なめらかプリンが起こしたデザート革命 第3話:とろける食感の秘密
作者のかつをです。
第二十四章の第3話をお届けします。
ついに完成した理想のプリン。
計算された配合と、自然の物理法則が生み出した「三層構造」の奇跡。
美味しいものには、必ず理由があるのですね。
※この物語は史実を基にしたフィクションです。登場する人物、団体、事件などの描写は、物語を構成するための創作であり、事実と異なる場合があります。
何百回という試作の末、所浩史はついに一つの光明を見出した。
ポイントは「低温で、じっくり」焼くことだった。
通常のプリンよりもはるかに低い温度設定で、時間をかけて熱を入れていく。
そうすることで、卵黄の凝固作用と生クリームの濃厚さがゆっくりと結びつき、ギリギリ形を保てる柔らかさに仕上がるのだ。
そしてある朝、冷蔵庫で一晩冷やした試作品をスプーンですくってみた時のことだ。
「……これだ」
スプーンを入れた感触が、今までとは明らかに違っていた。
抵抗なくすっと入り、持ち上げるととろりと崩れ落ちそうになる。
口に運ぶと、舌の上でクリームのように広がり、濃厚なミルクと卵の風味が鼻に抜ける。
そして後味は驚くほど軽やかで、すっと消えていく。
それはまさに、彼が追い求めていた「なめらか」な食感そのものだった。
さらに、このプリンには予期せぬ嬉しい副作用があった。
じっくりと焼き上げ冷やす過程で、比重の違いによって自然と「三つの層」ができていたのだ。
一番上は、生クリームの成分が浮き上がってできた濃厚でコクのある層。
真ん中は、卵と牛乳のバランスが良い、とろとろのプリン層。
そして一番下には、ほろ苦いカラメルソースの層。
一つのカップの中で、食べ進めるごとに味が変化していく。
最初は濃厚に、次はまろやかに、最後はビターに。
この「三層構造」こそが、飽きずに最後まで食べられる魔法の仕掛けとなった。
「これなら、お腹いっぱいのお客様でも別腹で食べていただける」
彼は自信を持って、この新作デザートをレストランのメニューに加えた。
名前は、その特徴をそのまま表現して「なめらかプリン」。
最初はおそるおそる注文していた客たちも、一口食べた瞬間に目を見開いた。
「何これ? プリンじゃないみたい!」
「飲めるくらい柔らかい!」
「こんなに美味しいプリン、初めて食べた」
レストランの中だけで提供されていたそのデザートは、瞬く間に評判となった。
「あのプリンを食べるために、また店に行きたい」という客が続出したのだ。
そして、「家でも食べたい」「お土産に持って帰りたい」という要望が殺到し始める。
所は決断した。
このプリンを、レストランのデザートという枠から解き放ち、テイクアウト商品として販売しようと。
それは、パステルというブランドが、そして日本のスイーツ業界が大きく動き出す転換点だった。
最後までお読みいただき、ありがとうございます!
「なめらかプリン」の最大の特徴である三層構造。これは意図して作ったというよりは、美味しいものを追求する過程で結果的に生まれたものだと言われています。まさに天からの贈り物ですね。
さて、テイクアウトを開始したなめらかプリン。
その評判は口コミで広がり、やがて社会現象となっていきます。
次回、「行列のできるプリン屋さん」。
ブームの到来と、その後の広がりを描きます。
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