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夕暮れの寮室

 王立ヴァルディア学園の学生寮。試験日の今日、午後には新入生の受け入れで1階は慌ただしい。テオは忙しく動き回る寮の職員の横を通り、自室─238号室に入った。

「あ〜疲れた〜!」

 荷物を放り出すや否や、ベッドに倒れ込む。午前いっぱい整備センターでたらい回しにされ、さすがの整備課主席でも消耗している。

「ご飯食べないと...でも起き上がれない...」

 テオは昼食を諦め、ひとまず一眠りすることにした。うとうとしていると夢見心地にどこかでセリアの悲鳴が聞こえた気がしたが、考える間も無く眠りについた。


 目が覚めると、もう陽が落ちかかっていた。のそのそと起き上がり、手頃な軽食の袋を開ける。それを食べながら、テオはなんともなしにそばの端末を眺めた。


──────────────────────────────────────────

《ヴァルディア学園 タイタンデータベース》

【アウローラ】

動力部と操縦桿が直接繋がっており、操作も性能も癖のない最も基礎的なタイタン。バランスの取れた構造から中距離戦闘から物資運搬まで幅広い用途がある。実戦ではもう用いられず、学園や訓練兵へ払い下げられている。

〔型式番号〕

 ASA-04/アウローラ

〔全長〕

 11.6m

〔重量〕

 8.5t

〔装甲〕

ラジエリウム複合合金

〔武装〕

 ・スピアヘッド

実弾をラジエルで打ち出す標準ライフル/安定した射速及び精度を誇るが、レートは低め


【ヴァルカン】

操作中枢に専用ギアを施すことで、操縦桿の挙動を増幅させて挙動に反映させることを実現した重量型タイタン。装甲も増やしたため積載量は著しく低下しており、打撃武器の携帯が主流。耐久にも優れるため一般兵や学園に広く使われている。

〔型式番号〕

 APV-06/ヴァルカン

〔全長〕

 13.5m

〔重量〕

 16.0t

〔装甲〕

 ラジエリウム複合合金

〔武装〕

 ・パイルバンカー

2段型近接武器/金属の筒を打ちつけた後、内部の鉄槌を高速で射出、追撃を行う/急所を一気の貫くことも可能だがそれなりの練度が必要

 ・ナックル

打撃力に重きを置いた近接武器

──────────────────────────────────────────


「量産機には量産機の良さがあるけど、、、なんかこう、インパクトがないというか」

 ベッドに寝転がりながらテオが呟く。

「しかも学園に降りてくるのはもう旧世代のばっかりなんだよなぁ。教官たちには新型を保有してる人もいるけどほんの少しだし」

 そう言ってテオは端末をいくらかスワイプした。

「たしか近接部門の試験官が乗ってたのは、、、」


──────────────────────────────────────────

【グラディウス】

動力部及び関節部に追加のインナーフレームを取り入れ、軽さと出力の両方の追求を実現した新世代タイタン。近接型には珍しいスリムなボディには衝突を緩和する流線型のフレームを使用。王国軍に数多く配備されている。

〔型式番号〕

 APG-10/グラディウス

〔全長〕

 12.5m

〔重量〕

 10.8t

〔装甲〕

 ラジエリウム複合合金/適応フレーム

〔武装〕

近接武器全般/搭載量が上昇したため、既存の近接型タイタンよりも重い武装を携帯可能

──────────────────────────────────────────


「いいよなぁ、新型。でもこれももう何年かしたら当たり前になっちゃうんだよな」


 王国のタイタン開発は主に【タイタン技術研究所】が担っている。学園の整備センターとも定期的に報告会をしている、とは聞こえはいいが、技研の体のいい実験場所にされているのが現状だ。昔はそんなこともなかったそうだが、最近の王国と学園の関係は芳しくない。王立とはいえ、建立されてからは独立した機関なのだ。

 そうは言っても血筋は繋がってるんだから、とは思うが、セリアはそのことを逆に負い目に感じている。詳しくは話してくれないが、王国の話題が出るといつも笑顔が陰る。

 「ま、僕が整備センターに入ったから、もうちょっと王国とも繋がれるようになるから」

 誰に言うともなしにテオが天井に向かって呟く。


コンコン


 突然、ドアがノックされた。今は新入生が入ってきている時間のはずだ。整備課関係かなと思ってドアを開けると、現れた顔に驚きよりも嬉しさが勝った。

「ユウジじゃん!ここにいるってことは...」

「うん、合格したよ」

「なんか平然としてるね...余裕って感じ?」

「いやいや、めっちゃ嬉しいよ!」

「あはは、冗談。ところでどういったご用件で?もしかして部屋の場所が分からない?」

「いや、特に用件はないね。アリスがテオの部屋見つけたって言ってたから挨拶に来ただけ」

「アリスってのはその後ろの...?」

 ユウジの後ろには同じくらいの高さに可愛らしい色白の顔があった。

「初めまして。ユウジのサポートをしています、アリス=ノスクレイです。よろしくお願いしますテオさん」

「アリスね、よろしく」

 そこでふと寮への帰り際に横目で見た合格者の張り紙を思い出した。

「あれ?アリス=ノスクレイ....あっもしかして統制部門一位の子!?新記録を出したっていう...」

「そうですね」

これまたユウジみたいにサラリと言う。

「ユウジ、、、君にはこれからたくさんのことを聞かなくてはならないようだ、、、」

 当のユウジは苦笑いでテオの視線を受け流している。

「ユウジ、そろそろ食堂が閉まってしまいます」

「あっもうそんな時間か!」

ユウジが慌てたように言う。

「テオ、俺たち今から夜ご飯食べに行くんだけど一緒に来る?」

「んーん、さっき変な時間に食べちゃったから大丈夫。行ってきなよ」

「わかった!それじゃ」

「うん、また明日」

「失礼します」

 ユウジとアリスがドアから離れ、廊下の奥へと進んでいった。

「なんでもうこんな時間なんだ!?」

「ユウジがずっと寝てたからです。そんなに寝たら夜に寝付けませんよ」

 遠ざかっていく声を聞き、思わずふっと笑いながらテオは自室のドアを閉めた。

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