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ぬばたまの夢 闇夜の忍~暫く全力のごっこ遊びかよって勘違いからはじまった異世界暮らしは、思ってたのと大分違う。(もふもふを除く)~  作者:


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77.吟味するコンビニ泥棒

これはフィクションです。例え無人でも犯罪行為です。

才蔵は周辺を注意深く見て回った後、静かにコンビニに下りた。此方にも何の気配も無い。


微かに残る術の後に、この建物の中の者が必要だったのかと思うと静かにコンビニの中に入った。


荒された様に乱雑に物が散らばっている床を、才蔵は器用に避けながら進んだ。奥の扉を開けると、微かだが人の気配が残っていた。


才蔵は小さく鼻を鳴らす。血の気配は無い。此処に居た者は浮世人なのかと一人思う。


浮世人。定まらない空間から突如現れた者をそう呼んでいた。だが、実際はこの様に何者かが術で引き寄せていたのかと才蔵は眉を寄せる。


兎に角、誰かが此処に来る前に必要な物を運んだほうが良い。才蔵は目元以外を近くにあった長めの布で巻き覆うと車に戻る事にした。


「あ、おかえりなさい」


才蔵の姿が窓の外に見えると燐はスライドドアを開け、声を掛けた。燐の手前にはぐったりと身を沈めている佐助が居る。


燐の変わらない対応に才蔵は内心首を傾げるも先に用事を済ませようと口を開く。


「今より必要な物を取り、此処を離れたく。宜しいでしょうか?」


「必要な物って、コンビニ強盗するって事ですか?」


「強盗…」


言葉に詰まり首を傾げる才蔵。佐助はゆっくりと身を起こすと燐の方を向いた。


「強奪するんじゃなくて、持ってくだけ。此処に置いてたって誰にも買われず駄目になっちまうんだから」


佐助の言葉に、それでも泥棒じゃ?と燐は迷い顔を顰めた。


「あー、うー…取り敢えずさ?佐助の話を信じてないって事じゃないんだけど、一旦降りて状況確認してみても良いかな?」


この大きな箱を制御していたのだ、疲労があるのは仕方がないのだろうと才蔵は佐助を見た。佐助はよろよろと身を起こすと、燐より先に車を出た。


「あ、佐助は車に居ても良いんだけど」


「心配だし、俺も欲しいものがあるかもしれないからさ?」


燐は一応、と車に鍵をかけコンビニに向かった。歩いている地面は、森なんかによくある良さげな腐葉土。燐は周りを見回した。


「森、だね?」


「うん。森」


コンビニは国道から少し逸れた所にあった。けど地面は当たり前だがこんな土ではない。燐は大きく息を吸った。


「如何されましたか?」


急に立ち止まり深呼吸を繰り返す燐に、才蔵は振り返ると言葉をかけた。燐はじっと才蔵を見ると、再び息を吐く。


「うん。なんか色々あるんだけど、時間が無いんですよね?じゃ、さっさと奪って逃げましょう」


何故森?てか一番は、何故そんなに落ち着いてんの?思う所は色々あるがと燐は再び歩き出した。


「だからさ、盗人じゃないってば」


今は考えないで、出来るだけ必要な物を確保しよう。燐は一旦車に戻ると告げ、木々の間を擦らないよう細心の注意を払いながら、コンビニの前に横付けし、フラットシートにした。


「よし、野郎共積めるだけ積み込むぞー、おー」


コンビニの前で決意表明をした燐は、海賊かと自分でツッコミを入れながら割れたガラスを踏まないよう店内へ入った。


レジにあった袋を佐助と才蔵に渡す。そして自分に必要そうな物を考えながら袋に入れて行った。


「一旦車に入れて来る」


燐ちゃんの行動は的確だった。泣くでも喚くでも無く、棚から必要な物を取り分け、袋がいっぱいになると車へ戻るを繰り返す。


「今更気付いちゃったんだけど」


何往復か終えた燐は、大分少なくなった棚を見ながら今更かと思うも言葉を続けようと口を開いた。


「これさ?もしさっきの人達が戻って来た時に、ごっそり商品無くなってたら怪しまれない?」


本当に今更なんだけど。そう思いながらも佐助と才蔵を見ると、2人は既に考えていたのか問題ないと小さく首を振った。


「ここら辺にゃ獣が多く住んでるし、数日過ぎりゃ黒いもんに呑まれて消えるから」


佐助の言葉に燐は体を強張らせた。よほど怖かったのだろうと才蔵は燐の様子に眉を下げた。同じく言わなきゃ良かったと佐助も眉を下げる。


「よし!じゃあ、罪悪感なく強奪再開っ」


燐は大きく両手をパンッと合わせると切り替えた様に再び買い物袋をいっぱいにしていく。


佐助は店の奥に行き、燐が飲んでいた容器の模様を見付けると箱ごと車に積んだ。才蔵は見覚えのある用紙を集める。


「あ…詰め過ぎだよ」


積みこめー、と威勢よく言ったが。燐は後部座席がぱんっぱんになっている車に眉を下げた。


いつの間にこんなに積み込んだんだろうと満足そうな佐助と、燐の言葉に困った様子の才蔵を振り返る。


「ちょっと降ろしましょう、これじゃ私以外乗れないよ」


燐の言葉を無視して、助手席にも箱を積み込んだ佐助は心配ないという様に燐を見た。


「俺等が何者か、忘れちまったの?燐ちゃん」


「この箱に頼らずとも己の足で参ります故」


意味深な佐助の発言に、走って行くような言い方の才蔵。燐は眉を下げるも、人間出来る事と出来ない事があるんだよと内心思った。

当り前ですが強奪は本物の海賊か山賊の特権です。法の下に生きる人々にとっては犯罪です。

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