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食文化創世記~味の開拓者たち~  作者: かつを
第2部:外食文化の設計者編 ~レストランの「仕組み」を創った人々~
109/150

「サーティワン」が日本にアイスクリーム文化を根付かせた日 第1話:まだ、特別なデザートだった頃

作者のかつをです。

 

本日より、第十八章「31番目の魔法」の連載を開始します。

今回の主役は、カラフルなショーケースでおなじみの「サーティワンアイスクリーム」。

単なる味だけでなく「選ぶ楽しさ」という新しい文化を、日本にいかにして根付かせたのか、そのマーケティングの物語です。

 

※この物語は史実を基にしたフィクションです。登場する人物、団体、事件などの描写は、物語を構成するための創作であり、事実と異なる場合があります。

2025年、東京・郊外のショッピングモール。

 

ガラス張りのショーケースの前で、一人の少女が目をキラキラと輝かせている。

色とりどりの宝石のようなアイスクリームが、幾重にも山のように盛られている。

チョコレート、ストロベリー、抹茶、そして見たこともない青や紫の不思議な色のアイス。

 

「どれにしようかな……」

 

その迷う時間こそが、最高の幸福。

私たちはその光景を当たり前のものとして享受している。

アイスクリームが「選ぶ」楽しみと共にあることを、疑いもしない。

 

しかし、そのショーケースの中に広がる無限の選択肢という魔法が、かつて一人の男が抱いた「退屈との戦い」から始まったということを知る者は少ない。

 

これは、日本のまだ淡白だったアイスクリームの世界に、「楽しさ」と「色彩」という革命をもたらした開拓者たちの、甘くて冷たい物語である。

 

物語は1970年代初頭の日本に遡る。

 

当時の日本のアイスクリーム市場は、まだ黎明期にあった。

家庭の冷凍庫にはシンプルなバニラやチョコレート味のアイスカップが並ぶ程度。

 

外で食べるアイスクリームは、デパートの最上階にある大食堂の銀色の器に乗って出てくるプリン・ア・ラ・モードの脇役。

あるいは、夏の縁日で食べる氷菓。

 

それはまだ日常のささやかなおやつというよりは、特別な日の少しだけ背伸びした「ごちそう」だった。

味の種類も少なく、人々はそれを「選ぶ」という楽しみさえ知らなかった。

 

そんなまだモノクロームに近かった日本のアイスクリームの世界に、アメリカから一つの黒船がやってくる。

 

その名は、「バスキン・ロビンス」。

日本では「サーティワンアイスクリーム」として知られることになる、巨大なフランチャイズチェーンである。

 

彼らが掲げたコンセプトは、当時の日本の常識を根底から覆すものだった。

 

「31種類。1ヶ月(31日間)、毎日違うフレーバーをお楽しみいただけます」

 

チョコミント、ラムレーズン、ロッキーロード。

聞いたこともない名前のカラフルなアイスクリームがずらりと並ぶ、夢のような空間。

 

それはあまりにも未来的で、あまりにもアメリカ的だった。

 

保守的な日本の市場で、この奇想天外なコンセプトは果たして受け入れられるのだろうか。

 

多くの業界関係者がその挑戦を無謀だと静観していた。

しかし、そのアメリカからやってきた魔法を日本の子供たちの笑顔に繋げたいと固く信じた開拓者たちがいた。

彼らの甘くて冷たい革命への挑戦が、今始まろうとしていた。

最後までお読みいただき、ありがとうございます!

第十八章、第一話いかがでしたでしょうか。

 

今では信じられませんが、当時はまだアイスクリーム専門店という業態そのものが非常に珍しい時代でした。まさに、ゼロからの市場開拓だったのです。

 

さて、この奇想天外なコンセプトはアメリカでどのようにして生まれたのでしょうか。

 

次回、「バスキンと、ロビンスの夢」。

物語の原点である二人の創業者の物語に光を当てます。

 

ブックマークや評価で、新章のスタートを応援していただけると嬉しいです!

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もし、この物語の「もっと深い話」に興味が湧いたら、ぜひnoteに遊びに来てください。IT、音楽、漫画、アニメ…全シリーズの創作秘話や、開発中の歴史散策アプリの話などを綴っています。


▼作者「かつを」の創作の舞台裏

https://note.com/katsuo_story

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