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ぬばたまの夢 闇夜の忍~暫く全力のごっこ遊びかよって勘違いからはじまった異世界暮らしは、思ってたのと大分違う。(もふもふを除く)~  作者:


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82.何故外?

たらふく食べて、歯を磨いて。シートで体も拭いた。色々あって眠れないと思っていたが、寝袋に入って温かくなると意外と早く睡魔がやって来る。


布越しに規則正しく寝息が聞こえると、才蔵は静かに外へ出た。見上げた月は蒼かった。森の中から見た月の色に才蔵は戻って来たのだと安堵する。


長の足で往復にどの位掛かる地に居るのだろうかと才蔵はチラとテントを見、一先ずは燐の平穏のためにと静かに深呼吸し闇に姿を溶かした。


「さむ…」


燐は小さく身じろぎして起きた。すると明らかに外で何かが動く気配。ビクリと体を強張らせると、手近にある武器になりそうな物を探す。


「さ、いぞ、う…さーん」


燐は暗闇に小さく声を掛けた。寝ているのか返事は聞こえない。燐は寝袋ごと起き上がると、木々の擦れる音に不安気に視線を動かす。


「まだ夜も空けませぬ、如何(いかが)いたしましたか」


闇への不安の中、才蔵の声が返って来る。燐は安堵から深く息を吐くと、声のする方を向いた。


「ん?何で外?こっち側ってテントの外ですよね?」


明らかにテントの外からした声。その方に向かって話しながら不可思議な状況に顔を顰めた。


「はい」


「いやいや、当たり前に「はい」って。いや、外に居るからそうなんだろうけど。何してるんですか?」


魔物が居るとか言ってたのに外にいるって何故?


燐は当然の様に返事して来た才蔵に混乱した。考えても答えは見つからない。


「布にて仕切りがあるとはいえ、忍と居を同じくするは、その」


「ちょっと、電気点けますから。何言ってるか分かんないし、一旦集合。こっち入って来てください」


何か言い淀んでいる才蔵の感じに燐は電気ランタンを点けると、寝袋から出て寝間着の上にダウンジャケットを羽織って寝室から出た。


「寝ないんですか?あ、見張り的な?」


異世界あるある、野宿時の見張りか?とあるある再現を諦めきれず問い掛ける。


「忍は寝ませぬ故」


何をきっぱり言ってるんだろうか。それともここの世界の人は寝ないのか。燐はそう思いつつも無理だろうと思い直すと才蔵を見た。


「何変な事言ってるんですか?寝ますよね?忍だって寝ないと生き物はやってけないんだから構造上」


「こうぞう…ですか?」


うん。2人して言葉がそれぞれ分からないって意外と困るな


同じ言語の筈なのにと燐は眉を下げつつ、なぜ才蔵が寝ないのか考えてみた。


「見張りじゃないなら、見回り?なら交代で寝ましょう」


「…特にどちらも必要もありませぬ故」


困惑気味に返事をした才蔵。燐はセーフティーゾーン的な所なの?と思いつつも才蔵の言葉を信じる事にして、なら尚更なんで寝ないで外に居たのか考えてみた。


「あ、人恋しくてうっかり襲ったりしませんから、大丈夫ですよ?」


あらゆる可能性を考えてみた燐は、心細くなってしな垂れかかられたら嫌だと思って距離取られてたのかも。と思うと才蔵に無いと伝えた。


「その様な事は思い浮かびもしませんでしたが」


忍と同じ空間にいる事が嫌では無いのだろうかと才蔵は燐を見た。そして燐の世には忍は居ないと思い出すと、先に忍の事を話すべきかと燐の様子を見た。


「目が覚めたようでしたら、忍の事を聞いていただきたく」


「あ、じゃ飲み物何か飲みませんか?」


ちょっと寒いと燐はココアの袋を出し才蔵の分と合わせ2つ作りカップを渡す。燐が作業をしている間、才蔵は何から話すかと考えていた。


「燐殿。先ず忍というものに人と同じ物を与えたりしませぬ」


「佐助もそんな感じな事言ってたけど、どういう事ですか?」


忍。どう見ても外見は人。何故か自己肯定感が物凄く低い発言をちょいちょいするイケメンども。イケメンなのに。何故?と燐は眉を顰めた。


「忍は人に非ず、獣や畜生より劣ると言われております。故に同じ場所に居るのは今後、燐殿にとってあまり良くない事になるのです」


「え。なにそれ悪口?」


悲愴感すらない様子の才蔵。言われ慣れているのかと感じた燐は、男でもイケメンだと嫌がらせとかあるんだなと才蔵の状況に同情した。


「じゃ、私気にしないので、才蔵さんも気にせず寝てください。えっと、私1人だと怖いし、暗いし、寒いし。2人いたら温かさが全く違うのでお願いします」


全く気にする素振りの無い燐の様子に、才蔵は我が主と同じ考えなのかと思うも、これから現実を見れば徐々に分かるだろうと小さく溜息を洩らした。


「寒い…ここも寒いですか?」


「ちょっと。あ、でも死にそうじゃないんで大丈夫です」


燐を見れば少し顔色が悪い。湯気の出ていた器を持つと、中身は既に温くなっていた。人には寒い気温なのだろう。才蔵は火の用意をと腰を浮かす。


「火を焚きます。多少は温かくなるかと」


「や、やめておきましょう。この中だと、燃えたら嫌だし、火に変なの寄って来られても嫌だし」


燐は準備をしてくれようと立ち上がりかけた才蔵を制し、不安気に様子を伺う素振りで周りを見回した。

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