表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
食文化創世記~味の開拓者たち~  作者: かつを
第2部:外食文化の設計者編 ~レストランの「仕組み」を創った人々~
149/150

たこ焼きを「おやつ」から「食事」に変えた男たち 第2話:油で揚げるという革命

作者のかつをです。

第二十五章の第2話をお届けします。


賛否両論を巻き起こしながらも、確実にファンを増やしていった「揚げ焼き」スタイル。

今回は、その画期的な調理法が生まれた瞬間のひらめきを描きました。


※この物語は史実を基にしたフィクションです。登場する人物、団体、事件などの描写は、物語を構成するための創作であり、事実と異なる場合があります。

「時間が経ってもへたらず、カリッとした食感を保つにはどうすればいいか」

 

佐瀬守男は、来る日も来る日も鉄板に向かい試行錯誤を繰り返していた。

生地の配合を変え、火加減を調整し、何千個ものたこ焼きを焼いては捨て、焼いては食べた。

 

大阪の昔ながらのたこ焼きは、ふわふわとした柔らかさが特徴だ。

しかし佐瀬が目指したのは、それとは対極にある「食感のコントラスト」だった。

 

ある日、彼は中華料理の調理法からヒントを得る。

「揚げ焼き」である。

 

仕上げに油を回しかけることで、表面を高温で一気に硬化させる。

そうすれば水分を中に閉じ込めつつ、外側に強固な壁を作ることができるのではないか。

 

彼は早速試してみた。

たこ焼きが焼き上がる直前、鉄板の上に油を注ぐ。

ジュワッという激しい音と共に、たこ焼きの表面が黄金色に輝き始める。

 

そして出来上がった熱々の一粒を口に放り込む。

 

「……これだ!」

 

カリッという小気味よい音と共に歯が表面を突き破ると、中から熱々のトロトロの生地と旨味が溢れ出してくる。

外側の香ばしさと内側のクリーミーさ。

その劇的なコントラストは、これまでのたこ焼きにはない新しい体験だった。

 

さらに彼は具材にも徹底的にこだわった。

 

主役のタコは、世界中から探し求めた歯ごたえの良い高品質なものを、惜しげもなく大きくカットして入れる。

生地には干しエビ粉やカツオ出汁をたっぷりと練り込み、何もつけなくても美味しいほどの深い味わいを持たせた。

そして天かす、紅生姜、ネギ。

それぞれの具材が最高のバランスで協奏曲を奏でるように、配置や量も計算し尽くした。

 

「絶対にうまい。これなら食事として通用する」

 

しかし、この「揚げ焼き」という製法にはリスクもあった。

油を多く使うことで「脂っこい」「邪道だ」という批判を受ける可能性があったのだ。

特に関西のたこ焼きファンからは、反発が予想された。

 

それでも彼は自分の舌を信じた。

美味しいものは、理屈抜きに人を笑顔にする。

この「カリとろ」の食感こそが、たこ焼きを次のステージへ引き上げる鍵になると確信していたのだ。

 

こうして、「築地銀だこ」の原点となる味は完成した。

次は、この味をどうやって客に届けるか。

彼は店の「見せ方」にも、あっと驚くような仕掛けを用意していた。

最後までお読みいただき、ありがとうございます!


仕上げに油をかけるという工程は、実はたこ焼きを型から剥がれやすくし、作業効率を上げるという側面もありました。美味しさと効率化を同時に実現した、まさに発明だったのです。


さて、究極のたこ焼きを作り上げた佐瀬。

彼はその販売方法にも、ある革命的なアイデアを持ち込みます。


次回、「ガラス張りの劇場」。

たこ焼き屋をエンターテイメントに変えた戦略とは。


よろしければ、応援の評価をお願いいたします!

ーーーーーーーーーーーーーー

もし、この物語の「もっと深い話」に興味が湧いたら、ぜひnoteに遊びに来てください。IT、音楽、漫画、アニメ…全シリーズの創作秘話や、開発中の歴史散策アプリの話などを綴っています。


▼作者「かつを」の創作の舞台裏

https://note.com/katsuo_story

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ