ファミリーレストランを支えるセントラルキッチン革命 第6話:深夜営業と、ドリンクバー
作者のかつをです。
第十三章の第6話をお届けします。
今では当たり前の「24時間営業」や「ドリンクバー」。
今回は、それらのサービスがいかにして生まれ、そしてファミリーレストランを単なる食事の場所から人々の「居場所」へと変えていったのかを描きました。
※この物語は史実を基にしたフィクションです。登場する人物、団体、事件などの描写は、物語を構成するための創作であり、事実と異なる場合があります。
ファミリーレストランは、日本の郊外の風景を完全に変えた。
しかし、彼らの革命はまだ止まらなかった。
彼らは、人々の「時間」と「空間」の常識さえも塗り替えていくことになる。
その最初の挑戦が、「深夜営業」そして「24時間営業」だった。
1970年代。
日本の社会は夜型化へと大きくシフトし始めていた。
残業で夕食の時間が遅くなるサラリーマン。
深夜まで語り明かす若者たち。
しかし、街から終電がなくなると彼らが行ける場所はどこにもなかった。
ロイヤルホストの創業者、江頭匡一はそこに新しいビジネスチャンスを見出した。
「夜、安心して過ごせる場所を提供したい」
セントラルキッチンとマニュアル化されたオペレーション。
その効率的なシステムがあったからこそ、この常識破りの挑戦は可能だった。
少ない人数で、深夜でも安定したサービスを提供できる。
ファミリーレストランは、夜の砂漠のオアシスとなった。
それは、単に食事をするだけの場所ではなかった。
若者たちが夢を語り合う語り場となり、クリエイターがアイデアを練る書斎となり、そして家に帰りたくない人々が一人静かに時間を過ごす避難所ともなった。
そして、もう一つの偉大な発明が生まれる。
「ドリンクバー」である。
それは、すかいらーくのある店舗の一人の店長の、ささやかなアイデアから始まったと言われている。
「お客様にもっとゆっくりと過ごしていただくには、どうすればいいか」
定額で好きな飲み物を好きなだけ自分で注ぎに行ける。
その画期的なシステムは、客の滞在時間を劇的に伸ばした。
高校生がドリンクバーだけで何時間も粘って勉強する。
主婦たちがランチの後、おしゃべりを心ゆくまで楽しむ。
経営的に見れば、非効率な客かもしれない。
しかし、ファミリーレストランはその非効率さを受け入れた。
なぜなら、彼らが売っていたのはもはや単なる「料理」ではなかったからだ。
彼らが売っていたのは、人々が自由に気兼ねなく過ごせる「時間」と「空間」そのものだったのだ。
食事をする場所、「レストラン」。
その本来の意味を超えて、ファミリーレストランは地域のあらゆる人々が集う公民館であり、談話室であり、そしてもう一つのリビングルームのようなかけがえのない「インフラ」へと進化していった。
最後までお読みいただき、ありがとうございます!
ドリンクバーは店側の人件費削減にも大きく貢献しました。客が自分で飲み物を取りに行くため、ウェイトレスがお代わりを聞きに行く手間が省けるのです。まさに、客と店双方にメリットのある素晴らしい発明でした。
さて、日本の新しい「団らんの場所」を創り上げたファミリーレストラン。
その革命は、現代の私たちにどう繋がっているのでしょうか。
次回、「あなたの街の、あの場所で(終)」。
第十三章、感動の最終話です。
物語は佳境です。ぜひ最後までお付き合いください。
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