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ぬばたまの夢 闇夜の忍~暫く全力のごっこ遊びかよって勘違いからはじまった異世界暮らしは、思ってたのと大分違う。(もふもふを除く)~  作者:


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83.生えてる!

人族と獣族間には優劣は無いため、住み分けも無い。が、一部では人族のみ、獣族のみの血筋を大事にしている者もいるという。


燐は才蔵の話を聞きながら奴隷が居ない事に、そこはあるある通りじゃなくて良かった。と密かに思った。


「会ってみたいなぁ獣族の人」


眠気もあってぽろりと呟きが漏れた。狼男の様に月で完全に姿形が変わるのか。どの程度人間寄りなのか。想像してみると意外と楽しい。


「燐殿の世には、獣族は居らぬと。…会ってみたいものですか?」


才蔵は燐の言葉に浮かんだ疑問をそのまま口に出す。燐は頷くと鍋に残ったお湯を再加熱しながら才蔵を見た。


「見た事無いので全体的に獣っぽい感じなのか、人っぽい感じなのか、耳とか毛とか?尻尾とか。例えば熊が2本足で立ってて喋る感じなのかなとか」


楽しそうに自分の予想を語る燐。才蔵は物音や衝撃に過剰反応をする半面、好奇心も旺盛なのかと燐を分析していた。


「あ。後私、動物アレルギーなんですよね。だから、あー、えっと咳とか涙出ちゃうんです。動物?獣?触ると」


もし2足歩行の熊っぽいのが獣族なら、涙まみれになる自分とは仲良くしてもらえなさそうと燐は眉を下げた。才蔵は小さく息を吐くと徐に頭部を覆っていた布を外す。


「…え、と」


見間違いだと思っていたが、才蔵の頭に獣の耳が付いていた。燐は布を丁寧に畳む才蔵をじっと見つめる。


「この様な者が多いかと。人里なれば、人族の住まう地では耳や尾が有る者と無き者が混在します」


説明するより見せた方が早いと布を外した才蔵は、どの様な反応を見せるのかと燐の出方を待った。


「あ、の。物凄く興味はあるんですが、才蔵さんが見られるの嫌なら戻して良いですよ?」


意外な反応に才蔵は燐を見詰めた。不安気にも見える表情だが、此方を見ている胸の内は言葉通り興味と配慮が混じっている。


「構いませぬ。この森に居る間、黒霧に触れらば獣の血が濃くなる様で、今後もこの様な無様な姿を晒す事もあります故」


才蔵の家の曾祖母は獣族だが曾祖父は人族だったため、常に人の形を取り生活をしていた。


だが、才蔵は獣の先祖に近いのか瘴気に触れ続けていると制御出来ず獣の耳や尾が姿を現す。


幼い頃見た、蔑むような周囲の顔を思い出した才蔵は、見慣れない者にとっては不快だろうと述べた。


「ええっと、耳が生えてると無様って事ですか?え、可愛いのに?あ、ごめんなさい」


表情の乏しい無口な才蔵。その頭についている耳はピコピコ動いている。


尻尾も出るんだ!と動く耳を見つつ、また余計な事を言った事に気付くと、素早く謝った。


「えっと、普通は出てない物なんですか?」


「家によります。人族と見えらば不要な諍いを起こさぬよう、獣の部分を隠す一族もあるのです」


諍い。どこでも色々あるんだなと燐は自分の世界でも外国じゃ考え方の違いで戦争してるもんなと1人思う。


獣族にも優劣があり、獣に近い姿のものが強く、人族に近い者は弱い。


獣族は瘴気に触れ続けていると耐性があれば獣に近い姿になり、その逆に瘴気の少ない人里に居れば人族と変わらない姿なのだと説明した。


「人族寄りの獣族は黒霧を避け、人里にて暮らす者も少なくありませぬ」


「良いなぁ…尻尾とか温かそう」


才蔵が寒さに強いのは、そういう理由なのかと燐は才蔵の揺れる耳を見ながらぽそりと呟いた。


「温かいかは分かりませぬが、寒さは人族よりは感じませぬ」


「そっかー。だから薄着で外居ても平気だったんですね?あっ!」


才蔵の言葉に燐は寒がりの自分には欲しい機能だと思い才蔵を見て、短く声を上げた。


「才蔵さんて、何系の獣族ですか?どうしよう、ココアって飲んじゃダメだったんじゃ…お腹痛くないですか?」


オロオロしながら燐は才蔵が自分のせいで具合が悪くなったらと蒼褪める。知らなかったから、蕎麦の薬味も酒もその他色々食べちゃってたよねと才蔵を見た。


「獣族は人族と同じ物を食します故、獣が食せぬ物でも異変は起きぬかと」


「んー、人と同じの食べても大丈夫って事ですね?本当ですね?嘘無しですよ?」


何度も念を押す燐の真剣さに、才蔵は小さく口角を上げると大丈夫ですと頷いて見せた。


安心したように良かったと呟いた燐は才蔵の耳の形から犬系かな?と推測してみた。


「犬…その様なものです」


大きく分類すれば自分も犬なのだろうと思うと、才蔵は燐の世に生息しているか分からない獣より、確実に分かる方が良いだろうと口に出した。


「獣人さんは私の所には居ない種族なので、嫌な事とか困る事とか、気を付ける事とか。そういうのあったら教えてください、お願いします」


これから会うかもしれないし、事前情報はあった方が良いだろうと思うと燐は才蔵に頭を下げる。


「後、食べ物と飲み物。取り敢えず才蔵さんが嫌じゃない範囲で教えてください」


才蔵は接し方を変えない燐の予想外の行動に若干戸惑いつつ、自分の分る事ならばと頷いた。

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