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虚飾の歴史に、夢は解けて。――二人の罪人は再演の旅を  作者: はる
【第一章】二人の罪人

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幕間:「さよなら、世界一誠実なうそつきさん」

白亜の階段で、ソフィアは最期に「うそつき」と微笑みました。

 

 その言葉は数千年の間、ファルを縛り、彼を孤独な旅へと駆り立てる呪いとなりました。

 けれど、その呪いの裏側に隠されていたのは、あまりに不器用で、あまりに切実な一人の少女の「祈り」でした。

 第一幕、最後の欠片。

 語られることのなかったソフィアの真意が、崩れゆく箱庭の中で静かに溶け出します。

 私は貴方を縛り付けた。


 約束という名の鎖で……。


 きっと、貴方はその鎖を自分から切ることはしないと知っていたから。

 

 貴方は、嘘がつけない可愛い人だから。


 たとえ、何を犠牲にしても、嘘を本当にしてしまうのてましょうね。


 お腹に刺さった剣の冷たさよりも、泣きそうな貴方の瞳の方が、ずっと痛かった。


 神様は、私を連れ去ろうとしている。


 私を『神が愛する聖女』と讃えた人たちは、その神の機嫌を伺うために、私を差し出した。


 私が死ねば、世界に興味のない神様は、理を曲げてでも『私であったもの』を手に入れるでしょう。


 貴方はきっと、そんな神様を許さない。けれど、民衆を恨むこともしないのだと、私は知っている。


 この不条理な世界を、そして自分自身を壊してでも、貴方はすべてを守ってしまう。


 だから、私は呪いをかけたの。


 私がいない世界でも、貴方が「私」という目的を見失わないように。


『ずっと一緒』


 その言葉が、貴方にとって永遠に出ることの叶わない「牢獄」になると知りながら。


 神様から『私であったもの』を奪い返して欲しくて、私は貴方の心に「私」という消えない傷を刻みつけた。


 最期に口にした「うそつき」という言葉。


 それは、貴方が「約束」という鎖を二度と解けないよう、鍵をかけてしまいたかったから。


 けれど、本当は知っていたの。


 そんな鎖も、鍵も、必要なんてなかったのだと。


 貴方は本当に、救いようがないほど誠実な人。


 数千年の孤独のなかで、貴方は一度だって私を疑わないだろうことも。


 私の遺骸を抱き、私の魂を探し、私が遺した呪いのような「うそ」を、世界でたった一つの「真実」に育て上げてしまうことも。


 ……全部、分かっていたの。


 ごめんなさい、陛下。


 貴方の愛を信じきれず、試すような真似をしたのは私の方なのに。


 貴方を「うそつき」と呼んで、こんなに長く、独りぼっちにさせてしまって。

 

 でも、もう大丈夫。


 貴方の前にいま、立っているあの子を見て。


 あの子は私じゃないけれど、『私であった私』よりもずっと、貴方の幸せを願っている。


 私が貴方にかけた「一方的な約束」を、あの子がいま、新しい「一方的な誓い」で上書きしようとしている。


 あの子の手を取って、ファル。


 あの子はまだ気付いてはいないけれど、きっと……。

 

 私の夢は、もうここで終わり。


 ここからは、貴方たち二人の……新しい「罪」の話。


 さようなら、私の愛した、世界一誠実なうそつきさん。

 最後までお読みいただき、本当にありがとうございました。

「うそつき」という言葉で鎖に鍵をかけ、彼を「約束」という名の牢獄に閉じ込めたソフィア。

 それは、彼女なりの歪んだ愛の形でした。

 数千年の時を経て、その重すぎる鍵を壊し、彼を「人間」として連れ出すと誓ったサラ。

 

 かつての聖女と呼ばれた少女が遺した『呪いという名の祈り』は、今を生きる一人の少女が掲げた『一方的な誓い』によって塗り替えられました。

 二人はようやく、本当に自らが望む未来のために歩き出します。

次回より、第二幕が始まります。

 二人の「罪人」はどう生き抜くのか、見届けて頂けたら幸いです。

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