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食文化創世記~味の開拓者たち~  作者: かつを
第2部:外食文化の設計者編 ~レストランの「仕組み」を創った人々~
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激辛ブームを創ったエスニック料理の伝道師たち 第2話:辛さを数値化する発明

作者のかつをです。

第二十二章の第2話をお届けします。

 

ただ食べるだけでなく、そこに「ゲーム性」を持たせること。

今回は激辛ブームを加速させた画期的なマーケティング手法に焦点を当てました。

「辛さ〇倍」という表記を見ると、つい挑戦したくなる心理。あれはこの時代に生まれたのですね。

 

※この物語は史実を基にしたフィクションです。登場する人物、団体、事件などの描写は、物語を構成するための創作であり、事実と異なる場合があります。

「辛すぎて食べられない」という客からのクレームの嵐。

普通ならここで「日本人向けに辛さを抑えよう」と妥協するのが常套手段だろう。

しかし、オーナーとシェフは首を縦に振らなかった。

 

「辛さを抜いてしまえば、それはもうタイ料理ではない」

 

彼らが守りたかったのは本場の味そのものだった。

ならば客が自分の好みに合わせて辛さを選べるようにすればいいのではないか。

 

そこで彼らが考案したのが、辛さを「数値化」してメニューに表示するというシステムだった。

 

辛さなしの「0倍」から、標準的な「1倍」、そして激辛の「5倍」「10倍」まで。

唐辛子のマークを並べて、視覚的に辛さのレベルを分かりやすく伝えたのだ。

 

さらに彼らは、ここに一つの「遊び心」を加えた。

 

「10倍以上の辛さを完食した方には、記念にお名前を店内に掲示します」

 

それは単なる食事を、一つの「挑戦チャレンジ」へと変える魔法の仕掛けだった。

 

このシステムは、当時の若者たちの競争心に火をつけた。

 

「俺は20倍いけるぜ」

「じゃあ私は30倍に挑戦するわ」

 

店はいつしか、辛さを競い合うチャレンジャーたちで溢れかえるようになった。

彼らは汗だくになりながら、時には涙を流しながらカレーを口に運ぶ。

そして完食した時の達成感を仲間と共有し、称え合う。

 

そこにあったのは、「痛い」という苦痛ではなく、「乗り越える」という快感だった。

 

この「辛さ倍率」というシステムは、瞬く間に他のエスニック料理店やカレー店にも波及していった。

スープカレーの店では「辛さ100倍」という桁違いの数字がメニューに踊り、激辛ラーメンの店では「地獄の一丁目」といった恐ろしげな名前が付けられた。

 

辛さはもはや、避けるべきものではなく、自ら進んで挑むべきエンターテイメントとなったのだ。

 

そしてこの現象に目を付けたのが、マスメディアだった。

 

テレビ局のプロデューサーたちは、タレントが激辛料理に悶絶する姿が視聴率を取れることに気づき始めた。

雑誌の編集者たちは、「激辛」という文字が表紙にあるだけで部数が伸びることを知った。

 

こうして、小さな路地裏の店から始まったささやかな工夫が、日本中を巻き込む巨大な渦の震源地となっていった。

最後までお読みいただき、ありがとうございます!

 

ちなみに、辛さを選べるシステムはインドカレー店「ボルツ」が1970年代に始めたのが元祖だと言われています。それが80年代のエスニックブームと融合して爆発的に広まったのです。

 

さて、メディアの注目を集め始めた激辛料理。

その熱狂はついに社会現象となり、ある一語を流行語大賞へと押し上げます。

 

次回、「『激辛』という言葉の誕生」。

ブームがピークを迎えます。

 

よろしければ、応援の評価をお願いいたします!

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もし、この物語の「もっと深い話」に興味が湧いたら、ぜひnoteに遊びに来てください。IT、音楽、漫画、アニメ…全シリーズの創作秘話や、開発中の歴史散策アプリの話などを綴っています。


▼作者「かつを」の創作の舞台裏

https://note.com/katsuo_story

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