表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
食文化創世記~味の開拓者たち~  作者: かつを
第2部:外食文化の設計者編 ~レストランの「仕組み」を創った人々~
134/150

激辛ブームを創ったエスニック料理の伝道師たち 第3話:「激辛」という言葉の誕生

作者のかつをです。

第二十二章の第3話をお届けします。

 

1986年の流行語大賞受賞。

それは激辛が市民権を得た瞬間であり、同時に暴走し始めた瞬間でもありました。

今回は社会現象となったブームの光と影を描きました。

 

※この物語は史実を基にしたフィクションです。登場する人物、団体、事件などの描写は、物語を構成するための創作であり、事実と異なる場合があります。

1986年。

日本列島は、空前の「激辛ブーム」に沸き立っていた。

 

火付け役となったのは、湖池屋が発売したスナック菓子「カラムーチョ」だった。

「こんなに辛くてインカ帝国」というユニークなCMと共に登場したそのお菓子は、子供だけでなく大人たちをも虜にした。

 

それまでのスナック菓子にはなかった、唐辛子の刺激的な辛さとガーリックの旨味。

「辛いものは売れない」という食品業界のジンクスを真っ向から打ち破り、爆発的なヒット商品となったのだ。

 

これに続けとばかりに、各メーカーから辛さを売りにした商品が次々と発売された。

激辛カレー、激辛ラーメン、激辛せんべい。

スーパーやコンビニの棚は、パッケージの赤い色で埋め尽くされた。

 

そして、この年。

新語・流行語大賞の銀賞に「激辛」という言葉が選ばれる。

 

それまで「大辛」や「超辛」といった言葉はあったが、「激」という文字を使ってその強烈さを表現したこの造語は、時代の空気を完璧に捉えていた。

 

人々は刺激に飢えていたのだ。

安定成長に入り、どこか閉塞感が漂い始めていた社会。

その退屈な日常を打破してくれる手軽で強烈な刺激として、唐辛子のカプサイシンが求められたのかもしれない。

 

エスニック料理店の店先には、連日長蛇の列ができた。

汗をかきながら激辛料理を食べることは、一種のストレス解消法であり、時代の最先端を行くファッションでさえあった。

 

しかし、ブームが過熱するにつれて本来の目的を見失ったような商品も現れ始めた。

ただひたすらに辛いだけで旨味のない料理。

唐辛子エキスを抽出して危険なレベルまで辛くしたソース。

 

「辛ければ辛いほどいい」

 

そんなエスカレートする競争の中で、激辛ブームは次第にその質を変え始めていた。

それはもはや食文化の探求ではなく、我慢比べの様相を呈していたのだ。

 

ブームの火付け役となった料理人たちは、その狂騒を複雑な思いで見つめていた。

 

「私たちが伝えたかったのは、唐辛子の奥にあるハーブの香りや食材の旨味だ」

「ただ痛いだけの料理なんて、本場の味ではない」

 

彼らは危惧していた。

このままでは激辛は一過性のブームで終わり、消費され尽くして捨てられてしまうのではないかと。

 

ブームを文化として定着させるためには、もう一度「味」という原点に立ち返らなければならなかった。

最後までお読みいただき、ありがとうございます!

 

「カラムーチョ」の発売当初、社内では「辛いお菓子なんて売れるわけがない」と猛反対されたそうです。しかし担当者の熱意で発売にこぎつけ、結果として歴史を変えるヒット商品となりました。

 

さて、過熱するブームの中で本来の味を見失いかけていた激辛料理。

料理人たちはここから「旨辛」という新しい境地を目指します。

 

次回、「ただ辛いだけじゃない」。

ブームから文化への転換点です。

 

物語の続きが気になったら、ぜひブックマークをお願いします!

ーーーーーーーーーーーーーー

もし、この物語の「もっと深い話」に興味が湧いたら、ぜひnoteに遊びに来てください。IT、音楽、漫画、アニメ…全シリーズの創作秘話や、開発中の歴史散策アプリの話などを綴っています。


▼作者「かつを」の創作の舞台裏

https://note.com/katsuo_story

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ