讃岐うどん、観光資源化への道 第5話:ブームの光と影
作者のかつをです。
第二十六章の第5話をお届けします。
観光公害という言葉が一般的になるずっと前から、香川県はこの問題と向き合っていました。
文化を守るための闘いと、共存への道を描きました。
※この物語は史実を基にしたフィクションです。登場する人物、団体、事件などの描写は、物語を構成するための創作であり、事実と異なる場合があります。
うどん巡礼ブームは、香川県に多大な経済効果をもたらした。
しかし同時に、静かな田舎町にかつてない混乱をもたらすことにもなった。
細い農道に県外ナンバーの車が列をなし、地元の農作業車が通れなくなる。
マナーの悪い客が民家の敷地に勝手に駐車したり、ゴミを捨てていったりする。
「うどん屋のせいで、生活がめちゃくちゃだ」
近隣住民からの苦情が相次ぎ、人気店の中には閉店を余儀なくされるところも出てきた。
また、ブームに便乗して安易に店を出し、質の低いうどんを提供する店も現れ始めた。
田尾和俊は、自らが火をつけたブームの過熱ぶりに危機感を抱いていた。
「このままでは、香川のうどん文化そのものがダメになってしまう」
彼は雑誌やメディアを通じて、観光客へのマナー啓発を必死に呼びかけた。
「路駐はやめよう」「ゴミは持ち帰ろう」「店の人の迷惑にならないように」。
同時に、うどん店主たちも結束した。
警備員を配置して交通整理を行ったり、駐車場を拡張したり。
自分たちの商売が地域に受け入れられ続けるために、地道な努力を重ねた。
そして行政もようやく動き出す。
ブームを単なる一過性のものにせず、持続可能な観光資源として育てるために、「うどん県」としてのブランド化に本腰を入れ始めたのだ。
うどんタクシーの運行、うどん作り体験教室の開催、うどんマップの作成。
県を挙げてのバックアップ体制が整えられていった。
トラブルや摩擦を乗り越えながら、香川県の人々は「うどん」という自分たちの宝物を、どうやって守り、どうやって外の人々と分かち合うかを学んでいった。
それは、地方が観光地化していく過程で必ず直面する「痛み」であり、同時に「成長」の物語でもあった。
最後までお読みいただき、ありがとうございます!
うどんブームの裏には、多くの店の閉店や移転といったドラマがありました。それでも讃岐うどんが今なお愛され続けているのは、こうした地域の人々の努力があったからこそです。
さて、数々の試練を乗り越え、完全に定着したうどん文化。
その先には、まさかの「改名宣言」が待っていました。
次回、「うどん県、誕生(終)」。
第二十六章、感動の最終話です。
物語は佳境です。ぜひ最後までお付き合いください。
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