08-2.天使と悪魔とおっさんと……
ミクちゃんが羽を広げた。
「課長、今から刀になります!」
――バサッ!!
光が広がり、羽が繭のように閉じる。
――キュイィィン!!
一振の刀がワイの目の前に浮かんでいた。
『ザンテツ課長!』
ミクちゃんの声が刀から聞こえる。
『今回は本気です!』
「毎回言うとる気がするんやが……」
ワイは刀を握った。
その瞬間、体の中の魔気と刀の光が混ざった。
ズンッ。
身体が一段階重くなる。
『おぉ……、おじさん……』
カコが感心した声を出す。
『それ、天使と悪魔のハイブリッド状態ッス』
「なんやそれ」
『要するに、めちゃくちゃ強いッス!』
「説明雑すぎるやろ!」
その時、監査兵がゆっくり腕を上げた。
そして指をこちらに向けた。
――ドン。
また見えない圧力が来た。
「ぐっ……!」
ワイは地面を踏み抜きながら耐える。
アパートの駐車場がボコボコに沈む。
『ザンテツ課長! それ重力操作です!』
「さらっとチート能力やな!」
監査兵は無言のまま、もう一度指を動かした。
次の瞬間――
ワイの足元のアスファルトが浮き上がった。
「うおおッ⁉︎」
車も自販機も全部宙に浮く。
そして一斉にワイへ向かって飛んできた。
「こんなん避けられるかぁ!」
――ズバァァン!!
ワイが一心不乱に刀を振り回すと、光の斬撃が放たれた。
そして、車が真っ二つ。 自販機も両断。
『ザンテツ課長、すごいです!』
『おじさん、やりまッスね!』
「褒めとる暇あったら何か作戦考えろや!」
車から立ち昇る黒煙の向こうで監査兵が立っている。
……アイツ、肩に傷負っとるで。
そして、監査兵が言葉を発した。
「……異常確認。 対象ハ、コノ人間!」
……⁉︎
言葉が……、理解できる……?
『ザンテツ課長、私の身体に触れている間は宇宙人の言葉が理解できるはずです!』
ミクちゃんが言った。
「……なるほど、ミクちゃんの身体は生きたホンヤクコンニャクって事かいな!」
それを聞いたカコが身体の中でボソッと呟いた。
『おじさん……、下ネタッスか……?』
「何を言うてんねん! レベル高過ぎるやろ!」
ミクちゃんは下ネタの意味が理解できなかったのか、カコを無視して続けた。
『おそらく監査兵は、課長という人間そのものを宇宙のバグと認識しているようです!』
「やっぱり狙いはワイなんか!
なんでこんな事に巻き込まれなアカンねん!」
監査兵は腕を振り上げた。
空気が震える。
……ヤバい。
直感で分かった。
これはさっきの重力操作とはレベルが違うで。
『おじさん!』
カコが叫んだ。
『あれ来たら死ぬッス!』
「もっと早く言え!」
ワイは全力で地面を蹴った。
――ドォン!!
次の瞬間。
さっきまでいた場所が巨大なクレーターになった。
「うわぁ……」
アパート半壊しとるやん。
「大家さんに怒られるやつや」
『いや、今それ心配するんですか⁉︎』
ミクちゃんがツッコんだ。
監査兵は首を少し傾けた。
そして再び手を上げる。
……その時、空のVOID亀裂がさらに広がった。
――ビリビリビリッ!!
黒い裂け目が拡大する。
その奥から、何か巨大な気配が降りてくる。
監査兵が突然ひざまずいて、言葉を発した。
「……検閲官殿、来テクダサッタンデスネ」
「……は?」
さっきまでボスみたいな顔してた監査兵が急に部下ムーブし始めた。
いや、顔はのっぺらぼうなんやが……。
『ザンテツ課長……』
ミクちゃんの声が震えている。
『最悪です』
「何がや」
『ヤツが言うように、本物の宇宙検閲官のお出ましです』
「…………」
ワイは空を見上げた。
「は?」
空のVOID亀裂の奥の奥。
そこから、ゆっくりと何かが降りてくる。
最初に見えたのは――禍々しい光。
巨大な影の輪郭が、黒い裂け目の向こうで揺れている。
その全体像はハッキリとは見えないが、存在だけで空気が重くなった。
監査兵がひざまずいたまま言う。
「……検閲官殿、対象確認イタシマシタ。
ワタシハ、コノ人間ニ傷ヲ負ワサレマシタ」
その時、空から声が降ってきた。
「人間ゴトキガ……」
低い声。
……なんや?
この監査兵とは明らかに空気が違う。
なんというか……、圧が桁違いや。
アパートの壁がミシミシ鳴る。
街灯のガラスが震える。
ワイは思わず刀を握り直した。
「これ……ヤバいやつやろ」
『はい』
ミクちゃんが即答した。
『宇宙検閲官は、全ての惑星文明を監査する存在です』
「権力がデカすぎるやろ……」
『惑星を消す権限すら持っていると主張する派閥もあります』
「ちょ……、軽く言うなや!」
その時、VOID亀裂の中の影が少し動いた。
巨大な目のような光が、こちらを見た。
「人間……、オマエガ監査兵ヲ破壊シタノカ?」
宇宙検閲官の声が直接頭に響く。
ワイは思わず答えた。
「いや、壊すつもりはなかったんやけど……、なんつーか、勝手に壊れただけで……」
『言い訳が雑すぎます課長!』
ミクちゃんがツッコんだ。
宇宙検閲官はしばらく沈黙した。
そして言った。
「理解不能デアル」
「それ、ワイのセリフやで……」
しばらくして、監査兵が横から宇宙検閲官に向かって言う。
「マズハ、コノ人間ヲ消去スベキデス」
「ちょま! お、落ち着けって!」
ワイの声など聞く耳を持たず、宇宙検閲官は即座に動いた。
――ドドン!!
監査兵よりも強力な重力が落ちてくる。
ワイは歯を食いしばった。
「ぐっ、身体が重い……!」
『課長!』
ミクちゃんが叫ぶ。
『ここでやられたら地球が終わります!』
「クソッ、色んな意味で重いわ!」
カコが頭の中で笑った。
『おじさん』
「なんや」
『もう一回、魔気解放するッス?』
「できるん?」
『できますけど』
「けど?」
『今度は身体が壊れるかもッス』
「さらっと言うなや!」
宇宙検閲官の影はさらに存在感を増し、巨大な重力の圧を落としてくる。
ワイは刀を握りしめた。
「……しゃーない、やるしかないやろ」
直後、空から降りてくる宇宙検閲官。
その巨大な影が、街を覆おうとしていた。
「……ミクちゃん」
『はい』
「……これ、勝てるん?」
ワイの足はガクブルや……。
数秒の沈黙。
『……正直に言います』
「お、おう」
『無理です』
「やっぱりかーい!」
カコが身体の中で話しかけてくる。
『おじさん、宇宙検閲官は規模が違うッス。
個人で戦う相手じゃないッスよ』
それを聞いたミクちゃんが真剣な声で言った。
『ザンテツ課長、時間を戻します。
私、少し引っかかるところがあるんです。
それに、今日三人で話し合いする時に言おうと思ってた事があるんですよ』
空では宇宙検閲官が完全に姿を現そうとしていた。
時間がない。
ミクちゃんもとい、刀が光を放つ。
『戻るのは……、四月十六日の朝です』
「それって、今日やんか」
『はい。 戻ってから伏線を回収します』
「メタいな!」
ミクちゃんが両手を合わせると、光が広がった。
そして、カコが言った。
『おじさん』
「なんや」
『多分、ミクも色々気づいてるッス。
なんで宇宙人が来たのか。
なんでおじさんの周りではバグが多発するのか』
「ワイも気になっとるわ」
光が強くなる。
『それじゃザンテツ課長、行きますよ。
今朝を“現在”として“過去”を確定させます」
その直後、世界が白くなった。
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