完全指揮伝説
「はい、それではユウジ=アークライトさん。実技部門は近接ですね。試験番号はC-621になります。前半は筆記試験、後半に実技試験となります。それでは頑張ってください」
「ありがとうございます」
自分の情報が書かれた紙を受け取り、中へ進む。試験は前後半に分かれており、筆記と試験を入れ替えるシステムらしい。
「あっいたいた!」
ユウジに続いてセリアとアリスも受付を済ませてこちらに来る。
「2人とも前半どっちだった?」
「あたしは先に筆記!」
「私は前半は実技のようです」
おっ てことは。
「俺はまず筆記だから、アリスだけ別になっちゃうな」
「そうですね」
「えぇぇぇ〜〜!」
セリアが悲痛な声を上げる。
「アリスちゃん困ったらすぐ周りの学園の人に聞くのよ。あたしの名前も出しちゃっていいからね。あとあと....」
、、、過保護のお母さん?
「えっと、ここで別れるのかな?」
受付でもらった校内図を見ながら言う。
「そうね。こっちが筆記の会場で、あっちが実技の会場よ。統制部門は他とちょっと違う場所にあるから気をつけてね、アリスちゃん」
「わかりました。2人もご武運を祈ります」
「うん。前後半の入れ替わりの時またここで会おう」
そうしてユウジとセリアはアリスと分かれた。
筆記会場に行く途中、セリアが学園の人らしき人を見つけてきて、借りた教科書を渡してもらった。
筆記会場は大きなホールのような場所で、机がずらりと並んでいる。座席を確認して席に着く。どうやら実技の部門で分けているらしく、セリアとは席は少し離れてしまった。
間も無く試験が始まった。問題量の多さに初めは圧倒されたが、落ち着いて問題文を読み返すとほぼ教科書通りのことを聞かれている。アリス大先生の教え方も良かったのだろう、前世の受験に比べ遥かにスムーズに解答を埋めることができた。
終了の合図が聞こえ、ペンを置く。解答が回収され、実技試験の場所に行くよう指示が出た。
「ユウジ〜どうだった?」
会場から出る時に合流したセリアが聞く。
「まぁそこそこかな?そんなにひどくはないと思う」
そうしてアリスの顔を伺う。
「そっちは....結構いいみたいだね」
「えへへ〜」
そういやこの子結構優秀なんだよな。
分かれた場所まで戻り、アリスがまだ来ていなかったので道の脇で待つ。しかし、前半筆記の人たちがあらかた出払ってもアリスが現れない。
「遅いな...」
「遅いわね...」
「ちょっと見に行ってみるか」
「そうね」
セリアの案内で統制部門の会場へと向かう。そろそろ着くという時に、道の先から人だかりが見えてきた。人の隙間から覗いてみると中心にいたのは──なんとアリスだった。
「えっアリス!?」
「どこどこ!?この中にいるの!?」
人だかりのうちの一人に聞く。
「すいません、何があったんですか?」
「伝説だ!ついさっき伝説が生まれたんだよ!」
「伝説、、、?」
「いや、今年の統制部門で歴代最高成績を出した試験生がいるらしいんだ。なんでも、コンマ1秒のミスすらなしに、理論上最適な戦術指揮をしたらしい」
「ほんっとに意味がわからねぇ!!」
と、横の試験生らしき人が会話に入ってきた。
「俺は今年で3回目の試験なんだがよ、あんなのは見たことねぇぜ!どうやったら4機のタイタンで50体の機獣を損傷0で殲滅できるんだ!?」
、、、だんだんとわかってきたぞ。だがまずはアリスを救出せねば。人混みを掻き分け、アリスの下までたどり着く。アリスは試験官らしき人に詰め寄られていた。
「本当にどうやってあの成績を出したんだ!シミュレーションプログラムを組んだ私ですら損傷率を2%より下げることはできなかったのに!」
「どうやって、と言われましても....」
「頼む!教えてくれ!」
あーあー大の大人が少女に頭を下げてるよ。
「アリス!」
声をかけながらアリスの手を取る。
「あっユウジ!」
パッとアリスがこちらを見る。
「すいません、こいつまだ後半の筆記試験が残っているので!」
そう言ってアリスの腕を引きながら人混みを掻き分けて外に出る。
「入学した後に絶対教えてもらうからなぁ〜!!」
後ろから試験官の声が聞こえるが気にしない。
「ユウジ、今のって内定もらったってことでいいですか?」
「うん、まぁ、、、」
どこまでも能天気だなぁ、、、
「アリスちゃん!」
人混みの外に出るとセリアが待っていた。
「セリア姉様、筆記試験お疲れ様でした」
「アリスちゃんもこの様子だと何かすごいことをしたみたいだね〜。すっごい気になるけどあたしの実技順番早めだからもう行かないと。ユウジ、アリスちゃんを筆記会場まで送ってあげて」
「うん、そのつもりだったよ」
また人だかりに捕まっちゃかなわない。
「それじゃあ後半も頑張ろ!じゃ!」
「俺たちも行こう」
「はい」
そうしてユウジたちは来た道を戻り、セリアは実技会場へと向かった。
「それでアリス、何をしたんだ?」
「統制部門の試験は、シミュレーション上で4機のタイタンを指揮し、機獣を殲滅しつつ拠点を防衛するという内容でした。4機のタイタンのステータスは全員共通で、機獣はランクB以下からランダムで出現、制限時間まで拠点を防衛するというものです。掃討した機獣の数や拠点の受けたダメージ状況、タイタンの損傷状況などを加味して成績が出されます」
「そしてそのシミュレーションで理論値を出してしまった、と、、、」
「私はいつも通りのことをしただけです。プログラムですからタイタンの性能にランダム性はありませんし、機獣もランクCがほとんどでしたから」
こりゃああれか、無自覚無双ってやつ。ユウジとアーサーのことは異常だとか言いたい放題だったのに自分の能力は全くわかってない。まぁ今まで社会に出てこなかったから仕方がないけども。
そんな話をしていると、再び筆記会場に着いた。
「じゃあアリス、またね。って言いたいとこなんだけど...」
「はい?」
キョトンとこちらを見る。
「やりすぎるなよ」
「はぁ...ユウジも頑張ってくださいね」
絶対わかってなさそうだけど、そろそろ実技の順番が来そうなので俺は急いで実技会場へと向かった。
校内図を見ながら小走りで会場へ向かう途中、ふと知らないラジエルの流れを感じた。アーサーに乗っていくにつれ、普通は見えない空間中のラジエルの流れがなんとなく感じられるようになっていたのだが、この流れは、、、?
その方向に目を向けると、射撃部門の会場だった。確かセリアは射撃部門だったよな、と思いながら順番待ちで並ぶタイタンを見る。
「なんだ!?あのタイタンは...」
試験生には学園から標準的なタイタンを貸し出してくれるが、自分のタイタンを持ち込んでもいい。ユウジはアーサーを持ってきてるし。
しかし今ユウジが見ているタイタンは、列にいる他の学園の標準タイタンとはかけ離れていた。白を基調としたフレームに青いモールドが入り、全体的に流線型。右手武装は標準のスピアヘッドよりも銃身の長いエネルギーライフルに、左肩に何か装置が付いている。そして何より特徴的なのがスカート部分だ。鳥の羽根を想起させるような、広いスカート。左右に2対ずつ分かれているから、内部にはブースターが入っているのだろう。
プラモオタクの性で外見から内装まで妄想しているその時、試験官の声が響いた。
「では次、試験番号A-465、セリア=ヴァルディア!」
白いタイタンが前へ出て、試験位置まで進んだ。
「あれがセリアのタイタンなのか!?」
ふとセリアと学園見学をしていた時のことを思い出した。整備場で、テオと別れる直前。セリアがテオに何か尋ねていた。
「もしかして、あれが【ヒバリス】なのか...?」
???「はじめるぞ、621」()




