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食文化創世記~味の開拓者たち~  作者: かつを
第1部:食卓の革命編 ~家庭の「当たり前」が生まれた瞬間~
3/18

昆布と博士と魔法の粉 第3話:純粋な科学的探求心

作者のかつをです。

第3話、お楽しみいただけましたでしょうか。

 

今回は、池田博士が単なる科学者ではなく、社会を見据える広い視野を持った人物だったことを描きました。

彼の発見の裏にあった、熱い想いを感じていただければと思います。

 

※この物語は史実を基にしたフィクションです。登場する人物、団体、事件などの描写は、物語を構成するための創作であり、事実と異なる場合があります。

グルタミン酸という正体を突き止めた池田菊苗は、この新しい味に、名前を与えることにした。

 

美味しい、という言葉の根源。

彼は、それを「うま味(旨味)」と名付けた。

 

甘味、塩味、酸味、苦味に続く、第五の基本味。

その誕生の瞬間だった。

 

しかし、彼の探求は、ここで終わりではなかった。

むしろ、ここからが、本当の始まりだったのだ。

 

彼の脳裏には、かつてドイツに留学していた頃の光景が、鮮明に焼き付いていた。

屈強な体格のドイツ人たち。

豊かで、栄養価の高い、彼らの食事。

 

それに比べて、当時の日本の食生活は、まだ貧しかった。

質素な食事で、栄養が足りていない人々が大勢いたのだ。

 

「この『うま味』を、もっと手軽に、安価に、誰もが使える調味料にすることはできないだろうか」

 

もし、うま味調味料があれば、粗末な食事でも、美味しく、満足感が得られるようになる。

食事が進めば、人々の栄養状態も、きっと改善されるはずだ。

 

彼の純粋な科学的探求心は、いつしか、社会貢献への、熱い使命感へと変わっていた。

 

「日本の人々の栄養状態を、食生活の改善によって、向上させたい」

 

その大きな志が、彼の新たな原動力となった。

 

彼は、グルタミン酸を調味料として製品化するための、具体的な方法を模索し始める。

鍵となるのは、ナトリウムと結合させ、水に溶けやすく、使いやすい「グルタミン酸ナトリウム」の形にすることだった。

 

発見を、発見のままで終わらせない。

それを、人々の暮らしに役立つ「発明」へと昇華させる。

 

池田菊苗は、白衣を纏った、静かなる革命家だった。

彼の視線は、研究室のフラスコの向こう側にある、日本の食卓の未来を、まっすぐに見据えていた。

最後までお読みいただき、ありがとうございます!

 

池田博士のドイツ留学経験が、彼の人生観に大きな影響を与えていたようです。「日本人の栄養改善」という大きなテーマが、彼の研究の根底にはありました。

 

さて、偉大な志を抱いた池田博士。

しかし、彼のアイデアを「製品」として世に出すには、新たな協力者と、そして、乗り越えなければならない、高い技術的な壁が待ち受けていました。

 

次回、「工業化への高い壁」。

研究室から、工場へ。物語の舞台は、新たな局面を迎えます。

 

物語の続きが気になったら、ぜひブックマークをお願いします!

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