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落ちこぼれ王子に転生した魔術師は、二度目の人生でも魔術を極める 〜チートすぎる魔力と前世の知識で、世界最強に至る〜  作者: 鬱沢色素


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10/22

10・魔術文明が衰退した理由

 その後、ネリスと共に迷宮ダンジョンを出て、俺は自室に戻ってきた。



「──どうしてお主が、生きておるのじゃ?」



 ネリスがそう質問してくる。


 ちなみに……今のネリスは幼女ではなく、小さな熊のぬいぐるみのような姿になって、ふよふよと漂っている。


 これは悪魔や妖精だけが使える『精神体』だ。


 悪魔は人と比べものにならないくらい、膨大な魔力を抱えている。

 それはさながら、そこにいるだけで魔力爆弾。

 周囲への影響が大きすぎる。


 そこで、この精神体だ。


 魔力を極限にまで抑え、省エネモードで動くための体。

 だが、いいところばかりではなく、この姿でいるうちは本来の十分の一程度の魔術しか使えない。

 さらに一度なってしまえば、元の姿に戻るのも至難の業だ。


 謎の幼女が城内をうろちょろしていたら、無用な混乱を生むからな。

 ゆえに俺は、しばらくネリスにこの姿のままでいるように命じた。


「何度もそう言っている」

「人間の寿命は六十〜八十年ほどであったはずじゃろ。まさか不老不死の魔術を……」

「そんな生命を冒涜するような魔術は使えない。実は……」


 俺はネリスに真実を伝える。


 ネリスを封印して何年か経った後、俺は冤罪をかけられた。

 身勝手な人間に絶望していた俺は、『死』を受け入れたわけだが、次の瞬間にこの姿──リオ・オルクチールとして転生した。


 どうして二千年もの時を越え、俺がこの時代に転生してきたのかは、よく分かっていない。

 しかし──まだこの未熟な体では制限はあるものの──前世の記憶と魔力を引き継いでおり、そのおかげでお前に会うことが出来た。


 ……というようなことを話すと、ネリスは神妙な顔つきで、


「なるほど……な。信じ難いことではあるが、〈死神〉の口から聞かされると、妙に納得してしまう。神の気まぐれか──もしくはお主がこの時代に転生したことは()()じゃったのか。謎が深まるばかりじゃ」


 と何度か頷いた。


「信じてくれたようで、なによりだ」

「お主は二千年前も、出鱈目な魔術師じゃったからな。あの強さを前にして、まだ信じられぬほど儂も愚かではない」


 疲れた顔をして言うネリス。


「それ……で、儂の思惑を知ってなお、封印を解いた本当の理由はなんじゃ? 話したいだけなら、封印を解く必要はなかろうに」

「ああ。実はお前を俺の使い魔にしたいと思ってな」

「はあ!? お主を?」


 驚愕と怒りが半々に混じった声で、ネリスが詰め寄る。


「お前は邪悪な悪魔ではあるが、二千年前のことを知る貴重な存在であることには変わりない。今のこの状況は人間である俺だけでは、解決も難しい。ゆえにお前に協力してもらいたい」


 ……無論、悪魔を使い魔にすることには危険もある。


 しかし今の俺なら、ネリスを容易く従わせることが出来る。

 それは先ほどの戦いで確信した。


 ゆえに申し出たことではあるが……。


「巫山戯るな」


 ネリスは顔を憤怒に染め、


「使い魔と言ったら、主人あるじに忠誠を誓う必要がある。悪魔が人間の使い魔になるなどと、そんな例も聞いたことはない。じゃから──」


 断ろうとしたネリスであるが一転、俺から顔を背け。




「待て……よ? 使い魔になったら、こやつの傍にいることが出来る。服従の契約も、タイミングを見計らって破棄する方法を探せばいいだけじゃ。こやつがいる限り、儂は一生〈死神〉の影に怯えなければならぬ。じゃったら、こやつの寝首を掻っ切ってから、ゆっくりと世界を支配し……」




「おい、なにをぶつぶつと呟いてやがる」


 溜め息を吐くと、今度はやけに機嫌のよさそうな顔になって、ネリスはこう答えた。


「なるなる! お主のような強き魔術師の使い魔になれるとは、光栄じゃ。早く、儂に服従の契約を施せ!」

「いきなり心変わりしたのは違和感はあるが……まあいいか。俺だって、無理やり従わせたくなかったしな」


 そう言って、俺は手をかざす。

 契約魔術を発動。俺とネリスの間に魔法陣が浮かび上がる。魔法陣は赤い糸となり、俺たちを繋いだ。


「終わった。これでお前は俺の使い魔だ」


 糸が消滅し、手をパンパンと払いながら告げる。


「見事なものじゃな。くっくっく……二千年前から思っていたが、こやつはやはりバカじゃ。魔術に関しては一流じゃが、その他のことはからっきしで……」

「おい」


 低い声で呼びかけ、ネリスの顔をじっと見つめる。


「これからよろしく頼むぞ。俺の期待を裏切るなよ」

「ひゃ……! は、はい……」


 ネリスが恐怖に駆られたように、体を縮こませる。



「こ、こやつ……っ、儂の狙いに気付いておるのか!? 少しでも変な真似をすれば『殺すぞ』という殺気を感じた。ま、まあ、儂にも時間がある。ゆっくりと、こやつの殺害計画を進めればいいのじゃ……」



 またもや、ネリスはぶつぶつと呟く。

 なにを言ってるかまではよく聞こえないが、変なヤツだな。


「よし。一番の目的も終わったところで……話したいことがある。この時代だが、魔術文明が衰退している可能性がある」

「なんじゃと?」


 ネリスが怪訝そうな表情を作る。


「二千年も経っているのじゃぞ? 魔術が進歩していると考える方が、自然ではないか」

「お前の言う通りだ」


 俺は頷き。


「だが、城内にある魔術に関する書物には、どれも初歩的な内容しか書かれていなかった。二千年前だったら、それこそ俺くらいの年齢の子どもが見るような……な」


 最初はそんなものかと思っていた。

 誰でも閲覧出来る本には、ありきたりのことしか書かれていない。もっと上級の本は、落ちこぼれの王子である俺には閲覧が許されていない……のだと。


 しかし、第五王子のディルクとの魔術対決を通して、疑念は深まった。


 自らを天才魔術師と名乗ったくせに、非効率な詠唱魔術を使うディルク。

 そしてそれを前にしても、彼を褒める周りの騎士たち。


 もちろん、相手は王子。たとえ魔術がしょぼくても、騎士たちがそれを非難することは難しいだろう。

 だが、あの時の騎士たちは心の底から、ディルクのことを褒め称えているようだった。


「それに反比例して、発達した魔導具。ダメージを肩代わりしたり、魔術の威力を数値化する魔導具など、二千年前にも存在していなかった。なんというか……この世界は()なんだ」


 せっかく、この時代に転生して、未来の魔術はどのようなものか──と心を弾ませていた俺にとっては、悲報である。

 これでは魔術の神髄に近付くどころか、遠ざかることになるのだから。


「確かに……不思議じゃな」

「念のために聞くが、お前はなにか心当たりはないか?」

「ない。そもそも二千年間も、あんな狭いところに閉じ込められておったのじゃぞ? お主が儂を封印しなかったら、ちょっとはなにか分かっていたかもしれぬがな」


 非難がましく言うネリスであったが、俺はそれに気付かないふりをして、こう続ける。


「そうか……だったら、調査だな。とはいえ、この城内だけでは限界がある。おい、お前も付いてこい」

「別にいいが、どこに行くつもりじゃ?」


 外出の準備をしながら、俺はネリスにこう答えた。


「城下町だ」

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