表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ぬばたまの夢 闇夜の忍~暫く全力のごっこ遊びかよって勘違いからはじまった異世界暮らしは、思ってたのと大分違う。(もふもふを除く)~  作者:


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

80/226

80.異世界予想が裏切られ続ける

食い入るように画面を見ている才蔵。見た事も無い変な草は生えてるし、さっきから聞いた事の無い音も聞こえると、燐は眉を下げた。


ここの環境で殿フル装備の人物が実在したとしても違和感でしかないと日本っぽくない景色を見回した。


「…着ている物は多少異なれど。ですが、頭はこの様な奇抜な物では無く」


「え?殿なのに丁髷じゃないの?!」


水戸黄門も、暴れん坊将軍も、必殺仕事人も、なんなら国営放送だって丁髷なのに?!


燐はこれじゃないと困惑気味に言う才蔵に驚き思わず声を荒げた。


「我等と違わずに」


「我等って事は、同じ感じって事ですか?えー…」


着物に草鞋なのに。だったら髷もそのままで良いじゃん異世界。と思うも、そう言えば魔物とか言ってたし、獣族もいるんだった、と思い出した燐は良く分からなくなり顔を顰める。


「ええっと、先ず火とか焚いてた方が良いですか?獣避けみたいな感じで」


無人島とか異世界転移したなら、先ず火大事だよね?と問い掛けると才蔵は横に首を振った。


「火を好む魔物も居ります故、何もせずとも」


「ここで最初のあるあるが崩れた…」


燐は才蔵の言葉にガックリと肩を落とした。自分の知識で意外とイケるんじゃと思っていたが甘くは無いらしい。


「よし、じゃあ…あ、車にカバー掛けといた方が良いですかね?」


テント設営が終わり隣にある車を見た燐は、このままだと目立つよねと山の中で異物でしかない車を見た。


「かばあ、とは」


「あ、そっか。えっと、布っぽい物で覆っておいた方が良いかって事です」


才蔵さんの拙い言い方可愛いな!と思いつつ、テントもロッジも微妙な発音だった事に納得した。燐の駄々洩れの胸の内に顔を顰めつつ才蔵は頷く。


「よし、じゃ必要な物取り込んでカバー掛けて。後は中で話しましょう」


テントの中に入ってしまえばキャンプと変わらない。燐は見慣れない植物を見ない振りしてさっさと荷物を移動した。


「侍、居るんですよね?でも、魔物も居るんですよね?で、車は有りますか?」


魔物ってスライムとかいるかな?と考えつつ燐は、何が一緒で何が違うのかを才蔵に問い掛けた。


燐は気になる要素を後回しにし、自分の世界とここの違いを先に把握する事にした。


スライム、居ないんだ。ま、カタカナ表記の西洋寄りだし仕方ない


「丁髷なし、着物あり。コンビニ無し、電気無し、靴無し。車も自転車も無し。何食べてます?お米ありますか?」


「米はありますが、高価な品。普段は、農民などは芋等、商人や武家等にならば米も食します」


照らし合わせて行くと、便利な物がほぼ無い。髷が無くてちょっと魔物ファンタジーが混じっちゃった昔の日本。


燐はそう纏めると、どうせ行くなら魔法が使える西洋テイストが良かったなと密かに思った。


「私の…私が住んでた所?には魔物は居ませんし、動くのは人と動物と虫だけで他の生き物は多分居なくて」


燐の言葉に才蔵は今までは気になっていても警戒されると押さえていた事を訪ねる事にした。


「燐殿の世に数百年前、真田ゆきむらと名乗る者が居たと」


「あ、そっか。気になりますよね…えっと、さな…あ、使えないよね流石に」


燐は頷くと、いつもの癖でスマホを取り出し『真田幸村』と検索し、自分の行動に眉を下げスマホの電源を落とすとバッグにしまった。


「調べるの癖で。…えっと、いましたよ。赤い鹿の角付いてる甲冑着てて。長野県の人で、才蔵さん達と仲良いのかな?真田十勇士って人達と大阪で、西側として戦って。…私、本当にそれ位しか知らなくて…」


インターネットに接続されていませんと表示されていたスマホ画面。思い出すと泣きそうになった燐は、不安と涙を堪えようと両膝を強く抱えた。


「不安なるは…されど今後、何が有ろうと命を賭してお守りいたす所存に」


普段から獣以下と扱われるような身の上だった自分達でも体験した事ない恐怖。


それを死の恐怖など感じる事無く暮らしていた平穏な世からたった一人巻き込まれ来てしまった恐怖は計り知れないと才蔵は燐の心境を思い声を掛けた。


「え…や、命は大事にしましょう」


自分なんかに命なんてかけないでくれ。燐は優しい言葉をかける才蔵に、忍の修行に誑しとかもあるのかと顔を顰めた。


「ごはん、食べましょう。人間お腹が空くと心が弱るし、いっぱい食べましょう」


食料なら今のところ沢山ある。燐は立ち上がると、日持ちし無さそうな物を入れたクーラーバッグを探し、食えるだけ食ってやろうと手当たり次第に取り出し並べた。


「ここの獣とか、魔獣って匂いに反応したりしないんですか?」


温かいものが食べたいとカセットコンロを出しお湯を沸かしていた燐は、キャンプ場の説明を思い出し才蔵を見た。


「…この山程度ならば案ずる事無く」


「大丈夫って事ですか?」


「大丈夫です。心配なさらず」


不安気な燐の表情に才蔵は頷くと、燐は安心したように柔かく微笑む。才蔵はこの笑みをなるべく守ろうと新たに思った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ