ランス、集結
「では、セルの発表に移ります」
緊張から期待、高揚へとホール内の空気が変わった。
「発表に前に少しばかり説明を。ご存知の方も多いと思いますが、ヴァンガードクラスでは小隊制を用いています。4〜6人単位の行動班に司令官と整備士が一人ずつ加わったチームを定め、以後その小隊─通称【セル】で活動していくことになります。セルのメンバーは試験でのパフォーマンスを鑑みて、こちらが厳正に定めております」
うんうん、アリスも同じことを言っていたな。
「また、実戦・戦略共に優秀なため教員による指導よりも早速実地訓練を行った方が良いと判断される生徒による小隊、【ランス】という制度があります。これは毎年の入学者の実力を鑑みて、設置するか否かを決めています」
なんだそのかっこいいのは!そんなのはセリアからも聞いてなかったぞ。
「ここ十数年はランスの設置はありませんでしたが....」
が?
「...今回の試験で、実力が突出して秀でている生徒が複数いました。学園でも慎重に協議をした結果、今年は【ランス】を設置することに決定いたしました」
一瞬の沈黙。そして──
「うおぉぉ!すげぇ!あのランスだろ!?」
「俺かな!?」
「おまえはねぇだろ!」
「でも同期にランスがいるってだけで自慢話になるぞ!」
歓声が弾けた。少し驚いたが、それだけすごいことなんだろう。
「コホン、静粛に。では改めまして、セルのメンバーの発表を行います。なお、在学中はセルごとに多目的部屋が一つ割り当てられます。名前を呼ばれた生徒から、このホールを出て右手の建物に移動してください。そして自分のセルの部屋に行き、顔合わせを行なってください。
全てのセルを読み上げると時間がかかってしまうので、ここで発表するのはランスのみとします。他の生徒は前方スクリーンに映し出される名簿を見てください。ホールの出口にも同じ名簿が掲載されています。
では。【ランス】メンバー、ユウジ=アークライト、セリア=ヴァルディア、ドレイク=アイゼン、リネット=フェイン。司令官はアリス=ノスクレイ、整備士はテオ=ランドール」
再び、大きな歓声。ユウジは思わずアリスの顔を見た。
「なんかすごいことになったね...?」
「まぁ...ランスの存在は知りませんでしたが、妥当な采配だと思います」
全くアリスは、、、
「以上が今年のランスメンバーとなります。ではみなさん、移動を開始してください」
人々の波が動き出す。
「メンバーは6人とも各部門のトップですね」
その波に乗りながらアリスが言った。
「たしかに。全員成績発表の掲示に一位として名前が載っていた人だ」
ホールを出て隣の建物にに向かう。
「あっここセリアと前見たな」
たしか、、、多目的会議施設、だったかな?入り口でランスの部屋を確認し、その部屋に向かう。
ドアを開けると、まだ誰もいなかった。どうやら一番乗りのようだ。部屋の内装は至ってシンプルで、中央に円机と椅子があり、壁にはスクリーンがついている。ソファなども置いてあることから、会議だけでなく休憩場所にも使えってことだろう。
とりあえず椅子に座ると、閉めたドアから大柄の男が入ってきた──と思ったらいきなり目の前にすっ飛んできた。
「おわぁ!?」
「やっぱりユウジってお前だったんだな!そうかもしれねぇって思ったけどよ!」
なぜか興奮気味に捲し立てられる。あれ、この顔どこかで...
「ユウジ、知り合いですか?」
隣に座っているアリスが尋ねる。
「えっと顔は見覚えがあるんだけど、、、確か、、、」
あとこの話し方は、、、あっ!
「あの時一緒にセリアの試験を見てた人か!名前は、、、」
なんかすっごい聞いたことある気がするんだけど思い出せない。
「おいおいユウジ忘れちまったのか?ドレイクだよ、ドレイク」
意外そうな顔でこちらを見る。
「そうだドレイクだ!えってことは射撃部門一位のドレイクって、、?」
「それが俺だ」
うわぁ、、、やっと繋がった。てかこいつがセリアに勝ったのか。
「では認識のすり合わせができたと言うことで、初めましてドレイク=アイゼンさん。司令官のアリス=ノスクレイです」
ひと段落したところでアリスがドレイクに自己紹介する。
「あぁすまねぇ、まさかこのちっこいのが【黒騎士】だって驚いちまった。ドレイクだ。さんはいらねぇ。よろしく頼むぜ、アリス」
そこまで言ってからドレイクがハッと何かに気づく。
「司令官ってことは、、あんたが統制部門の新記録を出したってことか!?」
「はい」
「マジかよ!それでその人と黒騎士は連れっていう話だが、、、」
こちらをまんまるの目で見る。
「まぁ、、連れだね」
「なんてこった、、、」
「俺もまさかあの時のが、って感じだよ」
「ランスの部屋ってここ〜?ってもういるじゃん!」
ユウジとドレイクの記憶の整理が終わった頃、元気な声が部屋に入ってきた。
「セリア!挨拶良かったよ!俺のことを言い出した時はびっくりしたけど」
「ユウジ!でも名前まで出してないだけいいでしょ」
「、、、なんで学園長娘とそんなに仲がいいんだ...?」
横のドレイクが口をぽかんと開けている。
「ま、まぁ色々あってね、、、」
その時セリアの後ろにもう一人立っていることに気づいた。セリアの後に続いて部屋の中に入ってくる。スラリとした体型に凛とした顔立ちで、セリアとは違う大人の女性味を感じさせる。歩き方もどこか上品だ。
「リネット=フェインよ。専務は狙撃。よろしく」
声も話し方もクールだ。この人がスナイパーってのもなんか納得してしまう。
「あたしたちと同じランスのメンバー、リネットだよ!二つ名は【静寂の群眼】!」
セリアが元気よく横から言う。
「....それ恥ずかしいからあまり言わないでと言ったはずです、セリア様」
「あー!また様呼びしてる!セリアでいいって言ったでしょ、あと敬語もいらない!」
「ですが....」
「あーもうめんどくさいな!学園命令、これでいい?」
なんだろう、今まさに権力濫用の現場に遭遇した気がする。
「じゃないとこれからずっと静寂の群眼って呼ぶよ?」
「それはっ...!わかりましっ...わかったわ、セリアさ...セリア」
「うんうん、それでよろしい!」
そしてこちらを向いて、笑顔で言い放つ。
「あなたもね!えーっとドレイク、だったっけ?」
「お、おう」
相変わらずだなぁ、と苦笑した俺の横でドレイクが小さく呟いた。
「【静寂の群眼】だと、こんなお嬢ちゃんが...あとセリア様、あいやセリアがこんな感じだったとは...」
そして魂が抜けたかのように天を仰いだ。
「結局、噂通りのことになったわけだ。だがこれは意外すぎるぜ....」
リネットが他の人の自己紹介を聞き終わった頃、再び部屋のドアが開いた。
「ごめんごめん!整備課の教員にちょっと捕まっちゃってさ」
姿を現したのはテオだった。
「テオ!」
セリアと同時に声を上げ、笑顔でテオを迎えた。
「まさか同じセルに、しかもランスになれるなんてね!」
「僕も驚いたけど、この顔ぶれなら納得だな」
そう言ってテオがドレイクとリネットを見る。
「ドレイク=アイゼンだ。たしかテオ=ランドールだったか、整備の腕はよく聞くぜ」
「あの【熱鋼】に知られてるとはありがたいな。それで横の君が、、?」
「リネット=フェイン。よろしく」
「うん、よろしく」
「さて、これで全員かな?」
セリアが中央に立ち、みんなを見渡す。
「それじゃあ一応リーダーを決めておきたいんだけど....」
まぁ普通に考えてセリアなんじゃないかな?性格的にも立場的にも。
「あたしはユウジにリーダーになって欲しい!」
「は?」
思わず間の抜けた声が出た。
「...私はセリアが妥当だと思うけど。黒騎士などと言われていても、その実力は直接見たわけではないから」
リネットが言う。
「たしかに...俺もまだユウジのタイタンを見たことがないからなぁ...」
ドレイクも添える。
「えぇ〜!ユウジは本当にすごいんだよ!」
セリアが言ってくれるが、リネットとドレイクの言うことも最もだ。
「それならちょうどいい」
みんなが黙ってしまった中でそれを打ち破ったのはテオだった。
「今日の残りの時間は全て自由なんだ。セル内での仲を深める時間ってことなんだろうけど、ちょうど訓練場が全て解放されている。そこでタイタンの性能共有も兼ねて一つ模擬戦をしたらいいんじゃないか?」
「それだ!」
さすがテオだ。見たことがないなら今見れば良い。
「そうと決まれば早速訓練場に行こう」
そうしてみんなで部屋を出て、訓練場へと向かった。




