侵入者
小屋を出たあと、少女に続いて格納庫の方へと走る。
『こちらです。機庫の一番奥に避難用シェルターがあります。』
走りながら、目には見えないが木々の向こうで戦闘音が聞こえる。
くそ......めちゃくちゃ見に行きたい....!!
けどさすがにまずは自分の安全を確保しないとだな
格納庫群前に来たとき、タイタンが中から出てきた。
『2号機は私たちの護衛及び施設防衛を』
そう少女が指示を出し、2号機が前に立って進み始める。
「おわぁ.....」
俺、メカに守られながら走ってるよぉ...!!
緊急事態じゃなかったら狂喜乱舞していたところだ。
『あそこです。』
少女が指し示す方、格納庫群の終わりの所に丸いドームのような建物が見えた。
戦闘音からはだいぶ離れたし、もう大丈夫だろう。
「よし、ラストスパートだ!」
そう思ってもう一度足に力を込めた瞬間だった。
バキバキバキバキ!!
グルァァアアッッ!!!
真横、格納庫群とは反対側の林の木々が吹っ飛び、轟音と共に黒い塊が突っ込んできた。
「え?」
脳裏に、前世のトラックがフラッシュバックした。
ガキーーンッ!!
グルァアッ!?
一瞬固まった俺の目の前に振り下ろされたのは、大きな金属の塊ーーー否、剣であった。その剣の持ち主、2号機の、装甲の隙間から見える光が青から赤に変わっていた。
『立ってください!早くこちらへ!!』
「あ....あぁ...」
そう言われて、少女に続いてタイタンの後ろに回る。
『まさか、もう施設内に侵入してただなんて.....』
「あれが......機獣なのか.....?」
剣で10mほど吹き飛ばされたのにも関わらず、黒い塊ーーもとい機獣はもう起き上がっており、タイタンと睨み合っている。
『あれはファングウルフの改造種、グレイダスです。
機獣は元の野生動物より強靭な肉体を持っていますが、グレイダスは元々強力な牙にラジエリウムを取り込んでより鋭利になっています。』
よく見てみると、確かに体の表面に所々金属のようなものが露出しているのがわかる。
『さらにグレイダスの厄介なところは......』
言い終わる前に、先ほど倒れた林からもう2匹グレイダスが出てきた。
『.......彼らは群れで行動するんです。』
「やべぇじゃん。」
『ひとまず2号機に任せて、私たちはあそこに逃げ込みましょう!』
そうして俺たちはすぐ横にあった、格納庫群の最後の1つに走り込んだ。
『ーーー第4機庫シャッター降下ーーロックーー完了ーーー』
格納庫の入り口が閉まる。
「ふぅ.....ひとまずは安心かな。あのオオカミ3匹ぐらいならタイタンは大丈夫だろう?」
『はい。王国ではタイタン一機に対しグレイダス2体が標準とされていますが、ここの自立タイタンなら3体も余裕でしょう。』
「ん?自立って?中に人は乗ってないの?」
『王国に普及している普通のタイタンはパイロットが搭乗して操作しますが、ここの3機は博士が開発した、パイロット不要の自立タイタンで、私の指示で動きます。強さは王国直属のエリート部隊の一般隊員ぐらいでしょうか。』
「へぇ、すごいな。」
王国軍とかもいるんだ......まだまだこの世界は知らないことが多そうだ。
「ねぇ、そろそろ倒したんじゃない?」
『そうですね.....2号機のシステムにリンクして確認してみます。
システムリンク構築開始ーー対象:2号機ーー
.......!?2号機の損傷が激しい....!なにが....』
「えぇ!?」
『ーーー2号機のカメラアイと接続ーー映像を映し出します』
少女が手からモニターを出し、そこに映像が映る。
そこに映っているものを見て、2人は同時に息を呑んだ。
『そんな.....なぜランクAがここに!?』
モニターに映っていたのはーーー
グレイダスの大きさの2倍ほどの、頭が2つある巨大オオカミだった。