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第三十四話:儚い夢を袖に絡めて
朝。
ルヴィエラの街の装飾と、残された雨水が日に照らされ、幻想的な世界を作り上げた。
人々の活気も、熱も変わらずそこにある。
その街に背を向けて、二人は街道に出ていた。
「本当に、いいのか?」
「うん。怖いわけじゃないよ」
ファルの視線とサラの視線が交差した。
僅かな期待と、確かな想いがそこにはある。
「今の私には、必要ないって、分かったから」
『灰刻の保管庫』にある歴史の数々。
そんなものは、彩られた街にだけあればいい。
サラは前を向き、大きく、静かに息を吸い込んだ。
僅かに残る潮の香り、土、草花の香り。
そして、確かにそこにある、変えがたい香り。
どれも、離れてしまえば、すぐに消えてしまう。
サラは深く、刻む。
今を、忘れないように。
「ねえ…いつか二人で、また来よう?…約束」
「そうだな。…約束、しよう」
「…うん」
確かに交わした、細やかな約束。
まるで、その約束を離さないと願うように、サラの小さな手は、ファルの袖を掴んだまま離さなかった。
第三章 完
次回、幕間




