たこ焼きを「おやつ」から「食事」に変えた男たち 第1話:路地裏の駄菓子
作者のかつをです。
本日より新章、第二十五章「天かすと紅生姜の協奏曲」の連載を開始します。
今回の主役は、もはや説明不要の国民的ファストフード「たこ焼き」。
その地位を不動のものにした「築地銀だこ」の創業ストーリーと、味へのこだわりの物語です。
※この物語は史実を基にしたフィクションです。登場する人物、団体、事件などの描写は、物語を構成するための創作であり、事実と異なる場合があります。
2026年、東京・新宿の繁華街。
香ばしいソースの匂いと活気ある掛け声に誘われて、人々が赤い看板の店の前に列を作っている。
ガラス越しに見えるのは、職人たちが手際よく千枚通しを操り、鉄板の上で踊るように丸いたこ焼きを焼き上げる光景だ。
熱々の舟皿を受け取った客たちは、それをハフハフと頬張りながら満面の笑みを浮かべる。
ビールを片手に仕事帰りの一杯を楽しむサラリーマン、部活帰りの学生たち、そして夕食のおかずとして買い求める主婦。
今やたこ焼きは、立派な「食事」であり、酒の肴であり、日本の食文化を代表するファストフードとしての地位を確立している。
しかし、ほんの数⼗年前まで、たこ焼きといえば神社の縁日や路地裏の駄菓子屋で、子供たちが小銭を握りしめて買う「おやつ」に過ぎなかった。
時間が経てばべちゃっとしてしまい、冷めたら美味しくない。
あくまで小腹を満たすための軽食であり、大人がわざわざ並んで食べるようなものではないと見なされていたのだ。
そんなたこ焼きの常識を覆し、それを「ごちそう」へと昇華させた一人の男がいた。
「築地銀だこ」の創業者、佐瀬守男である。
物語は1990年代半ば、群馬県のとある街角から始まる。
当時、佐瀬は焼きそばや今川焼きを移動販売車で売る商売をしていた。
全国各地を回りながら、彼はあることに気づく。
どこの祭りに行っても、一番長い行列ができているのは決まってたこ焼きの屋台だった。
「たこ焼きには、人を惹きつける不思議な魔力がある」
しかし同時に、彼は既存のたこ焼きに対する不満も抱いていた。
焼きたては美味しいが、持ち帰るとすぐにしぼんでしまう。
中に入っているタコは小さく、生地の味も単調だ。
「もっと美味しくて、冷めてもパリッとしていて、大人が食事として満足できるたこ焼きは作れないだろうか」
彼の頭の中に、理想のたこ焼きのイメージが膨らみ始めていた。
それは外はパリパリ、中はトロトロ、そして主役であるタコがゴロッと入った、まだ誰も見たことのない究極のたこ焼きだった。
彼は決意する。
たこ焼きを、単なる駄菓子から脱却させ、日本の新しい国民食にするのだと。
その挑戦は、群馬県の小さなスーパーの駐車場に構えた、一軒のテナントから始まった。
最後までお読みいただき、ありがとうございます!
第二十五章、第一話いかがでしたでしょうか。
たこ焼きの発祥は大阪ですが、それを全国区のチェーン店として確立させたのは、意外にも群馬県出身の起業家でした。外部の視点だからこそ、既存の枠にとらわれない発想が生まれたのかもしれません。
さて、理想のたこ焼きを求めて立ち上がった佐瀬。
しかし、「外はパリパリ」という食感を実現するには、ある常識破りの調理法が必要でした。
次回、「油で揚げるという革命」。
銀だこの代名詞ともいえるあの食感の秘密に迫ります。
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