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ぬばたまの夢 闇夜の忍~暫く全力のごっこ遊びかよって勘違いからはじまった異世界暮らしは、思ってたのと大分違う。(もふもふを除く)~  作者:


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79.弱っている時はちょろさが増す

才蔵は、何故一人で森に暮らす積りなのかと燐を見た。燐は今後の暮らしに必要な事等を確認しといた方が良いなと思うと、エンジンを切って外へ出た。


「その、何故…山で暮らそうと」


出て来た燐に才蔵は戸惑い気味に聞いた。燐は暫く才蔵の唯一出ている目を見た後で小さく息を吐いた。


「えっとですね?佐助から聞いたんですけど。此処って…この場所が才蔵さん達はどこか分かるんですよね?けど私は分からないんですよ。…で、2人は多分帰るんですよね?」


何て言ったら良いんだろう。2人は異世界人で、昔の日本っぽい所から来たんですよね?そう言えば頷くのだろうか?


そんなん頷かれたって、こっちが困るだけだわ


燐は取り敢えず今、必要な確認だけしようと切り替え話した。


才蔵は燐の話と胸の内を読むと、佐助が何処まで話したのかと気になりつつも燐の言葉に頷いた。


「やっぱり帰りますよね。知ってる場所だし。…で、私には分らないので取り敢えずこの辺で生活しなきゃなと思って。水と食べ物とか、さっきコンビニで調達したじゃないですか。だから、安全な寝る場所って事で、さっき寝てみてたんです」


才蔵は冷静に語る燐に眉を寄せると、その場に片膝をついた。急な才蔵の蹲踞(そんきょ)に燐は何事かと驚き才蔵を見下ろす。


「命を救っていただいた恩義、忘れ申すこと、決して候はじ。かかる所に住まわせ奉ることあるまじきことに候」


瀕死の自分達を女の身で危険を顧みず、手当てし食事を施し寝床を与えた恩人。その御仁を何故魔獣が出る山に捨て置くと思ったのだろうか。


才蔵は自分の行動がそうさせたと思うと不甲斐なさに拳を握る。何か良く分かんないけど、忍者っぽい座り方だよねと思いながら燐は才蔵の側に屈んだ。


「ええ、っと…才蔵さん、言っちゃいますけど難しいです、言ってる事が。で、良く分かりません。恩義って、そんな大層な事してないですし」


手当はしてやったが、その他何したっけと燐は思い浮かべた結果出て来たのは、強引に麦茶のペットボトルを口に突っ込む、猫まんまを食わせる。この2つ位だったと眉を下げる。


490円の微妙なフリースの提供と合わせても、恩義っていえる感じにならない。


困り顔で才蔵を見る燐と、同じく別の意味での困り顔で燐を見る才蔵。才蔵はなるべく燐の世で聞いた言葉を思い出しながら、再チャレンジを試みた。


「燐殿が先程申しておられた、水、食事、寝床。それら全て、施していただいた恩義有らば此れより先、お守りいたす故」


「え…や、えっと、つまり才蔵さんが守ってくれるって事で、良いんですかね?」


燐は実は今まで物凄く考えて話してくれていたんだと確信し、ちょっと惚れそうと内心思う。


が、今そういうときめく感じは求めてない。燐は自分でツッコミを入れると、解釈間違って無いよねと不安気に才蔵を見上げた。


「お守りします。故に燐殿は寝床等は気にせず、佐助が戻り次第、共に主の住まう領地へお越しいただきたいのです」


頷いた才蔵は、これからどうするのか燐の身の振り方を話す。


ヤバい惚れそう


才蔵の優しい対応にイケオジから鞍替え出来るか?と思ったが、弟と同じか若干下位の若者は範囲外だな。と冷静を取り戻した。


「人間の国が沢山あるんですね?で、忍が居て、侍が居て、殿が居るんですよね」


ここは、魔物が居ます。魔物とは人の言葉を理解している人よりも強い生き物。それから普通に獣も居ます。そして未だ会っていないけど人間も住んでいるらしいです。何それ。和風忍なのに?


「その通りに」


才蔵は燐に言われた通り、紐を木に括りつけながら頷いた。日も暮れて来た事もあり、比較的安全と言われた燐は才蔵に手伝ってもらいながらテントを張っていた。


何となく佐助よりは信頼出来る感じがする才蔵にも聞いてみたが、全く同じ事を返される。


「人間の国、という物もありますが多くは人間…人族と獣族が主に暮らしております。侍以外にも商人、農民等、その国によって多少違いは有るものの大抵は国主が居り、その統治下にて暮らしております」


人族。そして凄く気になる獣族て事は獣人さん!アレルギー持ちの燐は獣族にも反応しちゃうのかなと気になりつつ、先に『殿』の出で立ちを確認することにした。


「えっと、じゃあ人げ、人族の殿は、こんな感じですか?」


燐はスマホで『しのびのさと』の料金等を調べた際の貸衣装のスクショを才蔵に見せた。殿フル装備。


もし才蔵が頷けば、ここは戦国、江戸時代寄り。だとすれば生活スタイルも何となくだが予想出来る。だが、確定してしまうとせっかく異世界なのに侍。


獣人さんがいる異世界ってドラゴンとかスライムとか、モフモフとかちょっと期待してたのになぁ


丁髷の鬘に付け髭、着物、刀、足袋。これで頷かれたら西洋チックな異世界は諦めるしかないと、燐は才蔵の答えを待った。

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