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ぬばたまの夢 闇夜の忍~暫く全力のごっこ遊びかよって勘違いからはじまった異世界暮らしは、思ってたのと大分違う。(もふもふを除く)~  作者:


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70.声が出るのは神経作用

朝方寒くて目が覚めた。モソモソと寝袋の中でスマホを探し時間を確認する。朝5時前。早過ぎる。家では予定が無ければ絶対起きない時間に燐は顔を顰めた。


「昨日早く寝たからかな…お風呂行こう」


寝袋の中から目視で荷物を確認した燐は、寒さに震えながら上着を羽織り貴重品と風呂道具を手にテントを出た。


「さっむ!…こんな寒暖差で生きてるって凄いよ」


寒い。薄っすらと明るい外は夜明け前の独特の青い色合いで、燐は寒さに身を縮めながらも木々を見上げた。


「はぁ─…温泉って、何で声出ちゃうんだろ」


他に誰か来るかもと考える必要もない貸し切り状態に、湯船に伸ばした手足を浮かせ気味に燐は呟いた。


徐々に青から色付いて行く景色を見ながら燐は湯の中で座ると両手を湯から出し、大きく伸びる。


「んーっ、満喫したなぁ」


燐は空がよく見える様にと湯船の中を移動する。


「今回色々濃かったな。あ、お月様、ありがとうございまーす」


あの月食で、何か面白い事と願ったから忍ごっこの2人出会って、普段なら食べれない高級肉も食べれた。


最後は無事テント泊も出来たしと燐は白い月に向かって何となく礼を述べた。


「これからどうしよっかなー」


取り敢えず、日本海側か太平洋側か。どちらかを決めて遠回りして帰ろうと思うと、約束した地図を見せる事を思い出す。


「…あの2人、忍ごっこしに行くのかな」


風呂から出て着替え終えた燐は、女湯のドアを閉めながら才蔵達のテントを見て呟いた。


まぁあんまりやり過ぎたら、施設の人が注意するだろうし


美味しいお肉を食べさせて貰った分、地図だけはちゃんと見せてあげようと燐は忘れないようスマホのリマインダー機能に登録しておいた。


「さて。撤収するか」


朝ご飯代わりにカップ春雨を食べ、ついでに沸かした湯でコーヒーを淹れた燐は重い腰を上げる。


完全撤収してキャンプ場から受け取ったプレートを12時までに返す。燐の今日の目的は取り敢えずそれだけだった。


「ちょっと早めに撤収だけして、最後にお風呂入って帰ろ」


燐は一人呟いて空のマグカップを近くの切り株に置くとテントの中身を車へ移動する。テントを畳み最後にグラウンドシートを反対側にして干していると佐助がやって来た。


「おはよ」


「おはよー。…何にもないね」


燐ちゃんが暮らしていた場所は、何も無くなっていて驚いた。あの布の小屋も小さく収納出来るのだろうと佐助は残っていた敷物を見る。


「うん、今日帰るからね。時間ギリギリで焦るより余裕あった方が良いと思って」


一人で時間ギリギリの撤収は予想外の事が出て来るときついと燐はグラウンドシートをバサバサ音を立てて振り水滴を落とす。


「それってさ、てんとの下にあった奴?」


「そうだよ。これ無いとテントの下傷ついたり、これ一枚で結構寒さ変わるんだよ」


湿気も冷気も緩和されると説明しながら燐は、水滴を落とした場所から移動して干す。あの広さの建物が跡形も無く消え、あの箱の中に納まるのかと佐助は車を見た。


「あ、地図忘れてないよ。今が良い?後で?」


車の方を見ている佐助に、ちゃんと見せてから帰ると燐は苦笑する。


「んー、燐ちゃんの予定に合わせるよ?」


「そっちの支度終わったの?今日帰るんだよね?」


確か昨日、自分達も帰ると言っていたような気がすると燐は定かでは無い記憶を確かめるように問い掛けた。


「うん。まぁ。此処に居ても仕方ないからね」


そう言えばこの2人のスマホってどうなったんだろう。燐はちょっと考えたが敢えて触れない事にした。


「才蔵さんが居るなら今見る?他に調べたいもの出て来るかもだし」


ここに居る間だけだし、一日一善。と余裕のある燐は広い心で佐助に聞いた。


「じゃ呼んで来るからお願いして良い?」


佐助はそういうとテントの方へ戻って行く。燐はその間にグラウンドシートを畳んで車に乗せた。


「お待たせ…って、何してるの?」


土だけが残った場所で、燐ちゃんは屈んで何かをしている。何だろうと近付くと、色は違うが肉を挟むとんぐってので何か拾って袋に入れている。


「あ、これ?テント張ったサイトのごみ拾いだよ。山は綺麗に。立つ鳥跡を濁さずって言うじゃん」


「これから帰るんだよね?」


此れから帰るってのに掃除をしている燐ちゃんは、きっと物凄くお人好しなんだと思った。


「うん。あ、途中まで乗ってく?電車でしょ?駅までなら乗せてくよ?」


そう言えば下の遊歩道の方に熊出たとか言ってたし。燐は管理人に言われた言葉を思い出しながら佐助に告げた。


「良いの?」


「うん。お土産買いたいから駅前の方まで行こうと思ってたし」


ほんと、燐ちゃんはお人好し。それか戦の無い此処の世は、自分以外に気を配る余裕があるのかもしれない


「そっか。じゃ、お願いします。って、ほんとにいーの?」


一遍乗ってみたかったしと佐助が軽く頭を下げると、燐は笑顔で頷いた。

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