熱鋼
多目的施設を出た俺たちはテオに連れられて、自分たちのタイタンがある場所まで来た。整備センターの訓練場と接しているところにセルごとに機庫がある。
ランスの機庫は一番端にあった。タイタンはキャリオスですでに搬入してくれたらしく、機庫に入ると4機のタイタンが鎮座している。
「うわぁ....」
小屋での機庫よりも設備が充実している。タイタンごとにそれぞれドッキングアームで固定されている。機庫内の真ん中あたりぐらいの高さに通路があり、そこからコックピットに移るのだろう。
そばの階段で通路へと登る。その途中で、前を行くテオの体が細かく震え出した。
「素晴らしい...全て既存の体系にとらわれない斬新なモデルに固有ギミック....これだよこれ!タイタンはこうでなくっちゃ!ああ、早速全部解析したい...」
あのーテオさん?顔がにやけていますよ?
「おっと!オホン、失礼。まずは模擬戦だったね」
セリアが後ろでクスクス笑っている。
「あはは、テオって普段は大人しいのにタイタンにだけは熱すごいんだから」
なるほど、、、なかなか好感が持てそうだ。
「明日からの訓練のために、弾薬は全て模擬戦用のに代わっている。あとは模擬戦用の架空損傷プログラムを組み込めば模擬戦に移れるけど...」
そう言いながらテオはタイタンに繋がっている端末を高速で操作し出した。
「よし、できたよ」
「え!?10秒ぐらいしか経ってないよ!?」
「基本は昨日の夜に作ってあって、タイタンごとに合うよう調整するだけだったからね」
それにしても、だ。さすが整備課主席、恐るべし。見ると、横のアリスもテオをじっと見ていた。
「さて、それじゃあ誰からやる?」
「俺だ!ユウジ、やろうぜ!」
ドレイクが身を乗り出した。
「いいけど、リネットは?」
「構わないわ」
「わかった、じゃあそうしよう」
「誰からにするとしても、一旦全機外に出す必要があるね。発進シークエンスの指示は司令官の領分だけど、、、」
テオがアリスの方を見る。
「やりましょう」
「そう来なくっちゃ」
そして手元の端末のうち一つをアリスに渡す。
「この機庫のシステム端末だ。使い方は...」
「なんとなく分かります」
「さすがだね」
アリスが端末を手に取る。一拍の後、
「これよりランス隊のリーダーにユウジが相応しいか見定めるための模擬戦を行います。総員自機に乗り込んでください」
テキパキとした指示に自然に体が動き、ユウジはアーサーのコックピットに乗り込んだ。
「タイタンのシステム起動後、コックピットを閉めてください。出口に近いユウジからリネット、セリア姉様、ドレイクの順で誘導します」
「姉様!?」
入れた通信越しにドレイクとリネットの疑念の声が聞こえた気がするが気にしない。
「全機ドッキングアーム解除─機庫シャッター開放」
小さな揺れとともにアームが外される。アーサーを旋回させ、開かれたシャッターから外に出た。続いて残りの3機も出てくる。
「フィールド位置を共有します─そこまで移動して、待機していてください」
横のモニターに地図が映し出され、指示通りそこに向かう。他の3機も後に続いてくる。
機庫内ではわからなかったが、外で見てみると機体の見た目がかなり違う。まずドレイクの機体がゴツい。高さはアーサーより少し高い程度だが横幅が倍ほどある。そして片手に下げているガトリングらしき武器。パイロットの性格をそのままタイタンに写したような機体だ。
他の2機はそれほどアーサーと大きさは変わらない。ヒバリスはフォルムもアーサーに似た流線型だが、リネットの機体はミリタリー感がすごい。細身のフレームにモノアイ。背中には2つ折りのスナイパーライフルを背負っている。カラーリングも相まって、歴戦の狩人の雰囲気が漂う。
指定された場所に着いた。地面に線で印がついている。
「少々そこで待っていてください─」
その通信から程なくして、2つの物体が機庫方向からやってきた。
「あれは....小型タイタン?」
やってきたのは普通のタイタンの半分ほどの大きさの機体だった。特に装備はなく、下半身が車輪式になっている。
「整備課が使う小型タイタン【ヘカトン】だよ。模擬戦の審判とかにも使う。生身でタイタンの戦闘の側には居れないからね」
通信からテオの声が聞こえる。ということはアリスとテオが片方ずつ乗っているのか。
ヘカトンが合流して、いよいよ模擬戦を始める。
「フィールドは草原で遮蔽物が何もないから射撃有利になる。大丈夫?ユウジ」
「うん、いいよ」
「分かった。それじゃあセリアとリネットはそこで見ててね。ユウジとドレイクはフィールドの中央へ。開始と判定はアリスにやってもらおうかな」
「了解です」
アリスが指示を代わる。
「両名開始位置まで移動後、戦闘準備をしてください。判定はシステムかどちらかの降参とします」
ユウジとドレイクがフィールドの中央へと向かう。
「残りのメンバーは今の場所で観戦してください」
指定位置でとまり、ドレイクと対面する。正面から見ると改めてデカさがわかる。
「よっしゃあやろうぜユウジ!」
ドレイクがガトリングを両手で構える。両肩からも1門ずつキャノンらしき砲塔が現れる。やはり火力タイプだ。
「うん、よろしく」
こちらも背中の大剣を構える。
〈メインシステム 戦闘モード 起動〉
アーサーの装甲がスライドし、モニターが戦闘特化の表示になる。
「それでは──【アーサー】対【フレイムコング】、はじめ!!」
「よし来たぁぁああ!!」
開始の合図と共にフレイムコングがガトリングをぶっ放す。だがアーサーもそれを読んでいたのか、横に回避する。弾丸の雨がその後をついていく。
「凄まじいね...」
それなりに離れているセリアの位置からでも振動が伝わってくる。一見乱射しているように見えるが、弾痕を見る限りかなり一点に収束している。模擬戦弾ならともかく実弾ならば破壊力はランクA機獣のそれに匹敵するだろう。
しかしアーサーの回避にも目を見張るものがある。直線的な加速と急転換を織り交ぜることで緩急をつけ、狙いを定めづらくしている。
「よく動くわね...」
リネットも真剣な声で呟く。
「あの数のブースターをあそこまで駆使できるなんて...」
「でしょ?ユウジはすごいんだって!」
「でも...避けてばかりでは勝てないわ」
「うぐっ...それはそうだね」
突如、砲声が止まった。アーサーも動きを止めてフレイムコングを向く。
「さすがだな。これほど完全に俺の弾を避けれるのは、王国の傭兵の中にもそれといねぇ」
どこか嬉しそうなドレイクの声が通信から聞こえてくる。
「なかなかいい回避の練習になったよ。だいぶ温まってきた」
と、これはユウジだ。
「くく、言うな。だがあったまったのはそっちだけじゃあねぇぜ?」
ドレイクがいい終わるのを待たずに、フレイムコングの全身の装甲の隙間から赤い炎が立ち上った。
「なに!?あれ...」
セリアが驚いて言う。
「フレイムコングのガトリング─【インフェルノ】は銃身の回転エネルギーを機体内部に転送する機能があるの。それを熱に変換し、機体中に漲らせてさらに火力を上げる─それが【炎の大猿】」
見るとすでに炎は全身に広がっており、遠目からだと小さな太陽かと思うほどになっている。
「これがドレイクの本気ってわけか」
これまた嬉しそうな声でユウジが言った。
「それじゃあ2ラウンド目だ!いくぜぇぇええ!!」
フレイムコングが再びインフェルノを構えた。




