深夜営業を始めた喫茶店の静かなる挑戦 第4話:眠らない街の、誕生
作者のかつをです。
第十六章の第4話をお届けします。
一つの店の挑戦がいかにして街の、そして時代の文化そのものを変えていったのか。
今回は、深夜のファミリーレストランが果たした文化的な役割に光を当ててみました。
※この物語は史実を基にしたフィクションです。登場する人物、団体、事件などの描写は、物語を構成するための創作であり、事実と異なる場合があります。
ロイヤル青山店の静かな、しかし確かな成功。
その噂は、外食産業界を駆け巡った。
「深夜でも、客は呼べる」
その驚くべき事実は、これまで夜の世界とは無縁だった他のファミリーレストランチェーンの常識を覆した。
すかいらーく、デニーズ。
ライバルたちも、こぞって深夜営業そして24時間営業へと舵を切った。
1980年代。
バブル景気の熱狂と共に、日本の都市は「眠らない街」へと変貌を遂げていった。
終電など、もはや存在しないかのように。
人々は夜通し働き、遊び、そして語り明かした。
その時代の巨大なエネルギーの受け皿となったのが、ファミリーレストランだった。
深夜のファミレスは、さながら文化の交差点のようだった。
隣のテーブルでは漫画家が締め切りに追われ、鬼気迫る表情でペンを走らせている。
その向かいの席では大学生たちが哲学的な議論を熱く戦わせている。
窓際の席では若い恋人たちが、始発までの限られた時間を惜しむように寄り添っている。
誰もが、それぞれの物語を抱えていた。
そして、ファミリーレストランはそのすべての物語をただ静かに包み込んだ。
一杯のコーヒー。
温かいスープ。
そして、決して客を追い出すことのない優しい時間。
それは、単なる飲食店ではなかった。
それは都市に生きる人々の孤独と夢、そしてささやかな安らぎを受け止める巨大なインフラとなっていた。
江頭匡一がかつてたった一人で灯した、ささやかな灯台の光。
その光は今や無数の光となり、日本中の夜の闇を煌々と照らし出していた。
彼はレストランを作ったのではない。
彼は日本の都市の、新しい「夜の文化」そのものを創り出したのだ。
最後までお読みいただき、ありがとうございます!
80年代の深夜のファミレスは、多くのクリエイターや起業家の卵たちが集う場所でした。そこから数々の新しい文化が生まれていったのです。まさに、時代のサロンだったのですね。
さて、ついに日本の夜の風景を一変させた深夜営業。
その静かなる挑戦は、現代の私たちに何をもたらしたのでしょうか。
次回、「あなたの街の、止まり木で(終)」。
第十六章、感動の最終話です。
よろしければ、応援の評価をお願いいたします!
ーーーーーーーーーーーーーー
もし、この物語の「もっと深い話」に興味が湧いたら、ぜひnoteに遊びに来てください。IT、音楽、漫画、アニメ…全シリーズの創作秘話や、開発中の歴史散策アプリの話などを綴っています。
▼作者「かつを」の創作の舞台裏
https://note.com/katsuo_story




