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決闘(?)

「これよりロドリク=ヴァルディア及びセリア=ヴァルディアの立ち合いの下、オスカー=フェルメールとユウジ=アークライトの決闘を執り行う!」

 晴れた空の下で、ロドリクの声が響く。

 王立ヴァルディア学園の決闘場で、2体のタイタンが対峙していた。


 .....って

「なんでこうなるの〜!!」

 アーサーの中でユウジが情けない声を上げた。

『初見の相手の戦闘データが取れるし、今の王国のタイタンの性能も見れる。一石二鳥じゃないですか』

 インカムからアリスの能天気な声が聞こえる。もうそれでいいよ.....

「小僧!このオスカーからセリア嬢を奪えるなど夢にも思わないことだな!この決闘で諦めてもらおう!」

 拡声マイクで前方のアウローラからオスカーが豪語する。

 その機体はセリアの乗っていたアウローラとそう変わらない。ただ.....全体的に装飾がキラキラしすぎている。戦場だったら真っ先にバレるぞ。

 周りを見てみると、決闘場を囲む観客席にちらほら人影が見える。

 決闘場までに来る間の話を聞く限り、今は学園は休暇期間中で大半の人が家に帰ってるか寮にいるらしい。

「わざわざ寮から出てこなくていいのに....」

 ユウジのため息は虚しくコックピット内を流れた。


「学園の規則に基づき、射撃武器の使用は禁ずる!近接打撃武器のみ使用可とし、勝敗はどちらかが場外または降参、そして立ち合い人が戦闘不能と判断した場合に決するとする!」

 観客席の一部、テラスのように張り出した場所。その上からロドリクの声が響く。その後ろにはセリアの姿も窺える。

「双方正々堂々戦うように!それでは─はじめ!!」

 ロドリクがあげた片手を振り下ろす。

「正々堂々、ねぇ.....そもそも動機が不純なんだけれども....」

 ユウジが苦笑いする。

〈メインシステム 戦闘(コンバット)モード.....〉

「いや、大丈夫」

 アーサーが一瞬止まり、スライドしかけていた装甲が戻る。ヘルディア平原のタイタンを見る限り、おそらくは...

「おいおいどうした?背中の剣は構えないのか?」

 そういうオスカーは右手に剣を握っている。

「動かないのならこちらから行かせてもらうぞ!」

 オスカーがそう言って、剣を振り上げながらこちらに突進してくる。

 いや、突進っていうか....

「遅い」

 ブーストを使うのも申し訳なく、アウローラの左側に回り込み脇腹に蹴りを入れる。

ズドォォォォォォォン!

 金ピカアウローラが真横に吹っ飛ばされ、決闘場の壁に叩きつけられた。

「あ、あれ?」

 軽く体勢を崩そうとしただけなのに....

 観客席の方を見ると、みんな口をぽかんと開けていた。ロドリクも例外ではない。ただセリアだけが満面の笑みで立っていた。

「あれがタイタンの動きかよ...」

「あのオスカーがあんなにも一瞬で...」

 集音マイクで観客の声を拾うとこんな声が聞こえてきた。

「.....勝者、ユウジ=アークライト!!」

 ロドリクが高らかに言うけど....

『わかりましたか?ユウジとアーサーは異常だって』

「....よくわかったよ」


 決闘場を出て、アーサーから降りるとさっきまで観客席にいた人たちがどっと押し寄せてきた。

「おい、君がさっきのパイロットか!?ちょっと聞きたいことがある!」

「あんな小さいのがパイロットなのか?」

「けっこう顔よくない?てかかわいい!」

 捕まってしまっては面倒臭くなること確定なので、ちょうど前方から歩いてきていたヴァルディア親子の後ろに隠れる。ロドリクも察したのか群衆に向かって

「皆の者、この者のことを知りたいとは思うが、今は少々用があってな」

 さすがに学園長が用ありとなれば食い下がる人はいない。残念そうに、だけどみんな踵を返していく。

「今日は無理かもしれんが、近いうちにまた会えるかもしれんぞ」

 戻っていくみんなの背中にロドリクがかけた不穏な言葉は聞こえなかったことにした。


「いやはや、実に見事であった。まるで人間のような滑らかな動き、そしてアウローラを軽々と蹴り飛ばす出力。どれを取っても規格外だ」

 人が捌けた後、ロドリクが言った。

「そこで、だ。タイタンパイロットを育てる身として、貴方のような人は是非とも親しくなっておきたい。どうだろう、ヴァルディア学園に入学する気はないか?」

「入学...僕が...?」

 驚き半分。期待半分。前世から考えるともう大学も出て働いている男が今更学校に入ることに少々抵抗感を覚えるが....

 タイタンパイロット養成学校、絶対面白そうだよな。

 ずっと森の中だけでの訓練にも限界があるだろう。この機にこの世界の社会に出てみるのもいいかもしれない。

「その顔、どうやら決まったようだな」

 ロドリクがこちらを見て言う。

「はい。ユウジ=アークライト、ヴァルディア学園への入学を希望します!」

「やったぁ!!」

「うわ!?」

 先ほどまで横でソワソワしていたセリアがいきなり抱きついてきた。ツヤのある髪が目の前で踊る。前世では一切嗅いだことのない花の香りがした。

「なになになに!?どうしたの!?」

「あ!ごめん!」

 ぴょんと離れてセリアがあわてて言う。

「実はユウジを学園に入れたらどうかって私が今朝お父様に提案して....それでまたユウジと会えるんだって思ったら嬉しくて」

 心なしか頬が赤い。

「とまぁセリアも喜んでおるし、貴方には3週間後の入学試験を受けられるようにしよう。本来はプライマリー修了者か事前の申請者しか受けられないが、特例だ」

 あぁ、ちゃんと試験はあるのね。

「プライマリーとはなんですか?」

「ヴァルディア学園は基礎課程【プライマリークラス】と実戦課程【ヴァンガードクラス】に分かれている。プライマリークラスではタイタンの基礎知識や基本的な操作を教え、ヴァンガードクラスでは実際に訓練したり機獣との戦い方を教える。ヴァンガードクラスに行く者はその後軍や傭兵に身を固めるのがほどんどだな」

 なるほど。プライマリーが義務教育でヴァンガードが専門学校みたいな感じかな。

「あたしもちょうどプライマリーを終えて3週間後のヴァンガードの試験受けるの!」

 さっきの喜びはこういうわけか。

「.....っていうか、基礎課程の時点で学園抜け出したの...?」

「あっ...あははは...」

 セリア嬢、目が泳いでおりますぞ。

 その時

グウゥゥ

 なんとも間の抜けた音が3人の間を流れた。

「あ、あたしじゃないわよ!」

「いやいやそっちから聞こえた!」

「2人とも腹が減ったようだな。そろそろお昼時か。食堂に行くとしよう」

 微笑ましそうな顔でロドリクが言ったのをきっかけに、ユウジたちは学園の食堂に向かった。

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