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ぬばたまの夢 闇夜の忍~暫く全力のごっこ遊びかよって勘違いからはじまった異世界暮らしは、思ってたのと大分違う。(もふもふを除く)~  作者:


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47.夜間保管場は車内

一人残った佐助は、キャンプチェアに座ったまま空を見上げた。不安が周りの暗闇と同じく胸の内に広がって行く。


「先ずは居の確保、か」


適当に忍び込むのは難しい。ならば長屋の様な物を見付け、此処と同じく契約をすれば良い。だが、それを見付ける手段が今は無いと眉を下げる。


「どーしたもんかね」


いや、あるにはある。だが気乗りがしないと溜息を洩らした。


「片付けお疲れ様でした、ありがとね」


近付く人影に気が付いてはいたが、何か仕掛けるような気配も無いと佐助は空を見ていた。


「...」


ぼんやりと夜空を見上げるように座る佐助に声を掛けた燐は動かない様子に、寝てるのかな?と近付く。


「ここで寝ると風邪ひくよー」


何となく声を掛けながら側に寄ると、一瞬こっちを見るように動いた頭。寝てないのかと赤の側に置いてあったごみ袋を取ろうと屈む。


動かない赤。酔ってんのかな?


そういえば、こいつ一気に酒を飲んで具合が悪くなったと言っていた。と思い出す。


「なっ?!」


本来ならいつもの様に姫様を誑かすのが手っ取り早い。なのにそんな気にならない。そんな事を考えていると、忍の間合いに躊躇なく突っ込んで来た。


「え、あ、ごめん」


心配そうな気配と共に額に柔かいもんが触れる。近付く花の匂いと熱。驚きを隠せなかった俺に謝り熱は遠ざかった。


「倦怠感?ありそうだったから熱とかあるのかなって」


何となくぼーっとしてるような赤。急アル症状でも出てるのかと思い赤の額に手を当てた。


「触る前に言えば良かったね、ごめんね?」


赤は大きく目を見開き声を上げ何故かそのまま固まる。そんな嫌がらなくても良くないと顔を顰めるも、急にされたら嫌かと思うと謝った。


「大丈夫なの?」


調子が悪いのか、仄かに赤い頬。飲ませた手前心配になり問い掛けると、赤はフイと視線を外した。返事はしないが意識があるなら大丈夫だろう。


さっき男湯のドアの音がしたから黒が湯に居るなら、帰って来て発見するだろうし。いっか。


照明が完全に消えて暗いし早く戻ろうと燐は自分の椅子と、ゴミ袋を持った。


「具合悪いんなら無理しないで寝なね?じゃ、おやすみ」


真っ直ぐに向けられた自分を心配する瞳に他意は無い。掛けられた言葉にあわが広がる。


「あ、のさ」

 

暫くの間、自分だけを心配する瞳を見続ける事に耐えられなくて目を逸らすも、相変わらず心配したような声を掛けて来る。


「それ、持ってくの?置いてていーのに」


「え?あゴミ?だって夜間に荒されたら怖いじゃん。野生の動物って鼻が良いからゴミの匂いで来るらしいよ」


遠くなる背に声を掛けると、振り向いた姫様は立ち止まり持って行く理由を教えてくれた。


「ならそれ持ってるアンタの所に来ちまうだろ?いーの?」


「え、やだよ。嫌に決まってるけど、テントの中より車の中に置いた方が臭い漏れないらしいから」


何て事を言うんだ赤め。チラッと思ったけど考えない様にしてたのに!


夜間ゴミ捨て場は鍵が閉まっている。勿論同じ理由で。だったら車の気密性を信じるしかないと座ってる赤に言い返した。


「そんなら、そのごみの臭いと一緒に寝んの?」


「ぅ゛、だって仕方なくない?熊怖いし、1人で何かあったら怖いし、テント布だし!」


再びの赤の言葉に、それも考えない様にしてたのに!と顔を顰める。


「このテントなら一人位寝れると思うけど?」


赤の提案に、実はちょっと考えたと思うも、お前が居るから安全性に問題があると顰めた顔のまま赤を見た。何となく伝わったのか赤は眉を下げると小さく息を吐いた。


「それ持ってってくれる様な御仁に無体な事なんざしないってば」


物凄く警戒してる様子の姫様。ま、警戒されるような事したからなんだけどさ。当然の様に忍を庇って自ら犠牲になるなんておかしな事なのに、嬉しいが浮かぶ


「…ちょっと何言ってるか分かんないけど、どういう事?」


両手を小さく上げて降参するかのようなポーズの赤の言葉に、車持ってるの私だけだし当然だよねと思い首を傾げる。


「俺等の事なんざ捨て置いて良いのに、野生動物の危険性っての考えて、我慢して臭い中で寝ようとしてくれてる天女みたいな御仁に安易に触れたりしないって事」


この瞬間にもごみの臭いでもしかしたら野生動物が来るかもと思うと、言い合いしてる場合じゃないと椅子を持ち直した。


「取り敢えず、動物に気付かれる前にごみを車に入れようと思う」


一旦ごみと一緒に車内に居て問題なければそのまま寝ようと赤に言うと、赤は重たい筈のクーラーボックスをひょいと持ち上げ歩いて来た。


「んじゃ、此れも持ってった方が良いよね?一緒に行くよ」


燐は驚きながらも有難いと思うと、一緒に夜道を歩き車へ向かった。

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