「サーティワン」が日本にアイスクリーム文化を根付かせた日 第5話:季節を彩る、魔法
作者のかつをです。
第十八章の第5話をお届けします。
モノを売るのではなく、「コト」を売る。
今回は、サーティワンが日本の季節やイベントと巧みに結びつくことで、いかにして特別な「体験」を提供するブランドへと成長していったのかを描きました。
※この物語は史実を基にしたフィクションです。登場する人物、団体、事件などの描写は、物語を構成するための創作であり、事実と異なる場合があります。
テイストスプーン革命によって確かなファンを掴んだサーティワン。
彼らの次なる一手は、アメリカのマニュアルをただなぞるだけではない、日本独自のマーケティング戦略だった。
彼らが目を付けたのは、日本の豊かな「四季」とそれに伴う「イベント」だった。
クリスマス。
日本ではまだ「クリスマスケーキ」を家族で食べるという習慣が、定着し始めたばかりだった。
「ならば、アイスクリームのクリスマスケーキを我々が作ればいい」
彼らは様々なフレーバーを組み合わせて、見た目も華やかなアイスクリームケーキを開発した。
それは子供たちが歓声を上げる夢のようなデザートだった。
「クリスマスには、サーティワンのアイスクリームケーキ」。
その新しい文化は瞬く間に日本の家庭に浸透していった。
ハロウィン。
日本ではまだほとんど馴染みのなかったこのお祭り。
サーティワンは、いち早くこれに目を付けた。
カボチャを使った限定フレーバー「パンプキンプリン」。
オバケや魔女をモチーフにした可愛らしいサンデー。
彼らは単に商品を売るだけでなく、ハロウィンというイベントそのものの「楽しさ」を日本に紹介する伝道師の役割をも果たしたのだ。
ひな祭り、子供の日、そして夏休み。
季節が巡るたびにショーケースには新しい限定フレーバーが登場し、人々を飽きさせることがなかった。
「Flavor of the Month(今月のおすすめフレーバー)」という、アメリカ本社が始めた巧みな戦略。
それが日本の豊かな四季と見事に融合した瞬間だった。
さらに、彼らは日本の子供たちの心を鷲掴みにする最強の武器を手に入れる。
「キャラクター」とのコラボレーションである。
スヌーピー、ミッキーマウス。
子供たちが大好きなキャラクターの形をしたアイスクリームケーキ。
それは誕生日という一年で最も特別な日を彩る、最高のプレゼントとなった。
「今年の誕生日のケーキは、サーティワンのアイスケーキがいい!」
子供たちからのその熱烈なリクエストに、親たちは抗うことができなかった。
サーティワンは、もはや単なるアイスクリーム店ではなかった。
それは人々の大切な「記念日」や「思い出」のワンシーンに深く寄り添う、かけがえのない存在へと進化していたのだ。
彼らが売っていたのは、冷たいアイスクリームではなかった。
彼らが売っていたのは、家族の温かい思い出そのものだったのかもしれない。
最後までお読みいただき、ありがとうございます!
この季節ごとのイベント戦略は日本法人が独自に発展させたものであり、その成功は後にアメリカの本社にも逆輸入されることになります。まさに、ローカライズの大成功例ですね。
さて、ついに日本の文化に深く根付いたサーティワン。
その31番目の魔法は、現代の私たちに何をもたらしたのでしょうか。
次回、「ショーケースの中の、幸福論(終)」。
第十八章、感動の最終話です。
物語は佳境です。ぜひ最後までお付き合いください。
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