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ぬばたまの夢 闇夜の忍~暫く全力のごっこ遊びかよって勘違いからはじまった異世界暮らしは、思ってたのと大分違う。(もふもふを除く)~  作者:


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75.黒い手

燐は今、今後どうしようかと迷っていた。そして一生懸命考えていた。佐助達を連れ車内に来たが、何も起こらない。小さい揺れ一つ起こらない。


だがビビりな燐は、今コンビニに戻って買い物中に地震が来たら。そして棚が倒れて来たり、ガラスが割れたりしたら。そう思うと出るタイミングが分からない。このままでも気まずいと内心頭を抱えていた。


「何かごめんね?何にも起こんなかったみたい…」


燐は2人を振り向きながら謝った。だが佐助と才蔵はまだ周りを警戒するように外を見続けている。


もしや、こいつ等もビビりか?と燐は仲間が出来たようで、ちょっと嬉しくなった。


「こういう事って、よく起こるの?」


佐助は窓の外を見ながら話す。多分自分にだろうなと燐は2人を見るため大きく振り返った。


「こっちの方って事?調べてみるよ。んー、最近地震観測無いみたいだし、他の場所でも地震速報無いから…」


気のせいで車内に5分以上いさせてしまってすみません。燐は居た堪れない気持ちで検索結果を伝えた。


「買い物、行くよね」


何も無いなら買う買わないに関わらず、一旦籠の中身をどうにかした方が良いと思うと、燐は問い掛けながら運転席のドアを開けた。2人は燐が行くならと同意し車外に出る。


≪やっぱり何か、気持ち悪ぃ≫


佐助は微妙な空気の変化に顔を顰め周りを見回した。続いて車外に出た才蔵も顔を顰める。


≪長、やはり此処を離れた方が良い≫「車に戻ろうと思います」


才蔵はじっと山の方を見ると燐を連れに行った佐助に告げ、燐に声をかける。振り返った燐は、まだ具合悪いのかな?と頷き車のロックを解除した。


「燐ちゃん、やっぱりなんかおかしい気がするから?!」


「ヒッ!なっ?!」


佐助は燐の後を追うと燐の背に声を掛ける。と、コンビニの影が膨れ上がり風景を飲み込む様に空へと大きく突き上がった。


「燐ちゃんっ!」


短い悲鳴を上げ固まる燐の背に強引に腕を伸ばした佐助は、燐を思い切り引っ張るとそのまま燐を横抱きに抱え才蔵の元へと駆けた。


スライドドアから上半身を出し腕を伸ばす才蔵。佐助は抱えた燐をチラと見ると、才蔵へと燐を託した。


片手で燐を抱き受けた才蔵は、素早く燐を奥へと座らせると佐助の救助と再び腕を伸ばす。


「長っ!」


黒い影は人の手の様な波になり佐助を掴もうと伸びる。才蔵は佐助の腕を掴むと思いきり車内へ引っ張った。


「っと、あっぶねぇ…何あれ」


佐助が車内に入ると、才蔵は素早くスライドドアを閉める。少し遅れて手の形の波は車の窓にべしゃりと張り付き、どろどろと下に落ちて行った。


「ドアッ!ドア閉めなきゃっ何あれ?!怖いんだけどっ!!」


燐は半狂乱で叫ぶと急いで鍵をかける。燐の様子に未知の物なのだと分かると佐助と才蔵は互いに顔を見合わせた。


≪森を呑んだ瘴気≫


≪物凄く似てるけど、今までそんなん感じた事なんざ無かったよなぁ?≫


以前見た事のある光景に酷似していると思うも、此処の世では今まで感じた事も無い。佐助は一先ず隣で小さく震え胸の前で鍵を握り締めている燐の対処をしようと座り直した。


「佐助、血…出てる」


燐は佐助の首筋に見えた赤に戸惑いながらティッシュを当てた。コンビニの角曲がろうとして、人にぶつかりそうな感じで危ないと思って。それから佐助が叫んで


「庇ってくれて、ありがとう。ごめんね、血」


きっと佐助は自分の代わりに、あの黒い何かにされたのかと思うと燐は恐怖と申し訳なさで鼻の奥が痛む。だが、ここで泣いたら色々脆くなりそうだと必死に泣くまいと顔を顰め堪えた。


「血?あー、ありがと。もう止まったろ?全然痛くないし、平気。アンタは?怪我ない?」


佐助の問いに、今優しさを出されたら泣きそうになるからやめて!燐はギュッと口を引き結ぶ。


「そんな顔しないでよ。ちゃんと守れたんならそんで良いの」


胸の内は申し訳なさでいっぱいになってる目の前の可愛い人は、忍の軽い怪我にも心を痛めてる。それが分かると擽ったくて、あわが漂う。


泪溜めちゃって可愛いねぇ。小さく震える肩、不安気に揺れる瞳。これってさ?今上手く対処すりゃ挽回出来るんじゃねえの?


佐助は外の不穏さよりも隣の燐ちゃんと、燐との距離を詰めた。と、ぐらり車が傾く。


「なっ?!何?!」


地盤沈下?そんな事ってある?!


燐は再びパニックで外を見ようと顔を上げるが、佐助は其れを阻止するかのようにギュッと燐を腕の中に収めた。


「なっ!?」


≪長如何する≫


うねる黒の中に目の前の建物が傾き沈んでいた。この場所から移動した方が良かったのかと思うも、呑まれてはもう遅い。


自分を見る才蔵に小さく首を振った佐助は、腕の中の人だけでも守ろうと強く抱えた。


「大丈夫、必ずお守りするから」


初めて聞く佐助の低めの声に、燐は外は見ない方が良いんだと判断するとぎゅっと目を閉じ佐助の胸元に頭を付けるように体を丸め、何にか分からないが兎に角衝撃に備えた。

ここまで読み進めていただき、ありがとうございます。ブックマーク、評価ありがとうございます。


戦国時代のふりをした異世界へようこそ。


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