回転寿司を発明した男の夢 第6話:万博での大成功
作者のかつをです。
第十一章の第6話をお届けします。
一つの発明が、いかにしてローカルなブームからナショナルな文化へと飛躍していくのか。
今回は、その大きな転換点となった「大阪万博」を舞台に描きました。
※この物語は史実を基にしたフィクションです。登場する人物、団体、事件などの描写は、物語を構成するための創作であり、事実と異なる場合があります。
「廻る元禄寿司」の成功は、白石義明に大きな自信を与えた。
彼は、この画期的なシステムを大阪だけのものにしておくつもりはなかった。
「この回転寿司の楽しさを、日本中の、いや世界中の人々に知ってもらいたい」
彼の野心は、大きく膨らんでいた。
そんな彼に、千載一遇のチャンスが舞い込んでくる。
1970年。
大阪で日本万国博覧会(大阪万博)が開催されることになったのだ。
「人類の進歩と調和」をテーマに、世界中から最新の技術と文化が集結する世紀の祭典。
白石は、この万博の会場に自らの回転寿司店を出店するという、大胆な計画を立てた。
彼の狙いは、ただ一つ。
世界中から集まる何千万人という人々に、回転寿司という未来の食事の形を見せつけることだった。
彼は、万博のテーマ館「水産館」の中に巨大な特設店舗をオープンさせた。
流れるレーンの上には、日本の新鮮な海の幸が色とりどりに輝いていた。
その奇想天外な光景は、万博を訪れた多くの人々の度肝を抜いた。
「寿司が、動いているぞ!」
「Oh, Amazing! Sushi-Go-Round!」
白石の店は、連日長蛇の列が絶えない万博屈指の人気パビリオンとなった。
人々はただ寿司を食べるためだけではなかった。
その未来的なエンターテイメント空間を、体験するために彼の店にやってきたのだ。
この万博での圧倒的な成功が、回転寿司の運命を決定づけた。
それまで、大阪のローカルな珍しい店でしかなかった「元禄寿司」の名は、一気に全国区へと轟いた。
万博のニュース映像を通じて、流れる寿司の光景は日本中のお茶の間の知るところとなったのだ。
「うちの町にも、あの回る寿司屋が欲しい」
全国の寿司職人や経営者から、白石の元へ問い合わせが殺到した。
彼はこのチャンスを逃さなかった。
自らが特許を持つコンベアの技術を、フランチャイズという形で全国に広めていくことを決意する。
大阪万博は、日本の高度経済成長の象徴だった。
そして、その片隅で産声を上げた回転寿司は、まさにその時代の申し子だったのだ。
安く、早く、そして誰もが楽しめる。
その大衆のエネルギーに満ちた、新しい時代の食文化が今、まさに日本全土へと広がっていこうとしていた。
最後までお読みいただき、ありがとうございます!
大阪万博は日本の外食産業にとって、非常に大きなエポックメイキングな出来事でした。回転寿司だけでなく、ファミリーレストランやファストフードといった新しい業態が、この万博をきっかけに大きく飛躍したのです。
さて、ついに全国的な知名度を得た回転寿司。
それは、日本の食文化に何をもたらしたのでしょうか。
次回、「寿司の民主化革命」。
回転寿司が起こした、静かなる、しかし偉大な革命に光を当てます。
物語は佳境です。ぜひ最後までお付き合いください。
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