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食文化創世記~味の開拓者たち~  作者: かつを
第1部:食卓の革命編 ~家庭の「当たり前」が生まれた瞬間~
3/68

世界を変えた「うま味」の発見 第3話:純粋な科学的探求心

作者のかつをです。

第3話、お楽しみいただけましたでしょうか。

 

今回は池田博士が単なる科学者ではなく、社会を見据える広い視野を持った人物だったことを描きました。

彼の発見の裏にあった熱い想いを感じていただければと思います。

 

※この物語は史実を基にしたフィクションです。登場する人物、団体、事件などの描写は、物語を構成するための創作であり、事実と異なる場合があります。

グルタミン酸という正体を突き止めた池田菊苗は、この新しい味に名前を与えることにした。

 

美味しい、という言葉の根源。

彼はそれを「うま味(旨味)」と名付けた。

 

甘味、塩味、酸味、苦味に続く第五の基本味。

その誕生の瞬間だった。

 

しかし、彼の探求はここで終わりではなかった。

むしろ、ここからが本当の始まりだったのだ。

 

彼の脳裏には、かつてドイツに留学していた頃の光景が鮮明に焼き付いていた。

屈強な体格のドイツ人たち。

豊かで栄養価の高い彼らの食事。

 

それに比べて、当時の日本の食生活はまだ貧しかった。

質素な食事で栄養が足りていない人々が大勢いたのだ。

 

「この『うま味』をもっと手軽に安価に、誰もが使える調味料にすることはできないだろうか」

 

もしうま味調味料があれば、粗末な食事でも美味しく満足感が得られるようになる。

食事が進めば人々の栄養状態もきっと改善されるはずだ。

 

彼の純粋な科学的探求心は、いつしか社会貢献への熱い使命感へと変わっていた。

 

「日本の人々の栄養状態を、食生活の改善によって向上させたい」

 

その大きな志が彼の新たな原動力となった。

 

彼はグルタミン酸を調味料として製品化するための具体的な方法を模索し始める。

鍵となるのはナトリウムと結合させ、水に溶けやすく使いやすい「グルタミン酸ナトリウム」の形にすることだった。

 

発見を発見のままで終わらせない。

それを人々の暮らしに役立つ「発明」へと昇華させる。

 

池田菊苗は白衣を纏った、静かなる革命家だった。

彼の視線は研究室のフラスコの向こう側にある、日本の食卓の未来をまっすぐに見据えていた。

最後までお読みいただき、ありがとうございます!

 

池田博士のドイツ留学経験が彼の人生観に大きな影響を与えていたようです。「日本人の栄養改善」という大きなテーマが彼の研究の根底にはありました。

 

さて、偉大な志を抱いた池田博士。

しかし、彼のアイデアを「製品」として世に出すには新たな協力者と、そして乗り越えなければならない高い技術的な壁が待ち受けていました。

 

次回、「工業化への高い壁」。

研究室から工場へ。物語の舞台は新たな局面を迎えます。

 

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