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ぬばたまの夢 闇夜の忍~暫く全力のごっこ遊びかよって勘違いからはじまった異世界暮らしは、思ってたのと大分違う。(もふもふを除く)~  作者:


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46.忍者

あのさぁ。何度も言うけど俺様アンタの上役ね?俺に様着ける位、偉いの。なのに何なの?


嫌そうな顔でこっちを見てる才蔵を見返せば、深く息を洩らした後で小さく首を振る。


「長が一代限りの名とすらば、此処は四百年後という事になる」


あ、俺様の名が代々継がれて行くってのはアンタの頭から排除されたって事ね。ま、俺も残したいもんなんざ無いからいーんだけど


「四百年ねぇ…」


自分達が生きていた、その何百年後の世。随分ととんでもない所に来ちまったと思えど、一つだけ喜びたい事柄が思い浮かぶとチラと才蔵を見た。


「その帳面にでっかく書いといてよ。我が主、何百年後の世でも広く、日の本一の兵と謳われ続けるってさ」

  

『んー、どちらって、考えた事無かったけど地元だから片倉軍かな?真田軍、赤い事と兜に鹿の角っぽいの生えてる以外分かんないし』


確か、姫様はそんな事を言ってた。如何やら姫様の住む場所は、おっかない竜の地らしい


燐の言葉を思い出した佐助は自分達とは敵対する地なのかと眉を下げた。


敵方の地でも伝承されてるって物凄く誉まれな事じゃない?何を成したかは分からないってのはあれだけど、日の本一の兵なんて、主が聞いたら物凄く喜びそう


「既に(したた)め済みに」


真顔で答えた才蔵に苦笑する。いやコイツも相当主に惚れこんでる、てか真田の忍はみんなそうだったわと思い出した。


「って、何だって俺等は此処に居るんだろ。どうせなら、我が主に見せたかったよなぁ」


主の理想通りの太平の世で、子は皆憂う事無く親と共に過ごしている。


「同じく。主ならば多くの事を得んとするであろうな」


此処の世を見れば我らが主は大願成就と喜んだろうが、志も無い忍が来た所でと佐助は眉を下げれば才蔵も同意する。


「ま、折角此処に来たんだ。我が主に手土産の二つ三つ仕入れますかね」


此処が本当に俺等の居た世の数百年後だとすりゃ、敗戦理由や流行る病の対処法だって調べりゃ分かるだろうと才蔵を見れば無言で頷く。


「先ず一つは陸奥の黒脛巾。確か調べたって言ってたよな?」


安易に手に入れるなら、熊撃ちの男にしたように胸の内を覗いてそれらしい人物を装って仲間の振りをすれば良いだけ


「もう少し何か知ってるんだろうけど」


近しいと暗示を掛けて数回肌を重ねれば、それ以上の暗示は必要なくなる


「...此処に居りゃ戻れんのかね」


ぽそりと耳に届いた言葉に才蔵は違和感を覚えた。気取られぬようゆっくりと姿勢を変え、自然と佐助が目に入る様に座り直した。


「分からぬ」


佐助に答えた後で違和感に状況を把握する様、才蔵は目を瞑る。


「ならやっぱり主に有利な話の一つも手に入れたいってとこだよなぁ」


常であれば制止も聞かず、燐に取り入るであろう目の前の男が、それをせず考えあぐねている様がそれなのだと才蔵は確信し目を開けた。


「何だよ。手ぇ出すなって言ったの、そっちろ?」


なんとなく。そんな根拠のないもんは危ない。知っている筈なのに、術を使うのが何となく嫌だと思う


「確かに言うたな」


嫌そうに声を荒げる佐助に才蔵はそうは言ったが、普段なら聞きもしないだろうと思いつつも面倒臭いので頷くに留めた。


ちょいちょい無礼な胸の内を駄々洩らすのやめて欲しいんだけど。言いたい事があるなら言えっての!何なんだよもう!


「戻る確証は無し。なれど此処に留まらば良しでも無し」


山に居るよりは人の多い場所に移った方が情報は多く集まるだろうと思うも、此処の家屋は天井裏が無い。


「だよなー。けど、闇雲に居を移すってのも」


あっても家屋に入れば途端にけたたましく音が響く。佐助も才蔵も身に覚えがあるのか眉を下げた。


「全く、忍び辛ぇったら」


そこら辺に居るのは皆腑抜けた感じなのに、家屋や動く駕籠は忍び込むのが難しいと佐助が愚痴る。


「そうだな」


同意するように頷く才蔵は恩義のある燐以外にも、人誑しの術を使わない様子に違和感を覚えるも、再び突っ掛かって来ると分かっているので何も言わなかった。


「湯に参る」


暗闇に才蔵の声が響くと佐助は驚いた声を出し才蔵を見た。


「はあ?」


立ち上がった才蔵が、本当にテントから風呂道具を持って出て来ると佐助は突然の行動に首を傾げた。


「何で湯?」


「姫君より購入した物の使い勝手をと問われていたのを思い出した。主への報告も兼ねれば湯屋内の配置等、記した方が良かろう」


「アンタって、ほんとに…」


何処までも真面目な才蔵の行動に佐助は呆れた声を出した。才蔵はタオルを手に取るとテントを出て行く。一人残った佐助は何となく外へ出て夜空を見上げた。

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