眠りし巨影
『あれはグレイタスの群れの長、マーナガルムです。普段は滅多に森の奥から出てこないのに....どうして.....』
そう言っているうちにもモニター越しにでもわかるぐらいに、2号機が猛攻を受けている。
映像も荒くなり、リンクが途切れ始めているのがわかる。
『まずいですね.....2号機は近接格闘型なのでマーナガルムにはとても不利です.....』
ああ、たしかに装備が剣に盾だもんな。
『1号機を呼び戻しましょう。1号機は中距離火力型で、ツインライフルを装備しています。』
そう言って、少女が1号機の3Dホログラムを表示する。
これなら確かにオオカミ相手には有効そうだ。
『ただそれまで2号機が耐えられるかどうか.....』
......正直俺はあまり気持ちが良くなかった。
巨大メカvs怪獣で怪獣側が優勢なのは前世のアニメとか映画でも好きではなかった。
「くそ....なんかできないのか....?」
『私は直接攻撃武装を持っていません.....』
そっか.....
そうして1号機が早く戻ってくるのを祈るだけになった時だった。
ーーーふと、何かに呼ばれた気がした。声は聞こえないが、かすかに、しかし確かに呼ばれたのだ。
呼ばれた方向ー倉庫の奥に目を向け、数歩足を進めた。
『どうかしましたか?』
「いや....この奥になんかいるの?」
なぜ「ある」ではなく「いる」と言ったのは自分では分からない。
『いえ....この第4倉庫はタイタンの予備部品や弾薬などを貯蓄しているだけですが.....』
そうして、倉庫の奥にたどり着いた。
この奥に「いる」ーー
確証はないが、確信した。
そこの壁に手を当ててみる。
とーーー
〈ラジエルの注入を確認ー数値上昇ーー1000ー2000ー3000ーー基準値に到達ーーロック解除〉
機械音が聞こえ、同時に壁が赤く光り、そして消えた。
「わお.....」
『この光は.....ラジエリウムにラジエルを通した時の光ですが......明るすぎます。あなたのラジエル値は一体.....?』
少女の言葉は途中から耳に入らなかった。
目が、いや全身の神経が目の前の「それ」に向けられたからだ。
ラジエリウムの壁の向こうにいたのは、暗闇にその漆黒の装甲を煌めかせ、微かにカメラアイから光を散らしているーータイタンだった。
それだけではない。その形、そして色が、前世の心残りだったブラッドナイトに似ていたのだ。
『これは...タイタン!?第4倉庫の奥にタイタンが配備されているなんて私の施設データにありません....』
つまりこいつは博士の秘密の何かってわけか。
俺が「それ」に近づくと、「それ」は答えるようにコックピットハッチを開けた。
「乗れ」ってか?
.....それはこっちのお願いだっつーの!
俺は嬉々として、コックピットへ向かうデッキを小走りで駆けた。