狩人の心得
ドォゥンッッ
収束した赤が放たれるのと同時に、アーサーも丘上に向かって突撃した。赤と黒が重なった瞬間、あまりの眩しさにテオは思わず目を瞑った。
再び目を開けると、光が重なった場所で赤が散っていた。
「アーサーは!?まさか...」
モニターに向かって叫ぶセリアに、テオも表情を固くする。
「いえ...アーサーは無事です」
アリスが言う。その声はどこか熱っぽかったのは気のせいだろうか。
「...センチネルの後ろだ」
ドレイクに言われテオとセリアがその方を見る。
「えっ...」
「なっ...」
まだ銃口から赤い稲妻を散らせている狩人の首元に、背後から大剣があてがわれていた。その刀身も赤みを帯びている。
「チェックメイト....ってあぁ、俺は辿り着くだけで良かったんだっけ?」
「っ...!」
剣の持ち手をたどるとカメラアイを青白く光らせているアーサーがいた。
「...ルール上はまだ勝敗はついていません。本人同士の意向が一致しているのなら、それを示してください」
アリスの静かな声を聞いて、リネットは息を吐くように言った。
「...私の負け、よ」
「それでは模擬戦の結果、ユウジがランスのリーダーになるということで異論はありませんか?」
ユウジとリネットが合流し、タイタンを機庫に戻した。機庫から全員が出てきたところでアリスが改めて確認をする。
「おう!」
「...」
元気よく返したドレイクに対しリネットは軽く頷いただけだった。模擬戦が終わってから今まで、リネットは一言も話していない。他のメンバーは落ち込んでいるのだろうとそっとしているが、横に立つドレイクはどこか気がかりだった。
「それにしても2人ともすごかったね!」
セリアが笑顔でユウジに言う。
「最後のリネットのあれ、何が起こったの?」
「あぁあれね...」
ユウジが答える。
「アーサーの剣はラジエルを通すとラジエリウムが切れるようになるんだ。それで見る限りあの攻撃は純粋なラジエルのエネルギー弾だったから、同じように『切れる』んじゃないかって思って。一か八かだったけどね」
「ラジエルを『切る』だって!?そんなことが...」
横で聞いていたテオが食いついた。
「フレイムコングの熱変換システムも確認したいし、センチネルのオービターも...あぁ、我慢できない!解析してくる!」
そう言って機庫に戻ろうとするテオにセリアが声をかける。
「え、これからみんなでご飯食べに行こうと思ったのに」
時間は昼を少し過ぎたところだ。しかしご飯とタイタンはテオの天秤にかけるまでもなかった。
「ごめん、また次ね!」
「私も手伝います。皆さんはごゆっくり」
するりとアリスもテオに続いて機庫の中へと消えていった。
「あぁ、アリスちゃんも!」
「まぁしょうがないよ、4人だけでも行こう」
「...そうだね」
少し落ち込んで、セリアがユウジと食堂へ歩き出す。ついていこうと足を踏み出すが、横のリネットはその場を動こうとしない。ドレイクは小さく息をついて振り返り、俯く顔に声をかけた。
「おーい、昼飯食いに行くってさ。行こうぜ」
反応はない。ドレイクは困った。そもそも人を慰めるのはドレイクの得手ではないし、それが女性と来れば尚更だ。
「...まぁなんだ、俺も負けたわけだし、お前の動きも悪くなかったぜ。そもそもユウジがおかしいだけで、俺たちはここから強くなればいいだろ」
歯切れ悪くドレイクが言葉を選んでいると、リネットの小さく笑う声がした。
「...あなた、見た目の割には世話好きなのね」
「そういうわけじゃ...」
リネットが顔を上げ、今度はドレイクが顔を逸らした。
「でもたしかに言う通りね。そのためにここに来たんだから」
上げた顔に陰りはなかった。
「...そうだな」
「行きましょ」
先を行く2人の後を追って、ドレイクとリネットは並んで歩き出した。




