表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
食文化創世記~味の開拓者たち~  作者: かつを
第2部:外食文化の設計者編 ~レストランの「仕組み」を創った人々~
135/151

激辛ブームを創ったエスニック料理の伝道師たち 第4話:ただ辛いだけじゃない

作者のかつをです。

第二十二章の第4話をお届けします。

 

ブームが去った後に残るものこそが本物。

今回は、単なる刺激物だった激辛料理が、「旨味」と結びつくことで深みのある食文化へと成熟していく過程を描きました。

 

※この物語は史実を基にしたフィクションです。登場する人物、団体、事件などの描写は、物語を構成するための創作であり、事実と異なる場合があります。

狂乱の激辛ブームが一段落し、ただ辛いだけの店が淘汰されていく中、本物の味を追求し続けた店だけが生き残った。

 

彼らが目指したのは「旨辛うまから」という境地だった。

 

唐辛子の辛さは、あくまで他の食材の味を引き立てるためのアクセントであるべきだ。

その哲学のもと、料理人たちはスープのコクやスパイスの配合比率を徹底的に研究し直した。

 

例えば、宮崎県発祥の「辛麺」。

大量の唐辛子とニンニクを使いながらも、溶き卵とニラで味をマイルドにまとめ上げ、鶏ガラスープの旨味をしっかりと感じさせる。

食べた瞬間は辛いが、その直後に押し寄せる甘みとコクが箸を止めさせない。

 

あるいは、中国・四川省の「麻婆豆腐」。

単に唐辛子のラーの辛さだけでなく、花椒ホアジャオの痺れるようなマーの刺激を加えることで、味に立体的な奥行きを持たせた。

 

「辛いけれど、また食べたくなる」

「汗をかいた後の爽快感がたまらない」

 

人々は気づき始めた。

激辛料理の真髄は我慢比べではなく、複雑に絡み合ったスパイスのハーモニーを楽しむことにあるのだと。

 

さらに、この頃から「カプサイシン」という成分の健康効果にも注目が集まるようになった。

脂肪燃焼効果や発汗作用。

激辛料理は単なる嗜好品から、美容や健康に良い食事としての新たな価値を獲得していった。

 

「キムチ鍋」が冬の定番メニューとして食卓に定着したのもこの頃だ。

かつては朝鮮漬けと呼ばれ匂いが敬遠されていたキムチが、日本の家庭の味として完全に市民権を得た瞬間だった。

 

激辛ブームという荒波に揉まれながら、日本人の舌は確実に鍛えられ、そして進化していた。

もはや唐辛子の赤色は「危険」のサインではなく、「食欲」をそそる魅力的なシグナルへと変わっていたのだ。

 

料理人たちの、妥協なき味への探求。

それが一過性のブームを、日本人の食生活の一部となる「文化」へと押し上げた原動力だった。

最後までお読みいただき、ありがとうございます!

 

90年代に入るとタイ料理やベトナム料理などのエスニックブームが再燃し、パクチーなどのハーブ類も広く受け入れられるようになりました。日本人の味覚のストライクゾーンはこの時期に一気に広がったと言えるでしょう。

 

さて、完全に定着した辛い料理。

その赤い魔法は現代の私たちに何をもたらしたのでしょうか。

 

次回、「食卓を彩る赤(終)」。

第二十二章、感動の最終話です。

 

よろしければ、応援の評価をお願いいたします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ