、私が苦労して何度も“未来”を変える必要が出てくるのよ!
事実改変の能力だって、本来は最終手段として授かった能力だって理解してるの?」
「……う、うぅ…………」
カコは眉間にシワを寄せとるが、何も言い返せずにいるみたいや。
「喧嘩シテルトコロ悪イデスガ、ワタシハ検閲官ニ報告シニ戻リマスワ。
トニカク、ワタシハ可能ナ限リ、検閲官ニハ“異常ナシ”ト報告シマス。
ダカラ、アナタタチ三人デ年末マデニ戦闘ノ準備ヲ進メテクダサイ」
「ちょい待ちや。
宇宙人、アンタの名前は……?」
そう言った瞬間、ミクちゃんは繋いでいた手を離してカコと取っ組み合いの喧嘩を始めた。
そして、宇宙人は名を名乗った。
「☆々#」
そう言うと、宇宙人は去っていった。
……一番肝心なところ、翻訳できへんかった……。
とにかく、今日はワイの奢りでカフェに行く予定だったが、玄関先で話は済んだ。
……ふぅ。
浮いた金で午後からパチでも行きまっか。
ワイはこっそりと外に出たが、ミクちゃんとカコは気づかずに言い合いを続けていた。
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