08-1.悪魔の能力の方がワイ好みなんやが
――ピピピピッピピピピッ♪
ワイはソファの上でスッキリと目を覚ました。
時刻は九時で久々の朝寝坊大会や。
今日は四月十六日の日曜日で正真正銘の休日や。
「はぁ……」
せっかくの休日なのにため息が漏れる。
なぜなら、今日はミクちゃんとカコと三人で話し合いだからや。
久々の休みやし、パチ行きたいわ……。
ホンマは平日に話し合う時間を作りたかったんやが、今週は松崎しげろうコラボの案件で忙しかったんや。
「カコ、そろそろ起きないと間に合わんで〜?
お前はホンマに寝るの好きやな……」
――ピンポーン♪
ワイがカコを起こそうとした瞬間に、玄関のチャイムが鳴った。
ミクちゃんやろか……?
外で待ちきれなくなったんやな……。
「開いとるから入ってええで〜」
ガチャっと玄関が開くと、そこに立っていたのは……、宇宙人だった。
「◎△$♪×¥●#!」
「わわっ、なんやコイツ!
カコ起きろ! 宇宙人や!」
「んもうっ、うるさいッスねぇ……。
悪魔は朝が苦手なんスよ。
おじさん、口開けてください?」
カコのツノが禍々しい光を放っている。
「こ、こうか……?」
ワイは言われた通りに、口を大きく開いた。
すると、カコの身体が赤黒い粒子に変化してワイの口の中に勢いよく入り込んできた。
「むぐっ……!」
『おじさん、ウチの声聞こえるッスか?』
「ああ、聞こえるで……」
『ならよかったッス!
今のおじさんは、スーパー地球人みたいな状態になってるッス!
手からは金属を腐食させる魔気を放つ事もできるッスよ!』
「確かに、力がみなぎってくるやで!
しかも金属を腐食するってことは、あの宇宙人の皮膚には有効なんやないか?」
『さすがおじさん、理解が速いッスね!
じゃ、二度寝するんで後はよろしくッス〜』
カコはそう言い残すと、ワイの身体の中で眠りについたらしい。
「よっしゃ、行くで! 宇宙人!!」
「◎△! ◎△$♪×¥●#!」
ワイは勢いよく床を蹴って玄関へ向かって走った。
ボロアパートの床はあっけなくへこんでいた。
「うおおおぉぉ!」
ワイは宇宙人の首を容易に掴み、そのままアパートの駐車場に叩きつけた。
「◎△$♪×¥●#ー!!」
宇宙人は苦しそうな声を上げとるが、手に力を込めて魔気を放出してさらに追い詰める。
その首はみるみる茶色く変色して行き、まるで錆びているようやった。
「◎△$●、◎△$●#ー!!」
奴は苦しそうに暴れとるが、ワイの腕力の方が上や。
昨日まであれほど苦戦しとった相手とは思えへん。
「どうや! 悪魔の力は効いとるやろ!」
ワイがさらに魔気を流し込むと、宇宙人の身体全体に錆のような模様が広がっていった。
そして、宇宙人の首が半分ほど砕けた。
その瞬間――
――ビリィィン!!
空が裂けた。
見上げると、空中に黒い亀裂が走っとる。
ニュースで見たVOID亀裂や。
その裂け目の奥から、今とは明らかに格が違う風貌の宇宙人が降りてきた。
身長は三メートルほどで、今まで対峙した宇宙人の二倍はある。
体は銀色やが、胸には幾何学的な紋章が刻まれている。
「……■ △$♪×¥● 」
コイツら宇宙人は何を話しとるんや……?
声は聞こえとるが、肝心の意味が理解できへん。
『おじさん、逃げた方がいいッス』
ワイの頭の中で、眠っとったはずのカコがボソッと言った。
「はぁ⁉︎ 今さらかい!」
『アレはただの手下じゃないッス。
“監査兵クラス”ッス』
「監査兵⁉︎」
その巨大な宇宙人は、ゆっくりとワイを見下ろした。
そして、指を一本だけ立てて、こちらに向けた。
――ドン。
次の瞬間、ワイの身体は見えない何かに押し潰されて地面に叩きつけられた。
「ぐはぁっ!!」
アスファルトが割れ、ワイの体は地面にめり込む。
『おじさん、まだ魔気残ってるッス!
全部使って逃げるッス!』
「逃げる言うても……!」
ワイが必死に立ち上がろうとしたその時――
――キュイィィン!
空から光が降ってきた。
見上げると、白い翼を広げたミクちゃんが空に浮かんでいた。
「ザンテツ課長!その宇宙人はダメです!」
「ミクちゃん⁉︎」
「その個体は宇宙検閲官直属の監査兵です!
今の戦闘を嗅ぎつけたみたいですよ!」
ミクちゃんはそう叫びながら、ワイの前に降り立った。
そして振り返る。
「課長、刀になります! 今度は全力です!」
「いやいや、全力言われても!」
「大丈夫です。 今回は……」
ミクちゃんはニヤッと笑った。
「悪魔の力も宿しているんですよね?」
ワイの体の中で、カコが小さく笑った。
『あーあ、無能な天使ちゃんにもバレてるッスね』
「無能は余計よ! この悪魔!
それじゃ――」
「ザンテツ課長!」 『おじさん!』
二人の声が同時に響く。
『「そいつ、ぶっ倒してください!」ッス!』
「……はぁ」
ワイはため息をついた。
「ワイ、ただのおっさんやで……?」
目の前では、監査兵がゆっくりこちらに手を向けている。
空には広がるVOID亀裂。
大地はボロアパートの駐車場。
ワイの身体の中には悪魔。
目の前には天使。
……もう、どう考えても普通の人生には戻れへんな。
「しゃーない……!
いっちょ暴れてやんで!」
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