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静寂の群眼

「さて、と。どうするかな」

 ユウジはアリスの開始の合図があってからも動かず、コックピット内で唸っていた。

 さっき好き勝手に飛び回ったおかげで燃料の残量が心許ない。同じことをやるにしてもスナイパーの弾速はガトリングのそれとは桁違いだろう。

「スナイパーなら高台を陣取るのが鉄則だよな」

 フィールド図で見当をつける。ちょうど全体を見渡せそうな丘があった。

「ここにバレずに行くためには...」

 そう、隠密作戦である。見たところセンチネルにはブースターが2基しかなく、一度懐に入ればこちらのものだろう。

 当たりをつけた丘へのルートを割り出し、ユウジが移動を開始する。遮蔽沿いを縫うように進んでいく。


 間もなく、丘付近に来た。ここから身を出せば直接丘上を見ることができる。

 しかしすぐに体を晒すのは悪手だとユウジは思った。既にセンチネルが陣取っていた場合、身を出した瞬間撃たれる可能性がある。

 ユウジはアーサーの索敵センサーの感度を上げた。これで引っ掛かればいいが...

パシュンッ

ドゴォォオン!!

「おわっ!?」

 突然、アーサーの首がグンと捻られた─と、隠れていた岩の上部が爆ぜた。ちょうどアーサーの頭部の高さである。急いで後ろを振り返ると...

「なにっ..」

 当たりをつけていた丘には、機体の高さほどの長さのスナイパーライフルを構え、モノアイを妖しい赤で光らせている狩人─センチネルがいた。

「やはりいたか!でもどうやってこちらの位置を...」

 そうしているうちにも追撃が来る。急いで距離を取り、先ほどよりも大きな岩山の後ろに隠れる。アーサーが反応してくれていなかったら見事なヘッドショットを喰らっていただろう。

「っていうか模擬戦弾で岩が砕けるってどういうことだ!?ちゃんと弾変えたんだよな!?」

「もちろん、今朝この目で確認したよ」

 独り言のつもりで吐き捨てた言葉に思いがけずテオが答えた。

「それでもあの破壊力。さすが【静寂(クワイエット)()群眼(パノプティック)】だね」

「...あんたたち、戦闘中に外野と会話しないでくれる?あとその呼び方もやめて」

「あぁごめん。公平じゃなかったね」

 リネットの険のある声に、テオが素直に謝る。

「じゃあリネットにも一つ教えよう。さっき空を飛び回ったおかげでアーサーの燃料は少ないはずだよ」

「なっ!テオっ...!」

 なんてことを...まぁ確かにこれで公平、なのか?

「...いいから早く黙って」

「はいはーい」

 飄々とした声を最後にテオがミュートになる。


「さて、どう見ても不利になったわけだけど」

 ユウジはテオの言葉に引っかかりを感じていた。フィールドは岩山だ。ほとんどの場所は観戦で見えないはずなのに、なぜテオは「あの破壊力」と言ったんだ?

「神じゃないんだから、上から見るとかありえないし...」

 そこまで考えてはっと気づいた。タイタンがいるんだ、空を飛べるドローンのようなものがあってもおかしくない。

 ユウジはアーサーの索敵センサーを上空に向けた。

「ビンゴ」

 はるか上空に飛んでいる小型物体の反応がある。画像を拡大してみると、プロペラの代わりにブースターがついたドローンが映る。テオはこれを飛ばして戦況を見ていたのだろう。

「ん?あと2つ反応がある...」

 索敵センサーにはほぼ静止しているカメラドローンの他に、忙しなく動き回っている赤い点が2つ表示されていた。

「なるほどね」

 画像を見たユウジはニヤリとした。映っていたのは、カメラドローンよりも小型のドローン2機だ。そしてそのデザインとカラーリングがセンチネルと酷似している。おそらく両肩のボックスの中身だろう

「リネットはこれを飛ばして上空から俺を見ていたってことか。どうりで隠れていても俺の位置がわかったわけだ」

 タネは分かったが、ドローンを壊すわけにもいかない。あの狙撃力も落ちたわけじゃない。それでもユウジの口元の笑みは消えなかった。

「ひとつその【群眼】とやらを利用させてもらうぜ」

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