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食文化創世記~味の開拓者たち~  作者: かつを
第2部:外食文化の設計者編 ~レストランの「仕組み」を創った人々~
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なめらかプリンが起こしたデザート革命 第2話:卵白を捨てる勇気

作者のかつをです。

第二十四章の第2話をお届けします。

 

常識を疑い、新しい材料の配合に挑む。

しかし、それは同時に「固まらない」という新たな壁にぶつかることでもありました。

繊細なスイーツ作りの、科学実験のような一面を描きました。

 

※この物語は史実を基にしたフィクションです。登場する人物、団体、事件などの描写は、物語を構成するための創作であり、事実と異なる場合があります。

「満腹でも食べられる、口溶けの良いプリン」

 

その理想を実現するために、所浩史はプリンの材料を一から見直すことにした。

 

従来のプリンの基本材料は、牛乳、砂糖、そして「全卵(卵黄と卵白)」である。

特に卵白に含まれるタンパク質は、熱を加えるとしっかりと固まる性質を持っており、これがプリン独特のプルンとした弾力を生み出していた。

 

「この弾力が、お腹に溜まる原因かもしれない」

 

所は考えた。

もし、固める力の強い卵白を使わずに、コクのある「卵黄」だけを使ったらどうなるだろうか。

 

さらに彼は、牛乳の一部を「生クリーム」に置き換えることを思いつく。

生クリームの乳脂肪分が加われば、より濃厚でクリーミーな味わいになり、食感も滑らかになるはずだ。

 

「卵黄と、生クリーム。この二つを軸にするんだ」

 

それは、プリンというよりは、フランス料理のデザートである「クレームブリュレ」に近い発想だった。

しかし、クレームブリュレは平たい皿に入れて表面をキャラメリゼして食べるもの。

所が目指していたのは、あくまでスプーンですくって食べる「カップ入りのプリン」だった。

 

彼は早速試作に取り掛かった。

卵白を捨て、卵黄だけを集める。

そこにたっぷりの生クリームと牛乳、砂糖を混ぜ合わせる。

 

出来上がった液体アパレイユは、通常のものよりも黄色く、とろりとしていた。

これをカップに注ぎ、オーブンに入れて蒸し焼きにする。

 

しかし、ここからが苦難の始まりだった。

 

焼きあがったプリンをオーブンから取り出してみると、それは固まるどころか、ドロドロの液体のままだった。

卵白という「骨格」を失ったプリンは、熱を加えても形を保つことができなかったのだ。

 

「やはり、卵黄だけでは無理なのか……」

 

かといって、温度を上げたり焼き時間を長くしたりすると、今度は卵黄に火が入りすぎてボソボソとした炒り卵のような食感になってしまう。

いわゆる「す」が入った状態だ。

これでは、目指す「なめらかさ」とは程遠い。

 

固まらないか、ボソボソになるか。

その両極端の間にあるはずの、ほんの一点の「絶妙な固さ」を見つけ出さなければならない。

 

所は諦めなかった。

卵黄と生クリームの配合比率、オーブンの温度、お湯の量、焼き時間。

無数の変数を組み合わせ、来る日も来る日も実験を繰り返した。

 

厨房のゴミ箱は、失敗したプリンの山で溢れかえった。

スタッフたちも心配そうに見守る中、彼はオーブンの前でじっと中の様子を凝視し続けた。

 

彼が探していたのは、液体が固体へと変わる瞬間の、魔法のようなバランスだった。

最後までお読みいただき、ありがとうございます!

 

卵白を使わずに卵黄だけで固めるというのは、非常に贅沢な作り方ですが、同時に技術的にも難しいものでした。生クリームの油脂分が熱伝導を邪魔するため、火の通り方が従来とは全く異なるからです。

 

さて、試行錯誤を続ける所シェフ。

彼はついに、理想の食感を生み出す「黄金の数式」を発見します。

 

次回、「とろける食感の秘密」。

それは、偶然が生んだ奇跡の層でした。

 

よろしければ、応援の評価をお願いいたします!

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もし、この物語の「もっと深い話」に興味が湧いたら、ぜひnoteに遊びに来てください。IT、音楽、漫画、アニメ…全シリーズの創作秘話や、開発中の歴史散策アプリの話などを綴っています。


▼作者「かつを」の創作の舞台裏

https://note.com/katsuo_story

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