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ぬばたまの夢 闇夜の忍~暫く全力のごっこ遊びかよって勘違いからはじまった異世界暮らしは、思ってたのと大分違う。(もふもふを除く)~  作者:


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85.さいっこう!

燐は毛布を受け取ると、全く問題ないと才蔵に返した。受け取った才蔵は困惑気に燐を見る。


「いや、寒いから。今何時か分かんないけど絶対これから寒くなるので」


自分の方に置かなくて良いという才蔵。燐は引き摺って来た寝袋を胸元まで上げると才蔵に見せた。


「私にはこの寝袋の中に毛布と、それから上に掛ける厚手の毛布があるんです。才蔵さんに貸した装備より断然温かいんです。なので私に気遣いはしなくて良いので使って下さい」


「ですが、更に下に敷かば温かくなる筈」


自分の保身後の提供だと言っているのに引かない才蔵。燐はだからって地べたと変わらない所に寝せるとか無理!と顔を顰めると、もういっそここで寝ようと準備のために寝袋を出た。


「もう、じゃあ同じ場所で一緒に寝ましょう。才蔵さんが体調崩すと困るんです。私はこの場所の事何も分からないので、才蔵さんの健康第一優先です、よし決めた」


燐は返事を待たずに寝室からボアマットを持って来て困惑する才蔵を押し退け重ねて置いた。その上に座ってみると確かに温かい。


次に荷物を一ヶ所にまとめ、残りの毛布も持って来ると、食料は念の為と寒い寝室へ移動した。


「よし、はい才蔵さんここ。私こっち。で、寝ましょう。何回も言いますが、絶対襲ったりしないので安心して寝てください」


ボアマットの重ね使いで中々寝心地も良さそう。自分だけ更にインフレータブルマットを敷いた燐は寝袋の無い方を才蔵の寝る場所だと指すと、さっさと自分の寝袋へ入った。


「こうやって寝ます。あ、アレルギー、じゃ分かんないか、咳も出ないんで隣で大丈夫ですから」


頭まですっぽり寝袋に収まった燐は、この姿なら絶対襲いに行け無いから安心しな。と目が見える程度に寝袋を広げ才蔵の方を向いて見せた。


「先程も申しましたが」


忍如きが。そう思わずに居られない厚待遇に、才蔵はなんと言えば燐も理解出来るのかと眉を下げた。


「1人で寝てると不安だからお願いします。2人分の体温で温まるだろうしって事で、ちゃんと毛布に入って寝てくださいね」


不安も寒さも本当なのか、胸の内と同じ事を述べながら横向きになる姿に才蔵は小さく息を吐いた。


この様に言い捨てさっさと事を進める所は主にそっくりだと思うとこの先何を言っても聞かないのだろう。


才蔵は暫く燐を見た後で、人型よりは獣の姿の方が何かあった時燐に被害が少ないだろうと思うと静かに息を整える。


「才蔵さん、そろそろ電気け…」


何かごそごそしているなと思って振り向くと、獣が居た。驚き過ぎて言葉が続かなかった燐は暫く黒い獣を凝視した。


「この姿の方が、暖はとれるでしょう」


獣はゆっくり腰を上げると、燐のそばに伏せる。大きな喋る獣。もう絶対ファンタジーだ!と燐は眠気が吹っ飛んだ。


「才蔵さん?で、合ってます?」


「はい」


「おっきい!さ、触っても良いですか?あ、嫌な時は触りませんっ」


憧れのモフモフとの触れ合い。燐は頬を染めながら起き上がると寝袋を腰まで下げ両手を出し、触る準備を整えつつ一応聞いてみた。


「その、寝ないのですか」


戸惑ったような声の獣。黒い毛並みの犬型。でも大きさは比ではない。虎?ライオン?兎に角でかい。


思いっきり抱き着きたい衝動を抑えつつ、燐はこの感じの言い方は才蔵さんで間違いないなと、顔を見上げた。


「寝れない、だってモフモフ!いーなぁブラッシングとかしたい撫でたい抱き着きたい」


さっき襲わないって言ったけど撤回して良いだろうか。燐は本気でそう考えながら、才蔵獣バージョンをキラキラした目で見ていた。


才蔵はこの姿になった事を後悔しつつ、この瞳で見上げられるのも久々と再び主を思い出す。


「でしたら此処へどうぞ。これならば寒くなく寝られるかと」


小さな頃の主が一番好きな寝方を思い出した才蔵は、ボアマット沿いに臥せる様に座ると、前足で胸の前あたりを軽く叩いた。


予想通り瞳を輝かせその場にやって来た燐。こちらを向きながらも寝そべった燐に、毛布を咥え掛けてやる。


「うわぁー。凄い!モフモフだし、何か温かいし、モフモフだし!!」


大きいと思っていたテントが窮屈そう。頬を染めながらも言われた通り寝袋とインフレータブルマットを引き摺って前足の側に寝た燐は、上から毛布を掛けられ幸せ過ぎると頬を染めた。


「電気消すの勿体ない」


明りが無いとちゃんと見えないと呟くも、明日のためにも寝ようと、燐は思い切り後ろ髪を引かれながら電気ランタンを消した。


「才蔵さん、何から何までありがとうございます」


完全に獣の姿になれる獣族は、その戦闘力を目当てに国中で争う程に稀な存在だった。


大きさもだが爪や牙等は自分の母でさえも卒倒したというのに。


恐怖など微塵も見せずに礼迄述べる燐に、才蔵は「何と大き事!」と瞳を輝かせ自分を見上げた主を思い出すと、小さく口角を上げた。

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