たこ焼きを「おやつ」から「食事」に変えた男たち 第4話:中野の行列
作者のかつをです。
第二十五章の第4話をお届けします。
たこ焼きが行列グルメになり、そして居酒屋メニューになる。
今回は、銀だこが巻き起こした社会現象と、たこ焼きの進化の過程を描きました。
ハイボールとたこ焼きの組み合わせ、最高ですよね。
※この物語は史実を基にしたフィクションです。登場する人物、団体、事件などの描写は、物語を構成するための創作であり、事実と異なる場合があります。
1998年、築地銀だこはついに東京進出を果たす。
場所は、中野サンモール商店街。
多くの飲食店がひしめき合う激戦区だ。
佐瀬守男は勝負に出た。
群馬で培った「実演販売」のスタイルを、人通りの多い商店街のど真ん中で展開したのだ。
開店初日。
商店街を歩く人々は、ガラス張りの向こうで繰り広げられる職人技に目を奪われた。
そして、漂ってくる強烈に香ばしいソースの匂い。
あっという間に店の前には黒山の人だかりができた。
行列は商店街の通路を塞ぐほどに伸び、整理券を配らなければならないほどの騒ぎとなった。
「たこ焼きを買うのに、1時間待ち?」
「並んででも食べたい味なんだって」
メディアもこの現象を放ってはおかなかった。
テレビのワイドショーや雑誌がこぞって「行列のできるたこ焼き屋」として取り上げた。
「外はカリカリ、中はトロトロ」
そのキャッチフレーズと共に、銀だこの名は瞬く間に全国区となった。
東京での成功は、たこ焼きという食べ物の地位を一変させた。
それまでは縁日の露店で買うものだったたこ焼きが、わざわざ電車に乗って買いに行く「目的」になったのだ。
仕事帰りのサラリーマンが、家族への土産に箱入りのたこ焼きを買って帰る。
若者たちがデートの合間に、熱々のたこ焼きをシェアする。
銀だこは、たこ焼きを「ハレの日の食事」へと格上げしたのだ。
さらに佐瀬は、店舗展開のスピードを加速させた。
ショッピングモールのフードコート、駅前、ロードサイド。
日本中のあらゆる場所に、あの赤い看板とガラス張りの店舗が現れた。
そして、彼らは次なる一手を打つ。
「たこ焼きで、酒を飲む」というスタイルの提案だ。
「銀だこハイボール酒場」。
熱々のたこ焼きを頬張りながら、冷たいハイボールを流し込む。
その相性の良さは抜群で、たこ焼きは「おやつ」から「酒の肴」、そして「大人の社交場の主役」へと、その活躍の場をさらに広げていった。
かつて群馬の移動販売車で夢見た「たこ焼きを日本の国民食にする」という野望。
それは、たった数年で現実のものとなり、日本の食の風景を塗り替えてしまった。
最後までお読みいただき、ありがとうございます!
中野店の成功は凄まじく、当時のたこ焼きブームの火付け役となりました。その後、「ハイボール酒場」という業態を開発したことで、夜の需要も取り込むことに成功し、銀だこの成長は盤石なものとなりました。
さて、全国制覇を成し遂げた銀だこ。
その熱狂は、現代の私たちにどう繋がっているのでしょうか。
次回、「赤い舟皿の記憶(終)」。
第二十五章、感動の最終話です。
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