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ぬばたまの夢 闇夜の忍~暫く全力のごっこ遊びかよって勘違いからはじまった異世界暮らしは、思ってたのと大分違う。(もふもふを除く)~  作者:


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91.町へ行こう

どうやら寝起きの燐ちゃんは頭の回転が遅いらしい。動作もゆっくりで話し方も遅い。ただ見てるだけなら可愛いんだけど、状況が全く可愛くない。


「ねぇアンタさぁ。何で才蔵に抱き着いて寝てんのさ」


「んー?…あったかい。もふもふ…ふふふ」


そして幸せそうに再び才蔵に抱き着く。その笑顔に黒霧みてぇな、真っ黒いどろりとしたもんが自分の奥から溢れ出て来る。


才蔵は苛立つ気配を隠しもしない佐助に面倒臭いと思いつつ、昨夜移動した事、合流次第発つため寝場所を作らず土の上で寝ようとし、燐が襲われた事を簡単に話した。


≪で、何時までその恰好でいんの?≫


獣化を見られる事を避けるような素振りだった才蔵と燐の間に何があったのだろうと佐助は思うも、留まるのは得策では無いと才蔵を見る。


≪通行許可は取ったけど、何時反故にされるか分かんねぇんだけど?≫


才蔵は燐を起こさない様気を使いながら腕を取ろうとするが絡まっていて取れない。寝袋に半分収まった燐を佐助は横抱きに抱え上げ、移動しようと才蔵を見た。


≪監視が付いてるみたいだから、怪しまれる前に早く行こうぜ≫


少し先で休憩をしている分身についている監視の事を告げ才蔵を促す。


≪昨夜同様、己は箱を押し移動する。長は燐殿と別に≫


監視が居るならばと才蔵は別行動を提案した。確かにと思うと佐助は頷く。


≪その袋は目立つ≫ 


≪そんじゃ、これ羽織らせて担いでくわ≫


才蔵にと持って来た忍装束。佐助は寝袋から燐を起こさない様、細心の注意を払いながら出すとそれらしく羽織らせ肩に担いだ。


「ええっと…」


何だか体がふわふわ揺れている。そういえば昔雲に乗ってみたかったが、乗ったらこんな感じなのかと燐は思いつつ、体を伸ばそうとして違和感に顔を上げた。視線の先には空色と薄茶色。


「おはよう。燐ちゃん。随分とぐっすり寝てたよねぇ?」


分身に付いていた監視を一旦巻くように見せかけ消し、暫く待って今度はわざと姿を暫く見せ続け負傷者の救出を装った。


監視が追跡を止めても暫く駆け続け、身動ぐ様子に燐を横抱きに抱え直した佐助は、困惑した声に近くの枝に降りた。


「…あ、おはよ、ん?!」


「あんま動かないで?」


佐助に横抱きにされていると気付いた燐は離れようと足を動かすも、佐助は制止する言葉と共に燐をがっちりと抱え直した。


「なっ、え?」


周りの緑、上は空でと下を向くと、遠くに地面の茶色が見える。随分と高い所に居ると分かった燐は、遠くの地面と佐助を交互に見た。


「目ぇ覚めた?」


にっこりと笑う佐助に言葉が出ず頷く。佐助は自分を横抱きにしたまま、器用に枝に腰を下ろしていた。


「何で?…えっと、ここどこ?」


意味が分からないと混乱する燐を真正面に座らせる様、体勢をずらした佐助は燐の背を抱えたまま燐が落ち着くのを待った。


「木の上。俺は才蔵と違って獣にゃなれねえから、木の上伝うのが安全なの」


「木の…あ、この木は木なの?普通の木?って変な事言ってるって事は分かるんだけど、根っこで攻撃とかする木なのかなって」


黒霧の森で色々とあったのか、警戒しながら周りを見る燐。佐助は才蔵の言っていた事が本当だったと確信しつつ頷いた。


「ここは普通の森。っていっても、弱い魔獣は出るし、獣もいる…けどここは安全」


説明を聞いていた燐の顔が曇ると佐助は安全と付け足した。安堵の息を吐く燐に佐助の胸の内があわで埋まる。


佐助は才蔵と別行動をし起きない燐を運んだ事、車は才蔵が獣族の森に隠し、警戒が薄れたら取りに行く事を燐に告げた。


「なんか、いっぱい迷惑掛けちゃってごめん」


人に運ばれても寝続けていたなんてと燐は佐助に申し訳ないと謝った。佐助は不思議そうに燐を見る。


「なんでさ、そんなに謝るの?燐ちゃんの世は、そうなの?」


自分の置かれている状況が不確定でも他人を思いやれる事が不思議と佐助は燐を見る。


困ったように暫く考えていた燐は、思い付いたように佐助を見た。


「皆がどうかは分かんないけど、私が佐助に迷惑かけて申し訳ないなって思ったから謝ったの」


残念ながら細くはない。抱えたいと思われるような体でもない。先ず意識の無い人を抱えての移動なんて大変だったろう。


「置いてかないでくれて、ありがとね」


佐助に言葉を続けると、佐助は一瞬目を見開いた後でふわりと笑った。


佐助は此処から自分達の主の主君と争う国主の領地を通る事、その許可がまだ出ていないため暫く近くの町で待機する事を告げる。


「そんな、かかんないとは思うんだけどさ」


関所とか水戸黄門でも言ってたもんなと思うと佐助の言葉に頷いた。


「大丈夫!うっかり和風ファンタジーがどこまで時代劇に寄せてるかの確認楽しみだし」


自分の知る歴史と似ている文化や物があれば、それを改良したりして暮らして行けるかもしれない。


燐はそう思うと怪訝な顔でこちらを見ている佐助に、先ずは地面に降ろして貰えるよう頼んだ。

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