思わぬ誘い その二
目を覚ますと、もう見慣れた白い天井。体を起こしながら、昨日のことを思い出す。
セリアを送ってから戻ると、アリスが小屋の前で待っていた。
『お疲れ様でした』
「いやほんと色々ありすぎて....」
そして夕食時
『私は明日行きませんが、これを持っていってください。耳につければ私の声が聞こえますし、私もそちらの状況が分かります』
と言って、アリスがインカムのようなものを渡して来た。聞けば自作らしい。やっぱとんでもないなこのアンドロイドは。
『私も今の王国がどうなっているのか興味があります』
そのまま寝て、今に至る。
起きて朝食を食べ、アーサーで昨日別れた場所まで行く。
すると、もう先にセリアが来ていた。うしろには大きめのトラックのようなものと、馬車があった。
「おはようユウジ!来てくれたんだね!」
「そりゃ約束したし」
手を振るセリアに、こちらもコックピットを開けて応える。
「その後ろのはなに?」
「これ?タイタン輸送用キャリオスだよ。タイタンを長距離移動させる時はこれを使うの」
「へぇ」
そんなハイテクなのがあるのに人を運ぶのは馬車だというのがあまり合点がいかないが。
キャリオスにアーサーを預け、セリアと共に馬車に乗り込む。
「改めてありがとう。今日の朝起きてもまだ全然信じられなくて、でもユウジに会えて確信したよ。昨日あったことは本当なんだって」
元気そうに振る舞ってはいるが、やはりショックは受けていたのだろう、とユウジは思った。若干目の下にクマができている。
もっとも、そのクマの原因が夜通しユウジのことを考えていたせいであることはユウジ本人に知る由もない。
「間に合ってよかったよ。俺がたまたま外に出てた時だし、ある意味運命なのかもね」
「っ!?あぅ...」
セリアの頬は桃色になっていたが、馬車の外を眺めているユウジからは見えない。
間も無く草原に出た。見るとちらほらタイタンが歩いている。
「あのタイタン達は何をしてるの?」
「ここはヘルディア平原といって、ダルカス森林と 王国の間にあるの。機獣が王国に近づかないよう、王国軍がパトロールをしてるのよ」
緩衝地帯ってことね。
「でもなんか...歩き方おかしくない?なんかぎこちないというか」
「そうかしら?一般兵は大体あんな感じだけど」
そうなのか....
「まぁ、あんな動きをする人から見ればぎこちないと思うかもしれないけどね」
意地悪くセリアが笑う。
昨日のセリアのアウローラはあんな感じじゃなかったけどな...とは口に出さないでおいた。
再び馬車に揺られること数十分。行手に、門らしき建造物が見えてきた。
「あれが王国の城門よ!」
「おぉ〜、あれが、か」
近づくに連れ、かなり巨大な門だとわかる。そしてその両側に城壁が長く続いている。王国を丸ごと囲んでいるのだろう。
「すげぇ...ザ・王国って感じだね!」
「え?う....うん」
あれ?なんかうまく伝わってないような。
『この世界の国は大体城壁に囲まれています。ユウジのいた世界は分かりませんが』
耳に差したインカムからアリスが言う。
そういうことね。
馬車が門の下まで進み、そのままくぐって中に入る。
「あれ?検査とか何もないの?」
敬礼している門番達を見ながらセリアに尋ねる。
「この馬車は学園の馬車よ。それに万一止められてもあたしが出れば問題ないわ」
さすがっす学園長娘。
王国内に入ると、幹線道路らしき道を進む。
『ここら辺はあまり変わりませんね....道の舗装が新しくされているぐらいです』
そうなんだ。んー、そういえばなんか、
「建物があまり見当たらないけど?」
「大きな町は国の中心部に集まってるわ。学園は少し外れたところにあるの」
そりゃそうか。自衛隊の基地が町のど真ん中にあったらおかしいよな。
「町とかもいつか見てみたいな」
何気なしにそう呟く。
しばらくして、学園らしき大きな施設が見えてきた。
「着いたよ。王立ヴァルディア学園へようこそ!」
中の広場に入り、馬車から降りる。すると、すぐ前の建物から誰かが出てきた。
「あ、お父様!ちょうどいいところに!お父様ー!」
そう言ってセリアが建物から出てきた人に向かって呼びかける。
お父様って、つまりこの人が学園長か!無礼なきようしなければ!!
「お初にお目にかかります!ユウジ=アークライトと申します!」
そしてJapanese ojigi─背筋はまっすぐ腰から45°前傾両手は揃えて指先まで一直線!
ちなみに「アークライト」はアリスと一緒に考えた名字だ。ないと不自然だからね。
「君がユウジくんか....して、何をしているんだい?」
何って、Japanese ojigiですけど?
「どうしたのユウジ?お腹痛いの?」
あれ?この既視感は....
『....ユウジ。この世界でそのような挨拶の礼法はありません』
なんだと....俺が前世で数々の取引先を丸め込んできた秘技が通用しないとは.....
とりあえず顔を上げる。「お父様」は体格は普通で、目は細いがその瞳はまっすぐとこちらを見ていた。顔はかなりのイケおじだ。
「私がセリアの父で、この学園の長をやっているロドリク=ヴァルディアだ。娘を助けてくれたようだな。感謝する」
声は重々しく威厳があるが、どこか優しい感じがする。
「えっと、、僕が娘さんを助けたって、少しぐらいは疑わないんですか、、?」
自分ならどこの馬の骨かもわからない輩に自分の娘が助けられたと聞いてもすぐには信じられない。娘いないけど。
「セリアは勢い余ることも多々あるが、嘘はつかない。それに、先ほどのはそちらの最大限の礼儀だったのだろう?」
ロドリクが小さく笑った。
「ありがとう、ございます....」
横のセリアはふんぞり返っている。
「セリアが今朝、昨日のことを話してくれた。貴方のことをまるで騎士のようだと言っていたよ」
「ちょ!?お父様それは!!」
「はぁ....」
「そしてこうも言っていたな─貴方が乗るタイタンは、今まで見たどのタイタンよりも強く、そして美しかった、と」
ねぇ昨日の俺どんな風にお父様に伝えたのセリアさん?
「学園長として、セリアがそこまで言うタイタンとそのパイロットに会わないわけにはいかない。今日来てもらったのはその意味もあるのだよ」
なるほどねぇ
と、その時後ろから声がした。
「おやおやセリア嬢、こんなところで何をしているんだい?」
振り返ると金髪の男がこちらに向かって歩いてきていた。
「オスカー....」
横でセリアが呟く。
「あぁ...学園は休みなのにここで巡り会えるのはまさに運命.....神は貴女と私を結ばせたがっているんだ...」
......なんだこいつ?前世のアニメだとこういうのはいたが....自認が貴公子様の人。
見るとセリアの顔がこれ以上ないというほど嫌悪感をあらわにしている。ロドリクに至っては明後日の方向を向いている。
「さぁセリア嬢、早速今晩は私と共に....」
「うるさい黙って」
「うっ!?」
セリアの声になぜか自認貴公子が胸を押さえる。
「そうか...言わずとも私達の愛は伝わるっていうことだn...」
「消えて」
「ぐふっ!?」
「死んで」
「がはぁっ...」
自認貴公子が膝をつく。
「この痛み...私にこんな想いをさせてくれるのはやはり貴女だけだセリア嬢!やはり私と共に...」
....ほんとになんなのこのヒト。
しばらくベラベラ喋って、オスカーは今存在に気付いたかのような驚きの顔でユウジを見た。
「ん?んん?見ない顔だな、誰だい君は!」
指を指されながら言われる。
「ユウジ=アークライトっていいます。はじめまして....」
「ほう....?」
そうやってセリアとユウジを交互に眺める。そして奥のロドリクに気づき、その目が大きく開かれた。
「ま、まさかセリア嬢とみみみみ密会か!?しかも学園長の立ち合いの下だとぉ!?」
うん、めんどくさいやつだこれ。
「許さん!断じて許さんぞぉ!どこの馬の骨かもわからんやつに未来のパートナーを渡すわけには!!」
何が未来のパートナーじゃい。
「こうなったら学園規則に基づいた決闘を所望する!立ち合いはセリア嬢だ!」
え?
「ええええ!?無理ですよそんな決闘だなんて!」
「貴様愛する女の前でそんなひ弱なことを吐かすか!」
誰が愛する女じゃい!は心の中で。なぜかセリアは赤くなってるけど、きっと怒ってるんでしょう。
「待て」
ここでロドリクが間に入ってきた。ナイスですよ学園長!
「オスカー・フェルメール。その決闘認めよう。立ち合い人は私も入る」
ええええええええ!?ちょ学園長!?
「ありがとうございます学園長!」
ビシッと敬礼。そして振り向き様に
「わかったな小僧!30分後に決闘場だ!逃げるんじゃないぞ!」
そう言って自認貴公子はどこかに行ってしまった。
「学園長....」
「いやすまない。しかしどうしても貴方のタイタンを見てみたくてな」
分かりましたよ....
「愛する女....うへへぇ」
あのー、セリアさん?大丈夫ですかー?決闘場まで案内して欲しいんですけどー?セリアさーん?
前まで密になっちゃうかなと思って一文ずつに一行空けてたんですけど、逆にスカスカになっちゃうかなと思って今話は詰めました
どちらの方が読みやすいでしょーか?
(後日談)結局詰めることにしました




