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ぬばたまの夢 闇夜の忍~暫く全力のごっこ遊びかよって勘違いからはじまった異世界暮らしは、思ってたのと大分違う。(もふもふを除く)~  作者:


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76.なんか、ある?

何が起きているのか。以前暮らしていた山が呑まれた時、あの山に住まう者達はこの様な不気味さを味わったのか、と才蔵は今は暗闇に包まれている車外を見て思った。


≪あ、才蔵確認出来る?≫


≪戻った、のか?≫


車外は暗いままだが二人は異変を感じ取った。特に闇を扱う佐助は此処が自分達の常世だと感覚的に分かる。才蔵に問えば困惑しつつも同じ感じを受けたと返して来た。


≪こりゃ、今は出てかねぇ方が良いみたい≫


自分の頭の随分と上の方に大勢の気配を感じた佐助は、浮上しているような感覚に何の意図があるのかと思うと術で自分達を固定した。


≪このまま潜ると?≫


≪まぁそういう事≫


隣にあったコンビニの建物だけが浮上する。佐助と才蔵はじっとその光景を見ていた。


≪燐殿は≫


佐助の腕の中で丸くなっている背を見た才蔵は、無事と思いつつも先程の取り乱し様を思い出すと佐助に問い掛けた。


「あ、のさ?ちょっと変な事になっちまってんだけど、見る?」


この状況を見せても良いものかと思うも、隠し続けるのも難しいと佐助は燐に委ねるように問い掛けた。緩んだ佐助の腕。燐は小さく頷くと恐る恐る目を開ける。


「っ!ん゛ー…」


「ごめん、けど、…ごめんね燐ちゃん。叫ばないでいられそう?」


目を見開いた燐の口を佐助は素早く抑えた。暫くすると落ち着いたのか燐は口を覆われたまま佐助を見上げ頷いた。


佐助は静かに口元から手を離すと再び燐に「ごめん」と詫びた。


「…ここ、何?黒い、え?えっと…」


不安気に口を開いた燐は真っ黒な周りに眉を下げながら居るであろう佐助と、その奥に座る才蔵の方を見た。途中で才蔵が上の方を見ると、佐助が燐の言葉を遮る様に燐を抱きとめる。


「ちょっとだけ、我慢しといてくれる?後で何度でも謝るからさ。ごめんね?燐ちゃん」


佐助の胸元に押し付けられた燐は、2人の様子に口を閉じるとなるべく動かない様にした方が良いのかなと佐助に身を委ねていた。


夢?じゃないよね?何が起こってるんだろ?ってかなんでこの2人はこんな冷静なの?


燐は良く分からない真っ暗闇に閉じ込められているのに、平然とした様子の才蔵達の方をじっと見ていた。


暗い車内で目が慣れて来ると、燐は才蔵の姿の異変に訝しげな顔をし、じっと目を凝らす。


幻覚?


佐助の腕越しに見える才蔵は、暗闇に何か見えるのか1点を凝視している。


≪才蔵、諦めてよ。アンタに釘付けで燐ちゃん余計な事考えらんないみたいだし≫


忍が燐の視線に気付かない訳がない。落ち着かなそうに内心そわそわしている才蔵に、佐助は諦めろと苦笑しながら言った。


≪しかし≫


恐怖が薄くなり好奇心が強く読み取れる燐の胸の内に才蔵は居心地悪そうな気を漏らす。


≪大丈夫だって。そんな嫌なら後で見た事消しちまえばいーだろ?≫


≪だが≫


恩人に術をかけるのは気が引けると才蔵は小さく気を洩らす。


こんな緊迫した状況でも普段と変わらない遣り取りが出来てんのは、やっぱ燐ちゃんのお陰かも


佐助は自分の腕に抱かれている事も忘れているかのように、恐怖も困惑も忘れ只管才蔵を凝視している燐に思わず笑みが零れた。


暫くすると上の気配が動く。忍達はそれぞれに気配を探る。無人になりもう良いかと顔を見合せ、佐助は闇から車をゆっくりと浮上させた。


≪見て参る≫


余程姿を確認されるのが嫌だったのか、才蔵は地面が見えると素早く姿を消した。驚く燐の胸の内に佐助は思わず声を洩らして小さく笑う。


「え?ちょ、消えたんだけど才蔵さんっ!鍵開けてないよね?!」


燐は、バッと佐助から離れるように佐助の胸を両手で押し、佐助に問い掛けた。佐助はゆっくりと後部座席に背を付けると沈む様に体を預ける。


「あっ、ごめん。押すの強かった?」


ぐったりしている佐助を見た燐は不安気に問い掛ける。佐助は燐の方を見ると、相変わらず自分を心配する様子に苦笑した。


「大丈夫。ちょっと、疲れただけ…」


具合の悪そうな佐助を心配そうに見た燐は、自分が抱き着いていたから?と思うと申し訳なさそうに眉を下げた。


「違うって。アンタのせいじゃなくて…じゃぁーあ、もう一回抱き着いてみるっての、どう?」


ヘラリと笑う佐助に、あ、コイツは大丈夫だ。と燐は冷ややかな目を向けた。佐助はゆっくりと身を起こし座り直すと、窓の方へ視線を移す。


「あれ?コンビニの駐車場に居た、よね?」


外の景色に燐は不安気に窓に張り付きながら呟いた。遠くにコンビニは見える。だが遠い。そして何故か自分の車は木々の間に停まっていた。


「んーとさ。さっき、才蔵が消えただろ?」


「あ!そうだったっ…え、人って消える?」


混乱している様な燐。佐助は連れて来てしまったのなら説明した方が良いと思うと重い体を起こし、燐に向けた。


「うん、それなんだけどさ」


怪訝な顔を向ける燐。佐助は何から話すかと迷い、先に才蔵の術からかと、自分達の常世についてを話す事にした。

誤字報告 ありがとうございますm(__)m

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