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ぬばたまの夢 闇夜の忍~暫く全力のごっこ遊びかよって勘違いからはじまった異世界暮らしは、思ってたのと大分違う。(もふもふを除く)~  作者:


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90.もふれた!

謝る才蔵。どこまでも良い人だと燐は才蔵が何か困った事があれば、更にもう1回必ず助けるからねと心に誓った。


「ならテントは張らない方が良いですよね?」


「寝る場所があった方が良いかと思うのですが」


「あ、大丈夫です。私どこでも寝れるっぽ…っ」


燐は例えばそこの木に寄り掛かれれば寝れると言いながら近付く。と、木は根を地面から出し、鞭の様に燐に攻撃して来た。


後退ろうとするも足が動かない。よく見ればいつの間にか草が靴に巻き付いていた。


「?!」


「悲鳴を上げらば、他の魔物も寄って来ます故、申し訳ありません」


学習能力作動してないって!と自分に突っ込む。何故か声も出ず、終了の予感しかないと両目を瞑った燐の頭上で申し訳なさそうな才蔵の声が響いた。


「あ、安全な地面、毎回すみません。…安全な地面限定で、寝れます」


きっと才蔵が何かしてくれたのだろう。目を開けると申し訳なさそうな才蔵が横に立っていた。


何となく口を塞がれていたんだと分かるも、完全に自分のせいだと燐は才蔵に謝った。


安全な地面。才蔵は周りを見回した。同盟が有れどいつ寝返るか分からない他国の地で安全な場所等あるのだろうか。


自分と同系列の種族の森とはいえ、そこに他国の忍が居ないとも限らない。


才蔵は暫く考えるも燐に我慢を強いる事しか思い付かず、一先ず眠そうな燐に寝る準備を促した。


「この範囲なれば」


車の周りを指す才蔵。燐は車のカバーを取り出しつつ、仮眠なら運転席でと考えるも周りが見えないのは怖いと考え直す。


「こうやって、…ここ大丈夫だよね?」


車の周り。それはどの辺りまでなのだろうか。燐は寝袋と飲み水等を車から取り出した後で、疑う様に木の棒の残りで地面をつつく。


「もういっそ、車の屋根で寝たら良いのかな」


ルーフにそんな設定は勿論ない。けど映画でたまに屋根に乗ってるのみるし、頑張ったらいけるのでは?とつま先立ちで屋根の上の状況を見てみた。


「結構高いよね。落ちたら、痛いよね…」


自分の寝相に自信がない燐はぽそりと呟く。すると反対側の黒い毛並みの犬型才蔵より一回り以上大きな獣と目が合う。


死んだ


異世界に来て何度目かの死の予感。死が間近にも程があると燐は必死に悲鳴を押さえ、目を逸らしたら負けだと獣を見詰めた。


「この姿であらば、燐殿も幾分か安心して寝られると思います故」


「え?あ!才蔵さん?」


才蔵の声に燐は昨日よりでかくない?と才蔵を見上げ瞬きを繰り返す。昨日は確かテントに入れるサイズだった筈だが、今は車よりも大きい。


異世界だからってサイズ変更も自由なのか?と思いつつ、一々突っ込むのやめようと燐は大きく深呼吸した。


「えっと、一緒に寝てくださる?」


「はい。それがこの地で一番危険回避出来るかと」


おずおずと尋ねる燐に、才蔵は森に居る間は仕方がないのだと説得しようと次の言葉を選ぶ。


同時に、ちょっとだけ頭の隅に浮かんでいた予想。燐の顔を見て、それが当たったと才蔵は複雑な心境になった。


頬を染めた燐は、きらっきらの瞳で才蔵を見上げ物凄い満面の笑みを向けている。


やはり。この御仁は主寄りなのだなと才蔵は苦笑せずにいられなかった。


「燐殿は、前側に寝ていただければ」


車の後部には獣族達の気配がまだ残っているため安心と才蔵はスライドドア部分から、フロント迄を包む様に伏せ、前足で胸の前辺りの地面を数回叩く。


フロント部分と才蔵のモフモフの間に入った燐は、いそいそと才蔵の前足の横に寝袋を敷いた。


「あの、才蔵さんちょっとで良いんで、もふって良いですか?手。っていうか、腕」


「もふ…とは」


昨日より大きいモフモフ。腕なら触ってもギリいけるんじゃないかと寝袋片手に、物凄く願いを込めて聞いてみた。


才蔵は意味不明な言葉と燐の様子に少し戸惑うも、燐の寒がる様子を思い出す。


「でしたら、此方に。寄り掛からば少しは暖もとれるかと」


モフモフ最高!


前足の付け根に頭を埋もらせ寝かせて貰えた燐は、更に寝袋を抱えるような前足の温かさと埋もれ加減に頬を染める。


「はぁ…良いなぁ。あったかいモフモフ」


異世界に来てアレルギー治ったのかな?と燐は半分寝袋から出て腕の毛並みにぽふりと埋まる。


「モフモフ、良い。あー、素敵、モフモフ最高」


才蔵は何故か腕に絡まって寝る燐に戸惑うも、幸せそうな顔に幼い頃の主を思い浮かべると小さく口角を上げた。


≪ねぇ。何で添い寝してんの?≫


あれから主の認めた文を取り次いでもらい渡し、今回ここに来たのは斥候等の意趣は無い事と通行の許可を貰い受けた佐助は幸せそうに才蔵の腕に抱き着いて寝ている姿に顔を顰めた。


≪寒かったのであろう≫


主の幼少期と同じ行動だと気にも留めていない様子の才蔵に、佐助は目を細める。


「ちょっと燐ちゃん!」


「んー?あー、さすけだぁ」


屈んで大きめの声を出すと才蔵の前足に埋もれたまま、燐ちゃんが顔だけ此方を向く。寝起き、可愛い。じゃなくて!

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