第二隊長
コンコン
「入ってよろしい」
ノックされたドアに向かって、ロドリクは返事をした。
「失礼します。ランス隊のメンバーをお連れしました」
召集を頼んだ教員が顔を覗かせ、その後ろにはランスの面々が見える。
「うむ、ご苦労。下がって良いぞ」
教員を下がらせ、ドアの前で躊躇っている子供達にロドリクは笑顔で声をかけた。
「そんなところで立っていてもしょうがないだろう、中に入りなさい」
「あ、では失礼します」
少し緊張した顔のユウジを先頭に部屋に入ってくる。興味深そうに部屋の内装を見るアリス。キリッとした顔のドレイク。静かに入ってくるリネット。周りをキョロキョロしているテオと、一人だけ楽しそうなセリア。
「さて、よく集まってくれた。集めた理由は、まぁまずは顔合わせといったところだ」
ランス隊を応接用のソファに座らせ、自分はその前の学園長椅子に座ってロドリクが話し始めた。
「知っての通り、本学園では30年ぶりのランス隊の設置となった。各員の現時点での能力を認め、さらなる成長のために下した結論だ」
ランス隊の表情が引き締まる。
「皆には各々の実力向上はもちろん、他の生徒の模範となるような行動、活躍を期待している」
「は!」
「うむ、いい返事だ」
満足そうな顔でメンバーを見渡してから、ロドリクはセリアに視線を移した。
「そして私の娘、セリアもしっかり監視してやってほしい」
「監視って何よ、お父様!」
セリアが噛み付くが、他のメンバーは苦笑で頷いている。会ってからまだ半日しか経っていないが既に人となりが伝わっているようだ。
「さて、皆を集めたのにはもう一つの理由がある。こちらの方が主かもしれないが...」
そう言ってロドリクは背後を振り返った。入り口とは別のドアがある。
「セドリック、入ってきていいぞ」
ゆっくりとドアが開き、軍服に身を包んだ男性が入ってきた。
「うずうずして思わず飛び出していくところでしたよ」
年は中年ぐらいだろうか。ロドリクとはまた違ったイケおじだ。この世界は美男美女しかいないのかとユウジは心の中で思った。
セドリックと呼ばれたその男にまず反応したのはセリアだった。
「えっ、レイヴァン第二隊長!?」
腰を浮かせ、驚きの声を上げる。
「そういえば凱旋で見たことがあるぜ!」
ドレイクも驚きの表情。横のリネットも目を丸くしている。
「第二、、隊長?」
「王国には直属の国軍があります。第一大隊から第四大隊までありますが、それの第二大隊の隊長ということでしょう」
聞き慣れない単語に首を傾げるユウジに、横からアリスが補足する。
「え、めっちゃ偉い人じゃん」
「初めまして。セドリック=レイヴァンという者だ」
セドリックがランス隊の前まで来て、胸に手を当てて挨拶をした。そしてチラッとセリアを見て
「今は王国の第二隊長を務めている」
「本物だ....!!」
セリアが興奮した様子で身をよじった。
「ああいや、今日はここには卒業生として来ているんだ」
「卒業生?」
「セドリックは本学園の生徒であった。そして30年前の、当時のランスのメンバーだ」
座ったままロドリクが言う。
「そうなんですか!?」
「自分ぶりのランス隊が、しかも6人も入ってきたと聞けば見にきたくもなるものですよ」
「ちなみに二人はなにか繋がりが?」
二人の距離感にただの学園長とその卒業生以上の何かを感じたユウジは、話がひと段落したところで尋ねた。
「私がちょうど学園長になった年にセドリックがヴァンガードに入ったんだ。ランスともなれば実力は相応のものだが、とにかくやることなすことが奇想天外でな。着任早々に散々振り回されたものだ」
「その節はお世話になりました。でもそのおかげで王国とパイプができたのですから、よしとしましょうよ」
「はは、それはそうだな」
「振り回されるお父様って...全然想像できない」
セリアが頭の中で想像しようとするが、無理だったらしい。
「さて、そろそろいい時間だろう。せっかくのヴァンガードの初日の午後を潰してしまっては申し訳ない」
しばらくの会話の後、ロドリクが言った。
「あ、ほんとだ。結構話しちゃったね」
セリアが言い、メンバーも頷く。
「じゃあ僕たちは戻りますね」
「では、失礼します」
「うむ」
「また会おう」
ランス隊が学園長室から退出していった。
窓からランス隊を見送りながら、ロドリクは背後のセドリックに言った。
「今回のランスを第二隊長はどう見る?」
「やめてください、貴方に隊長呼ばわりされると痒くて仕方がない」
そして少し考えてからセドリックが言った。
「... 初めは衝突することもあるでしょうが、それを乗り越えれば化けると思いますよ」
「ふむ...」
「特にあのユウジという少年...言葉にはできませんが、特別な『なにか』を感じました」
「...お前でもそうか」
個人個人が類い稀なる才能を持った少年少女たちだ。彼らが集まり、これからこの学園で高めあうことを考えると、ロドリクは自分が年甲斐もなく心が昂るのを感じた。
「これからが楽しみですね」
「あぁ」




