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走り出す未来

 「うわ〜。すっごい人だね」

 セリアが広場を見渡して言う。その後ろからは這々の体でユウジ、その横にアリスが歩いてくる。

「ちょっセリアっ、、待って、、」

 タイタンではあんな凄まじい動きはできても、パイロット本人は体力がないようだ。そんなところもかわいい、とは心のうちに留めておく。

「ふぅ、、本当だ。いっぱいだね」

 追いついたユウジも広場を見渡す。合格者が書かれた大きな張り紙が数箇所の看板に貼られている。3人は空いてる場所を見つけ、張り紙を見上げた。

「えーっと...あった!あたしの名前!」

「どこだ....?これは番号順になってるのか....お、俺の名前もあった」

「私の名前はユウジの4列右ですね」

 ってことは、、、

「やったね!みんな合格!」

 セリアがハイタッチしてくる。憧れのヴァンガードだ、喜びもひと塩だろう。かくいう俺も下馬評があったとはいえ嬉しいものは嬉しい。

「横に部門別順位も出てますよ」

「え?どこどこ、、、」

 アリスに言われ、横の小さめの張り紙を見る。

「射撃部門...セリア2位じゃん!すごいね」

「ま、まぁこんなもんよ」

 セリアが言うが照れ隠しだろう。顔がにやけている。

「1位はドレイク=アイゼンって人か」

 あのヒバリスの動きを超えるとは、なかなかやり手だな。

「あら、【熱鋼(ホットスチール)】じゃない!この人なら負けてもしょうがないわ」

「どういうこと?」

「王国の有力な傭兵団のメンバーだよ。今年試験を受けるって噂だけど本当だったんだね」

 へぇ、傭兵か。もう実戦を積んでるはずなのに今更学園に入るだなんて変わり種だな。

「あれ?ドレイクってどこかで聞いたような、、」

 思い出せないでいると、横からセリアが小突いてきた。

「ねぇユウジ、アリスちゃん。これ見てみて」

 言われてセリアが指差す方向を見ると


<近接部門一位:ユウジ=アークライト>

<統制部門一位:アリス=ノスクレイ>


「......」

「......」

「飛び入りの2人がどちらも部門一位かっさらってった、と。これは学園史、いえ王国史に残るね」

 まじかぁ。


「狙撃部門はリネット=フェイン、、これは聞いたことないわね」

 そうなんだ。そういえば狙撃にすごい人が出るかもって聞いたけどその人はいないのかな?

 しばらく3人で掲示板を見ていると、周囲がざわつき始めた。

「おいおいあれって【黒騎士】じゃね?」

「その横のは統制部門で新記録出した子だよな」

「セリア様も射撃部門で2位を取られている」

「かわいいがいっぱいだわ!」

 3人は顔を見合わせた。

「セリア、そろそろ....」

「そうね、それじゃあ...」

 まだ呑気に掲示板を眺めているアリスの腕を片方ずつ持って、広場の外へと走り出した。


「合格者はこちらの列にお並びくださーい!寮の手続きをいたしますー!」

 広場の出口でこんなアナウンスが聞こえた。その声の方を見ると、確かに列ができている。だがここで立ち止まるわけにはいかない。後ろから群衆が追ってきているからだ。

「ど、どうする!?」

「あたしは寮は使わないけど2人は必要よね...」

 くっ、捕まる覚悟で一旦並ぶか!?そう思った時に、それまで引きずられるがままにされていたアリスが口を開いた。

「お二人は先に行ってて大丈夫ですよ。ユウジの分も私が手続きやっておきます」

 そうか、アリスならなんとかしてくれそうだ。だがセリアはそうは思わないようだ。

「本当に?アリスちゃん、また前半みたいにならない?」

「大丈夫です。私を信じてください、()()()()()

「はぅっ!?」

 再びつぶらな瞳(セリア視点)で見つめられ、セリアが折れた。

「....わかった。無理はしないでね、撒いたらすぐ戻るから!」

「了解です」

 そうしてアリスを残し、セリアと共に広場外へと駆け出した。


────────

 それから数十分、セリアの後について植え込みや塀の影など、普段から逃げ慣れてるとしか思えない場所を駆使し、なんとか群衆を撒くことに成功した。

「じゃあそろそろ戻ろっか」

「そうだな、アリスも心配だ」

 一応木の影に隠れながら受付の場所まで戻る。そこから受付の出口付近を伺う。

「いないな...」

「いないね...」

 もしかしてまたどこかで質問責めにあってるのでは、とよくない想像が浮かんだ瞬間だった。

「ここにいたんですか。だいぶ待ちましたよ」

 後ろからアリスの声がした。

「うわ!?」「ひゃ!?」

 2人同時に飛び上がる。

「よかったぁ〜!無事だったんだね」

「はい、受付も無事済ませました。もう寮に行けるそうです」

「ナイス」

 そしてセリアが先導し、寮へと向かった。


 セリアが少し先を歩いてる時、小声でアリスに聞いた。

「アリス、列に並んでる最中にバレなかったの?」

「はい、擬似有機外装関連で、顔を変える表面膜を作ってたんです。結局没案でしたが、予備で持っていた一個を先ほど使いました」

 フェイスマスク、ってこと?

「顔を変える、、、?見てみたかったなぁ」

「一個しか持ってきていないのですぐには無理です。それともユウジはこの顔が気に入らないのですか?」

「いやいやそんなことないって!すごく....」

「すごく?」

「すごく.....いいです」

 最後の方は尻すぼみになってしまった。アリスはあの殺人笑顔で笑い、

「ならよかったです」

 そう言って前を行くセリアの方に行ってしまった。

「、、、調子狂うなぁ」

 苦笑しながら小走りで前の2人を追いかけた。


「うわぁ...これが寮?高級ホテルじゃなくて?」

 セリアに案内してもらってきた「寮」はユウジが知るそれではなかった。まず外見からしてデカい。装飾も豪華だし、奥に庭とかも見える。

 中に入るとホテルとしか思えないエントランスホールが出迎える。セリア曰く、1回は受付や風呂、休憩場所などの共有スペースで、2階以上が部屋らしい。部屋は1人部屋から大人数部屋まで幅広く、ヴァンガードのほぼ全員を収容できるそうだ。

 ユウジがその説明に圧倒されている間、アリスが受付で部屋の鍵を持ってきた。

「あれ?アリスちゃん、なんで鍵が一つしかないの?」

 セリアが尋ねる。確かにアリスの手に握られている鍵はひとつだ。

「はい?部屋が一つなんですから鍵も一つでしょう?」

「え?」

 おい待て、なんか嫌な予感がする。

「えっと、アリスちゃんとユウジの2人の部屋があるでしょ?」

「はい、私とユウジ、()()()()()()()()です」

「え?」

「はい?」

「ええええええぇぇぇぇええ!?!?」

 エントランスホールに、セリアの声が響き渡った。

「ふふふふたりでいいいいい一緒の部屋!?アリスちゃんとユウジってやっぱりそういう関係...!?」

「違うって!なんかとんでもない勘違いしてる!あとやっぱりってどういうこと!?」

「そういう関係とは、どういう関係ですか?」

「男女が一つ屋根の下ってことはそういうことでしょ!?」

「私とユウジはずっと同じ屋根の下で過ごしてきましたが?」

「ずっと!?やっぱりそうなんじゃない!」

「だから違うって!アリス喋るとめんどくさくなるから静かにしててぇ!」

 さらによくないことに、何事かと人が集まってきた。

「あっえっとお邪魔しました!?わぁぁぁああ!」

 ついにパニックになったセリアが寮を飛び出し、周りの注意もそちらに向いたので俺はとりあえずアリスを連れて2階へと上がった。

「アリス、普通男女で部屋は分けるんだよ」

「そうなんですか。でも一緒の方が便利じゃないですか」

「そうだけど、、、まぁ俺は大丈夫だけど」

 大丈夫、、、だよな?


「部屋番号が307なので、もう一個上ですね」

 アリスが言い、もう一階上がって、307号室のドアを開ける。

「わお、、、」

 1階の煌びやかなホールの煌びやかさを残しつつ、住処としての温かみを醸し出す木材。広いのに寂しさを感じさせない。まるでずっと住んでいたかのような錯覚をしてしまう。

「日当たりもいいな」

 向かいの大きな窓はちょうど陽の昇る方角であり、朝の目覚めはさぞ気持ちがいいだろうと思わせられる。ただ一つ懸念があるとすれば...

 ユウジは窓のすぐ横のベッドを見た。白いシーツが綺麗に敷かれており、今すぐにでも飛び込みたいが、、、

 枕が二つある。そう、二つあるのだ。つまりダブルベッドだ。ダルカス森林の小屋では、各々別の部屋で夜を過ごしていたため、そもそもアリスが寝る必要があるのかもわからない。ややもすると...

 まぁ今考えても仕方がない。とりあえずひと段落したし、ちょっと一眠りすることにしよう。

「アリス、ちょっと疲れたから休んでるね」

「わかりました。私は少々自分のメンテナンスをしようと思います」

「わかった」

そしてふかふかのベッドに倒れこむ。意外と消耗していたのか、すぐに眠気が来た。アリスの端末を操作する音を聞きながら、ユウジは意識の底へと沈んでいった。

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