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ぬばたまの夢 闇夜の忍~暫く全力のごっこ遊びかよって勘違いからはじまった異世界暮らしは、思ってたのと大分違う。(もふもふを除く)~  作者:


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55/225

55.ちょっと太い奴は、こうやって食べた方が美味しいと思う。

あんぐりと口を開けている燐に笑みを零す佐助。才蔵はやりすぎだと顔を顰めた。


「んで、あっちの木も結び直す?」


「え、うん」


佐助の確認する様な問い掛けに頷くと、佐助はひょいと枝に屈んで軽々と紐の先の木まで飛び移った。


「凄っ、この距離飛び移るって…猿?」


どう考えても無理な距離だと燐は佐助の元居た場所と上を何度も見返し呟いた。


「酷っ!紐張ってあげようってのに猿なんて言うのね。ま、いーや。はい、おしまい」


燐の呟きに佐助は声を上げると燐の側へ身軽に降り立つ。


「ごめんつい口から出ちゃった。ありがとね」


素直に謝った燐に佐助は苦笑しながら燐の手にあったタオルをひょいと取ると、紐に掛ける。


「あ、私のだし自分でやるから」


慌てて近寄って来た燐は、自分でとタオルを干しながら知らないだけで、実は結構有名な体操選手か何かなのかな?と佐助を見た。


「あのさ、佐助って何者?」


純粋に不思議に思って訪ねて来た姫様の問い掛けに、どう答えて良いか迷った。


「何者って言われたら…忍者(しのびもの)?」


此処に忍は居ない。多分だけど。こんな事言ったって困るだろうけど。嘘を考えている間に真実が漏れた。


「しのびものって」


こんな時まで忍に拘るのかと燐は徹底した忍ごっこに思わず噴き出した。


「あのさ、燐ちゃん」


チラと才蔵を見た佐助は戸惑い気味に燐の名を呼んだ。佐助が何をしようとしているのか理解した才蔵は、怪訝な顔を向ける。


「何?」


名を呼ばれ振り向くも何も言わずに自分を見ている佐助に燐は眉を寄せると何だろうと首を傾げた。


「燐殿、炭の燃え具合を見た方が良いかと」


別方向から掛かった声に才蔵の方を見た燐は、コンロから離す様に素手で網を持っている才蔵を見て熱くないのかと思いつつ駆けた。


「うわっごめんなさい才蔵さん、手大丈夫ですか?」


此方(こちら)は熱くは無い故、大丈夫です」


炭火の側に来た燐は才蔵の持つ網の上を確認した後で、炭を均等にならした。


「もう置いてもらって大丈夫です、ありがとうございました。で、これお礼のソーセージです」


100均で棒売ってたのに買い忘れたと、割り箸を割りチョリソーに刺すと、燐はもう片方の割り箸も刺し佐助を呼んだ。


「これ!お礼のチョリソー。お高いやつだから絶対美味しいよ!ちょっと焦げ気味だけど」


呼ばれ近付いて来た佐助に手渡す。受け取った佐助は自分の分なのか網の上で箸を大胆に突き刺す燐の様子に苦笑した。


「ねぇ何でそんな刺し方なの?」


自分の分だしと真ん中に箸を突き刺したが、安定性が悪い。そこでちょっと隙間を開けて2本目を刺してみた。


変なお盆の胡瓜の奴みたい…ま、ちょっと片手で持ち辛いけどいっか


そう密かに思っていたのに。見られていると思わなかった燐は驚いて赤を見た。


「だって、自分のだし。そう刺すと食べ続けてくと棒刺さりそうじゃない?」


見た目の問題で自分の刺し方の方が安全と良く分からない言い訳を述べ、口に運ぶ。


「美味しい!ちょっと苦い、かな?」


ちょっと焦げてる。せっかく高価だったのにと思いながら誤魔化す様に酒を煽ると苦みが意外と美味しく感じる。


「うん、ビールには合う。あ、ここの飲み物もどーぞー」


美味しいと頬を染め、苦いと顔を顰める。くるくる変わる表情が幼い時の我が主の様でこっちも顔が緩んじまう。


「これ、辛っ」


渡された細長い物体。まぁ食えるんだろうと先を齧った佐助は顔を顰めた。


「あ!それ当たりだよ。おめでとう、はいビール」


1本だけ辛いのが混ざっていたと燐は楽しそうに告げ缶ビールを渡す。


「ね、ね、それ、どの位辛いの?泣きそうレベル?」


1人だと色々食べれて良いかと思って買ったけど、皆で食べるとロシアンルーレットみたいになるんだと密かに楽しくなった。


「んー、辛いけど旨いよ?びーるにも合ってる気がするし」


何か期待の籠った姫様の表情に、もう一口食べた。弾力があって噛み切ると口に油と辛味が広がる。


「いーなー。そう言われると当たっても良かったかな」


楽し気に笑う姫様はどの位辛いのか気になってるみたい


「二人は同じ味?俺だけ当たりなの?これ」


佐助が違うのか問えば燐は首を傾げてゴミからパッケージ袋を取り良く読んでみた。


「才蔵さんのがハーブで、私のは...ガーリックだ。あ、ちょっと食べる?」


ダラダラ飲み続けていた燐は購入時の拘りも忘れる酔っぱらいになっていた。


「え?あ、…いーの?」


事も無げに聞いて来る姫様に声が上ずった。


「ん。ちょっと待ってね?はい」


姫様は頷くと自分の皿に食い掛けを置いて、小さな刀子みたいなもんで切り分けて寄越した。


「あ、うん。じゃ此れもお願いして良い?」


アンタの食いかけでも良かったんだけど


今度から赤も佐助って呼ぼう。赤の提案で全員に分け、自分だけニンニク臭くならずに済んだと燐は密かに感謝した。

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